第三話
シンシアは王都と竜の森の境界近くで魔法を解除した。
「自分で創っておいて何だけど、タイフーンてさぁ、、、
イメージが台風だけに周りを巻き込んじゃうんだよねー、速度も遅いし•••」
(番法違反、どこに訴えた方がいいのかな?
やっぱり裁判所?)
シンシアはハタと靴を履いていない事に気付いた。
(恥ずかしいぃぃ、これもみんなあの変態竜王のせいだ!
取り敢えず、職場に行って代えの靴取って、、、
そうだ!所長に相談してみようかな?)
シンシアは王宮内にある職場に急いだ
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「あれ?ジェッタ君、今日は休みじゃなかったのかい?
••••••なんだ、その格好は、ははん!昨日の竜被害者だな!
服がボロボロだぞ、竜の被害は王族が補償してくれるそうだぞ。
南門に被害申請センターがあるから行ってくるといいぞ。」
所長のベーレンスは侯爵家の出であるが、魔導具が好き過ぎて王宮に就職した変わり者である。
シンシアの学生時代の友人の婚約者の叔父にあたるため、よく目を掛けてもらっている。
「しかし、めでたい話ではないか。
竜王殿の番が見つかったとか、人族だってな!
これで我がファルス王国も安泰だな。」
ベーレンス所長はシンシアの前にブラックのコーヒーをコトリと置いた。
「ありがとうございます。」
深煎りのコーヒーを飲み、少しは気分が落ち着いたシンシアは所長に質問した。
「そんなに番って大事なんですかねぇ?」
「だって番が見つからないと竜は100年位しか生きられないらしいぞ。
後継も一匹しか設けられないそうだ」
「そうなんですか???」
「竜はな、他の獣人と違って寿命が長い分繁殖力が弱いのは知っているだろ!
獣人の番ってのは、生殖機能の相性な様なモンなんだよな••••
竜は基本ツガイとしか繁殖が出来ないんだよ。」
「でも、前竜王様は番がいなかったと聞きましたが•••
今の竜王様は前の王様の子供じゃあないんですか?」
「うん、番のいない竜族は悲惨らしいぞ!
自分の死期が近づくと、子孫を残す為に同じ竜族の相性の良い女の腹を借りるらしい。
女竜に種付けして子供は卵で生まれる
そして、男竜はその後死んでしまうらしい。
母竜も卵を孵化させて亡くなるらしいぞ。
俺も詳しい事は知らんのだかな、」
「へー、大変なんですね」
シンシアは相打ちをうった。
「先々先代、つまり、王配竜様の父上はツガイ持ちで、王配様の兄弟が10人いたと言う話だ。
王配様の兄弟達が王国の空を飛んで国を守護してくれていたらしい。
だから今回の番様の出現はこの国に大きな守護をもたらすのさ!だから安泰!!!
番様にはバカスカ子供を産んで欲しいよな」
シンシアから脂汗がタラタラと流れた
「もし、ツガイ法が適応され、お相手が拒否されたら?」
「そんなの、どうにでもなるだろう。
書類改竄すればいいだけの話だし•••
第一に竜王妃だぞ!他の獣人と訳が違う。
国の平和と一個人の都合、秤にかけりぁ平和の方が重要に決まっている。」
シンシアは目の前が真っ白になった。
「おい、ジェッタ君、大丈夫か?顔色悪いぞ!」
(逃げなきゃ、私 国の生け贄にされちゃう、国は守ってくれない、、、)
「私、チョット出掛けて来ます」
シンシアが席を立った時だった。
「ベーレンス所長、王宮秘書官からの問い合わせなんですけど••••
シンシア•ジェッタって、ウチのジェッタさんの事ですよね?」
(あばばばば、ヤバい、ヤバいぞ!)
「王宮秘書官? おい、ジェッタ、お前なんかやらかしたのか???」
シンシアは所長が振り返ると同時に、妖精パックの如く、風の様に素早く走り逃げた。
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所変わって、時は少し遡る
こちらはファルス城からの帰宅途中のドミトリアン。
馬と一緒に頭の中もギャロップ、ギャロップ
(俺はまだ若いから子供は12,3頭行けるかな)
そんな繁殖計画を立てていた。
帰宅の途、竜の森を半分程馬で駆けた時のことだった
竜王城から砂煙が上がったのが見えた
「なんだ、城が壊れたのか?」
目を凝らすと竜巻の様なものが城壁を抜け出ていた
「ハリケーンの被害か、いや、この気候ではありえん、
しかし、今は城に我が番が、、、」
(番に何かあったら••••)
ドミトリアンの姿がゆらり揺れ、その姿が金の虹彩を放つ
そして、どんどんと膨らんでいき、竜の形をとり出した
「押さえろぉーーー!」
城からついて来た獣人部隊100名が、一斉にドミトリアンに覆い被さり押さえ付けた
「陛下、お鎮まりください!
ここで、竜形態を取られては森が破壊されてしまいます、」
「陛下ぁぁーー」
「お留まりを!」
「うるさい、黙れ!番が、番がいるんだ!」
「番がぁーーーー!!!」
そう吼えると、金の竜は空に向かって猛スピードで飛んで行ってしまった。
総勢100名の獣人兵は、木々の下敷きになり溜息をついてた。
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城に着くや否やドミトリアンは叫んだ
「「俺の番は何処だぁーーー」」
「ドミトリアン様」
執事のカレントが一歩前に出た
「カレント、城が壊れたのが見えた、番は、番は無事なのか、早く会わせろーーー!」
ドミトリアンの雄叫びで城が揺れた。
「実は、番様は、先程城を破壊して出て行かれました。」
「城を破壊した?」
話をしながらドミトリアンは、身体を人型に戻した。
カレントは、その身体にマントを掛け、話を続けた。
「そうでごさいます。」
「番は人族ではなかったのか?」
「左様です、しかし、どうやら魔術師であったようでごさいます。」
「なにぃ⤴︎ おのれぇぇえーーー、小癪なぁぁぁ、直ぐ連れ戻しに行くぞ!」
ドミトリアンの姿が、揺ら揺らと金色に透け出し、再び竜形を取り出した。
「いけません!ドミトリアン様!!!」
カレントは、先程までシンシアが着ていたピンクのピラピラした夜着を、ドミトリアンの鼻先に押し付けた。
「アレの匂いが•••
カレント、番が、俺の番が••• 」
しゅるしゅると身体を取り戻したドミトリアンは、今にも泣きそうな顔をして、夜着を頭からかぶっている。
「ドミトリアン様、このカレントにお任せ下さい。
番様のお名前と御住所、お勤め先、調べは付いております。」
「番様はシンシア•ジェッタと言うお名前ですよ」
「シンシア••••」
ドミトリアンは名を呼び、夜着の匂いを思いっきり肺に入れた。




