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第二話


昔、むかし、


このファルス国は、小さな小さな国だった。

優しい王様が病に倒れ、うら若き王女様がその座を継いだ。

質素だが立派な戴冠式の最中に、空から一羽の緑竜が舞い降りた。

紅い目の竜は、その姿を見目麗しい青年に変え、王になったばかりの女王の前に膝跨いだ


「其方は私の探し求めた番、一緒に来て欲しい」


「私はこの国の王、この地を離れる事は出来ません。お引き取りを!」


「ならば私を其方の手で殺してくれ」


竜人は竜殺しの短剣を女王の前に置いた


しかし、女王はニッコリと微笑み、美しき竜人の手を取りこう答えた


「貴方と一緒に行く事は出来ません。

しかし、貴方と共に生きる事は出来ます。

わたくしの王配として共に生きてはくれませんか?」



これがファルス王国の繁栄の始まりであった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ここは城の一室


ファルス王国の王フィリップの上座には、ドミドリアンが横柄な態度で足を組んで腰を掛けていた。


「と、言う訳でな、帰って直ぐ番と交尾せねばならぬのだ!では、」


「お待ち下さい!始祖様」


「なにか異存か、時間が惜しい。もう帰るぞ!」ドミドリアンはいそいそと出口に向かった


「始祖様、人族には番法というモノがございます。

まずその者の名前は?」


「知らん!」


「年は?家族は?」


「知らん!」


「昨日、始祖様は町で竜態を取りその者を拉致されましたね!」


「俺の番だ、50年探してやっと見つけた番だ!連れて帰って何が悪い!!!」


(街中で竜態になるなど••• 怪我人が出なかったからよかったものを、建て前だけでも番法を取り繕っていただかねばならぬ。)

フィリップ王は頭を悩ませた




ファルス王国には二つの王家が存在する。


竜の王配を迎え、王国を繁栄させたファルス王家

そして、その王配の竜の父でもあった本筋の竜王家。ファルス王家からは始祖様と呼ばれている。

ファルス王家が獣人を抑える事が出来るのは単に竜王家があるからである。



「ドミドリアン様、まずツガイ様をこちらでお調べします。」


「ふん、アレはもう俺の物だ。手放す事などありえん」


「まさか、まさか、既にお手をつけられたのか•••」


「これから帰って種付けだ。

喜ぶが良い、久々の竜王家の繁栄だぞ!」


金の髪、切長の金の目、すっと通った鼻筋、薄い唇と骨格のはっきりとした顔立ち

まだ50歳になったばかりの若い竜にありがちな細いがしっかり筋肉がついた身体


すれ違う人が見惚れる程の美貌


そして竜形は、、、

千年に一度現れるという竜族最高峰、金竜


そんなドミドリアンは、小躍りしながら王宮を滑る様に走って行った


「始祖様いけません、お待ち下さい、」


フィリップは大声で叫んだ


「誰か、獣人の血を持つ者を100人程竜王家に向かわせるのだ。

ドミドリアン様を阻止しろ!なんとしてもツガイ法を守らせるのだ。急げ!!!」







———————————————————

 [ 番法 (ツガイ法)]


番と思わしき人族と出会ったら、まず裁判所ツガイ法科に届け出なければならない。


裁判所の方で番と思われる人族の調査をし、人族の方に番が現れた事を報告する。


二ヶ月間交際し、人族より婚姻の許可を得る事が出来た場合婚姻する事が出来る


相手より許可が下りなかった場合、即座に諦める事

獣人側は番の影響が抜けるまで薬を服用する事


拉致監禁し無理矢理の行為に及んだ場合極刑に処す




しかし、この下にとても小さな文字で

(但し、竜族は適応外である)

         と書かれている


——————————————————-


これは獣人の番という習性から人族を守る法律である。


人族は獣人より身を守る為に初潮•精通を迎えると、フェロモン抑制のホルモン剤を飲み、匂い消しのクリームを塗る


獣人でも、諸事情で番が欲しくない場合はホルモン剤服用とクリームを塗る者も多くなっては来ている


しかし、獣人が番と出会ってしまった場合は本能で相手を求めてしまうので、否定されると精神に破綻をきたしてしまう時がある。


そんな時に飲む薬が開発されてはいるが、服用期間は廃人のようになってしまうとの事である。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



その頃シンシアは



「あのぉ、そー言う事で私が昨日竜に拐われたんですね、、、」


「左様でございまず、番様。」


「はぁ⤵︎」


シンシアは大きな溜息をついた。


(いきなり拉致るってどう言う事、番法違反だわ!

よりによって竜族の番だなんて••••

シマッタ、昨夜薬飲み忘れたから、、、

とにかく、ここから出してもらわなくちゃ )


「あのぉ、私の洋服と鞄は何処ですか?」


シンシアは、今着ているピンク色のピラピラとした薄い夜着を摘み、再度溜息をついた。


「着ておられたお召し物は只今繕いしております。カバンは当方でお預かりしおりますのでご安心を、、、」


「返して下さい!今すぐ服とカバンを返して下さい!!!」


「わたくし共の一存では••••」


「それって、泥棒ですよね!窃盗ですよね!」


「 •••••••••••• 」


(そっちがその気なら、、、)



シンシアは鉄の格子がはまった窓を大きく開けた。


口元に手を丸く当て、へそ下に力を集めて魔力を練る。

円錐形に風の魔力が広がるイメージで、、、

現代で言う所のメガフォンである。


声を風に乗せて拡散させる


「皆さ~ん!竜の城ではツガイを拉致監禁、していまぁ~す。泥棒もしていま~す。」


「みなさぁ~ん、竜の城でわぁ~~」


うわぁっ!!! どっんンンン


いきなりの背後からドライビングタックル


シンシアの身体が吹っ飛んだ


「何するですか!痛いじゃないですか!」


「番様、何卒ご容赦を、直ちにお召し物をご様子致します。カバンもすぐお持ち致します。」


「やれば出来るんじゃないですか!お役所仕事じゃあるまいし••••

私の服とズボンをお願いします。足見せるの嫌ですから。

後、昨日から何も食べていないので軽食をお願いします。」


シンシアの元に鞄と衣服、御所望のズボンが届けられた。

銀のトレーには紅茶とサンドイッチが並べられいる。


服は竜の爪で穴が空いており処々当て布で補修がしてあった。

そして鞄を検品する。

(よし、盗まれた物はないね)


「1人にして下さい」


「しかし•••」


「こんな所にいきなり連れてこられ、見知らぬ男と同衾させられ•••

少しは私の身になって下さい。あなた方がいると私の心は休まりません!」


「失礼致しました、ではわたくし共は隣りの続き部屋で待機しております。」


シンシアは侍女達を下がらせ、やっと1人を手に入れ。



鞄からスケッチブックを取り出し、紙を5枚合わせ大きな筒を作る。

紙筒に強化魔法を掛けサイドテーブルに固定した。


( 城壁は石材、壁の厚さは2m30cm位だな。私の魔力の半分でいけるはず。

残りは温存して、と、、、

あっ、ホルモン抑制剤飲んでおこう!)


紅茶で薬を飲み、サンドイッチを鞄に詰めた


精神を集中させる。


『 ヤマト波動砲発射準備用意

   アフターバーナー点火

   閉鎖弁オープン

   エネルギー充填50%

   ターゲットスコープオープン 』


強度の弱い窓枠の部分に焦点を合わせる


頭の中で白い電磁波をイメージし、紙筒の前てレバーを引く体制を取る


キュイーン、キュイーン、キュイーン、、、

脳内でエネルギーが濃縮させる音が再生される


6,5,4,3,2,1,発射 ガチッ


「「「「「ドカーン」」」」」」


砂煙を立て大きな穴が空いた


「タイフーン」

すかさず風魔法をとなえ、風の渦を身体に纏わせ壁に穴から脱出した。



「異世界人舐めんなよ!」


心の中でそう捨て台詞を吐き、シンシアは王都を目指した。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



シンシアは実は異世界転生人でした

読者様にはバレバレでしたよね!


シンシアの魔法は波動砲ではありません。

ただの圧縮風魔法です。

何事もイメージが大事!少しの魔力で大きな効果!!!


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