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⒍ 「旅路」

予期せぬ魔法をうっかり出してしまい、壁に穴を開けてしまった主人公。

さてさて、買い主からはどれだけ怒られるのやら。


数秒、ノーラさんと見つめあう俺。


とっさに思いついたのは、土下座だった。


ジャンプ土下座か、と思うくらい滑稽な体制で土下座をした。


「っ壁破って、すみませんでした!!!!!」


「・・・。」


寝ながらの体勢で、俺を見つめるノーラさん。


土下座をしつつ、こっそり上目使いに観察する。


あ。体勢を変えて・・・今度は俺の背中に足を乗せ・・・?


ふみふみ。


ふみふみ。


またまた俺は、脳がフリーズしてしまった。


土下座の体勢を維持しつつ彼女を見つめていると、


「さっき、あなたが使った魔法はね、名前こそ伝わってないもののーーえーと、どこだったかしらっけ。


 そうそう。クンジ族っていう、今私達がいる「モンサント大陸」から海を挟んで向かい側にある大陸の隅ーっこに住んでる民族たちが

 使う魔法なの。


 なーんで、あなたがそんな魔法を使えるのかは知らないけれど、やっぱりあなたは何か特別な能力の持ち主なのね。」


というと、「朝ごはんの支度をするから、待っててね」と俺を踏み台にして彼女は部屋から出ていった。


一人、ポツンと部屋に取り残された、壁に 穴を開けたことに特にお咎めなしでホッとしてる俺。


その代償と言わんばかりに、彼女に踏みつけられた、私ー。


やっぱり、女の体だから、そんなに耐久力はないっぽいな。


踏み台にされたとき、結構ひざ痛かったし。


にしても、俺、特別な能力の持ち主なのは、正直、いや正直にいわなくても、凄く嬉しい。


勉強もたいしてできない主人公、異世界にて覚醒する!、ってか。


それもなかなかいい後生じゃあないか。


あ。


女ーー。


胸は、あるのか・・・?


ブンブン、と頭を振って脳内の煩悩たちを除去する。


俺は純潔を守ってやる!!


お風呂の時ですら胸なんて見てやらんわ!!


揉んだりするぐらいなら・・・。


いやいや。


今度はペチペチ、と自分の頬を叩く。


やっぱり自分の体じゃないのに、いや正確に言うと自分の体なんだが、男じゃない体を触るのにはちと勇気がいりますぜ、神様・・・。


ペタ。ペタ、ペタ。


あ、そんなことを考えていたらノーラさんが朝ごはんを持ってきてくれたようだ。


俺はなるべく頭の中を意味の分からない単語で埋め尽くして、ひたすら頬の赤さを消そうと努めた。


が。


「あなた、どうしたの?


 やけに頬が赤いけど。」


ドアを開けたノーラさんにははーん?と言わんばかりの目を向けられた。


やっぱり、女の人の勘ってすごいな・・・。


そう感嘆しながら、机への配膳を手伝う。


って言っても、堅そうなパン、少なめの野菜、ミルクっぽい飲み物のみ。


そんなに配膳に時間がかかったわけでもなかった。


そうして、配膳し終わると、彼女と俺は「いただきます」して、朝食を食べ始めた。


終始、彼女は俺の体をじろじろ見ていた。



◇◇◇



「ごちそうさまでした。」


俺と彼女が朝食を済ませると、彼女は「食器洗ってくるから~」、とまたしても俺は一人、部屋に残ってしまった。


いやー、これから、どうなるんだろう。


実は俺はこの世界を救うために転生・・・ワープしてきて、王様に会ったら「こやつは勇者の素質を持っておる!今すぐ世界一の剣士とし

て育て上げるのだ!」

そして、あわよくば魔王討伐。とか・・・。


我ながら、薄汚い笑みが自然とこぼれてくる。


それにしても、なーぜ自分がこの世界にやってきたのか。


剣と魔法の世界、ってなだけでワクワクするのに、しかも強くて超絶美女に拾われるし。


しかも!自分も美女だし。


今、すべてを理解した。というか、割り切った。


俺は、このために運を貯めてたんだ!、と。


ラララー、ルルルー、と踊っていると、部屋にノーラさんが入ってきた。


踊ってる最中に入ってきたもんだから、当然踊ってるところを見られた。


恥ずかしさのあまり踊りを停止、バランスを保とうとして前に出した足は後ろ足と絡まってしまいドーン、と転んでしまった。


ノーラさんも同様、一瞬何が起きたのかわかっていないような顔をしていたが、チラッと俺に侮蔑の視線を向けた後、こう言った。


「壁を治すのは魔法で治せるから簡単だけど、当然治す専門の人を雇って直してもらうことぐらいしかできない。


 だからそのためのお金とかを賄うすべを身に着けてもらうために、今日からあなたには軽い職業訓練をして、モンスター討伐型なのか、 職人型なのかだいたいの検討をつけるわ。


 ・・・まぁ、もうほぼ確定なんだけどね。」


最後の一言が気になるが、ついに俺も本格的に魔法を使えるようになるのか、と思うとワクワクが止まらない。




ーーかくして、俺こと私、桐島蒼。第二の人生を歩み始める。


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