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0090 最強の剣士、加入

 期せずしてオーガの巣を占拠してしまった俺達4人。

 まあ、なし得たのは月上京花ひとりの力だが……。


 とにかく、危機は去った。

 未だ緊張感が場に残る中、月上京花は剣をしまい、少し遠くまで転がった戦利品の金貨を回収しに向かう。

 俺はその姿を眺めながら彼女に送った言葉を思い返していた。



『俺を踏み台にして有名になってみないか?』


 

 リスタを発つ直前、保管していた鎧と共にマリカに預けた言葉だ。

 くだらないけじめのために信念を見失ってしまった強き剣士へ『俺を踏み台にしろ』と送った。


「マリカから聞いてここにやって来たんだろ?」


「ええ、そうよ」


 月上京花は素っ気ない返事を寄越す。

 俺は軽い笑みをこぼしたのち、口を開く。


「お前は高をくくった挙げ句負けた自分をくだらない人間と言ったな。だがそれは違う。本当のくだらない人間は、己が持つ信念を簡単に曲げてしまうやつだ。なぜお前が有名になりたいのかは知らんが、くだらないけじめで信念を見失うな」


 さらに続ける。


「これからは俺達と一緒に来い」


「「え⁉」」と、萌生・ライムが驚いた。

 

 ふたりの反応を無視するように月上京花は言う。


「再び剣を持ち鎧を着、そしてここに駆けつけた。それが答えよ」


「もっと素直な物言いができないのかお前は」


 わかりにくいが意思が確認できた。

 OK、というわけだ。


「踏み台にしろと言ったわよね」


「ああ、言った」


「果たして私の踏み台として機能するかしら?」


「ふっ、言ってくれるじゃねーか。俺はフィールドのプリンスだぞ。こんな贅沢な踏み台は他にないぜ」


 好きなだけ踏み台にしやがれ。

 冷徹なほど利己的になり、ただ目的を達成することだけ目指して俺を利用しろ。

 俺は最後の最後で、お前に勝てたらそれでいい。


「まあ、転生者同士が行動を共にしている、この事実だけで知名度は自ずと上がるでしょうね。そういう意味では既に立派な踏み台よ。そう思って私もここに来たの」


「その程度で満足か? もっと高望みしていいんだぞ」


「……よくそんなことが言えるわね」


「なんだと」


 完全に俺を見下した発言だ。

 少しカチンときた。


「どういう意味だ」


「その情けない姿でよくそんなことが言えるなと呆れているの」


「聞き捨てならないな。いったいなにが情けない姿というんだ」


「仰向けで地面にぶっ倒れている姿よ」


 

 ……たしかに正論だ。


 

 そう、月上京花の言うとおり、俺は仰向けで地面にぶっ倒れていた。

 オーガを撃退した直後、体調不良が極みに達して立つことすらままらなくなったのだ。

 つまりさっきまでのやり取りの最中、ずっとぶっ倒れていたわけであり……。


「よくそんな締まらない姿で信念がどうこうと話できたわね」


 いやもう、まったくもって仰るとおりです。

 

 言葉だけじゃなく物理的にも見下された俺は反論できず閉口。


「先が思いやられるわ」


 月上京花はそう吐き捨て、大きなため息をついた。

 そして相手をするのも面倒くさいと言わんばかりに俺から目を逸らし、

 

「さっきは悪かったわね。睨んだりして」


 ライムに声をかけた。


「いえいえ、気にしないでください」


「これからよろしく頼むわね」


「こちらこそ。女性同士仲良く、男性同士の恋愛について語り合いましょう」


「……はい?」


 その反応は正しいから安心しろ。


「よ、よくわからないけど……とにかく遠慮するわ。元よりなれ合うつもりなんてないし、別に友達とかそういうのになりたいわけじゃないもの」


「お前ほんと捻くれてるなあ……」


「うるさいわね」


 そのとき、萌生が口を開き問うた。


「じゃあ僕たち、どんな関係性でヤンスか?」


「ただの同行人よ。利害が一致せずとも反しない者同士、それ以上でも以下でもないでしょ」


「お前、人類に恨みでもあるのか?」


「うるさいわね」


 どうやら月上京花はこういうサバサバを極めたような性格らしい。

 でも、それを直せなんて言わないさ。

 変なくらい個性豊かな方が退屈しない。

 色んなやつがいるから人付き合いは面白いんだろ。


「利害が反しない者同士行動を共にする、こういうのを仲間って言うんじゃないか?」


「仲間……そうでヤンスね!」


「ワタシ達4人は仲間です」


「ま、好きにすればいいじゃない」


 この4人で旅に出る。

 各々胸に秘めた想いは異なるかもしれないが、だからこそ足りない部分をカバーし合える仲間になれる。

 俺はそう思うね。


「よーし! マジーカに向けて出発だ!」


 いつまでも倒れてなんかいられない。勢いよく立ち上がる。

 ここが旅のスタートだ。


「そんな急に立ち上がって大丈夫ですか?」


「平気だ……うっ⁉」


「「「うっ?」」」

 

「いや……腹からなにかが上がってくる気が……」


「ちょっと待つでヤンス!」


「ダイチさん、我慢ですよ!」


「なになに? なにが起こるの?」


 皆が慌てふためく中、俺はついに限界を迎えた。


「あっ、もう無理……」


 その瞬間、口からキラキラ大放出。

 森の大地は大地のキラキラに汚され、仲間達の耳をつんざくような悲鳴が遠くまでこだました。



 ☆Regular Member☆

   陽川大地

   御手洗萌生

   ライム

   月上京花←NEW



いつもご覧頂きありがとうございます。

当作品ですが、現時点で一旦完結とさせて頂きます。

まだまだ消化不良な部分も多いですが、いつかまた続きを書ける日がくるといいなと思っております。


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