0078 さらに3日後
――3日後――
咲矢が目覚めて3日後の夕方、俺は相変わらず作業着に身を包み現場にいた。
その咲矢だが、近くでドミゴとなにやら話している。
「ドミゴさん、ペンキ塗り終わりました」
「どれどれ……、ほう、むらなく綺麗に塗れてるじゃねえか。筋が良いな」
「へへへ、こういう物作りみたいなの、好きなんですよ」
仲いいなあいつら。
ここ数日ずっとこうだ。
筋が良いらしい咲矢にドミゴがつきっきりになり、ふたりが師弟関係に見えなくもない。
「よし、今日の作業はここまでだ。てか、残す箇所は細かい技術が要るから素人には手出しできん。明日からは街の大工に任せよう」
ドミゴがそんなことを言う。
たしかに大まかな作業は完了しており、今日は暇を持て余していたくらいだ。
約2週間という短期間で、街は騒動前の状態にかなり近づいた。これは皆の奮闘の成果だ。
「そういう意味でダイチの提案はグッドタイミングだったな」
「ははは、そりゃよかった」
俺の提案、というのは大宴会だ。
作業が大詰めを迎えていたこともあって、ここらでひとつ皆で疲れを癒やそうと昨日提案したのだ。
すると話はトントン拍子で進み、ギルドの食堂が会場として決定。
さっきノリノリの冒険者達が大量の酒と食料の買い出しに向かったところだ。
「あっ、今日で作業が終わりってことは、そろそろマジーカへ出発ですね!」
咲矢が言った。
こいつに取り憑いた闇の謎を解明するためにも、マジーカにある魔法学校を目指す。
ちなみにそのことを咲矢に伝えたとき、開口一番、
『ぼくも付いて行きます!!!』
予想通りの反応だった。
「明日にでも行きましょう!!!」
そして今、やる気に満ちてそんなことを言う。
「おいおい、戦闘服を作ってやるから少し待て」
「ああそうでしたね! ありがとうございます! 待ちます!」
目を輝かせる咲矢に、ドミゴは微笑ましい表情を向けていた。
「ダイチと同じデザインがいいんだよな?」
「はい! お揃いがいいです!」
え? そんな話になってたの?
てかこいつ、俺のこと好きすぎない?
尊敬の意味での好きだから悪い気はしないが……若干暴走気味なんだよなあ。
いつかその想いが変に大爆発を起こすかもしれない。
なんて、さすがにそんなことあるわけないか。
「大地先輩」
ふと隣に目を移せば咲矢が俺の腕を組んでいた。
あれ? ちょっと心配しなきゃいけない怪しい感じ?
「明日はお買い物にでも行きませんか? ドミゴさんにお小遣い貰いましたし、この世界っぽい可愛い系の服が欲しいです」
お前は女か!
それに明日は……
「咲矢君、ちょっと待つでヤンス!」
俺が口を開きかけたとき、割って入ってきたのは萌生だ。
「明日、大地君は僕と魔物討伐の約束でヤンス! だから君の買い物は後回しにするでヤンス!」
そうなのだ。
今日作業が暇だったこともあり、萌生から『久しぶりに』『資金調達も兼ねて』との理由で誘いを受けていたのだ。
「ええ~。魔物討伐なんて旅の途中でいくらでもできるでしょう。大地先輩はぼくに譲ってくださいよ」
頬を膨らませた咲矢。
そして俺を渡さないとばかりに組んでいた腕を強く引き寄せる。
「先約は僕でヤンス! 大地君は魔物討伐に行くでヤンス!」
言い放った萌生は手を伸ばす。
逆の方の腕を掴み、咲矢に対抗の意を示した。
「ぼくです~!!!」
「僕でヤンス!!!」
そのままふたりで引っ張り合い。
俺は綱引きの綱か!
「コラお前らやめろ! イテテテ!」
「ああ、顔の良い男性達が繰り広げる三角関係……ここは桃源郷ですか……素晴らしい……」
このおかしな発言の主はもちろんライム。
垂れた鼻血もお馴染みだ。
「ライム、見てないでなんか言ってやってくれ!」
「『俺のために争うな』と一言お願いします」
「俺じゃなくてこいつらにだ!」
「ああ、この三角関係がどうなってゆくのか、これから先が楽しみでしかたありません」
俺は先が思いやられるけどな!
イテテテ!
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陽川大地
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