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0069 ちんちん

 咲矢に取り憑いた闇の原因を解明するため、魔法学校へ向かうことになった。

 メンバーは俺・萌生・ライム。

 リスタを旅立ち、マジーカという新たな街を目指す。


 そう話がまとまったとき、


「ダイチさ~ん!!!」

 

 ドタドタと足音がしたかと思えば、扉の向こうから声が聞えてきた。


「大丈夫でしたか⁉」


 バンッ、と勢いよく扉が開く。

 息を切らせて駆け込んできたのはマリカだ。


「ようマリカ、俺ならピンピンしてるぜ」


「はあ~それならよかったです~。聞きましたよ! 街で暴れる闇の破壊者をやっつけたんですよね!」


「ま、そういうことだ。お前は無事だったか?」


「ワタシは街の奥にあるギルドにいましたからこの事態すら知らなかったくらいで……ところで、そこで寝てる人は誰ですか?」


「こいつがその闇の破壊者だ」


「ええ⁉⁉⁉」


 マリカは目をまんまるにさせた。

 街を危機に陥れた破壊者が自宅にいる、たしかに驚きだろう。


 まじまじと眺めるマリカへ、ドミゴが口を開いた。


「マリカ、こうなったわけは後で追って説明する。今はとにかく他言しないでほしい。破壊者の存在は胸に秘めておくんだ。わかったな?」


「うん、わかったよ、お兄ちゃん」


「よし。……あ、ところでだが、さっそくお前に頼みたいことがある。こいつを着替えさせてほしい。上着とズボンをだ」


「ああ、たしかにこの服を見られたら今後なにかと面倒が起きるかもな」


 ドミゴの考えに俺も賛同した。

 身バレ・誤解を防止するためにも秀明高校の制服は着替えておいた方がいい。


「うむ。これはおふくろに雑巾にでもしてもらうとして、うちにある適当な服に着替えさせる。マリカ、頼めるな?」


「お安いご用だよ」


「よし、じゃあオレ達は隣の部屋に移動しよう」


 ドミゴに促され、隣の部屋へ。

 咲矢がいる部屋にはマリカのみが残された。


「……ん? 移動する必要あったか?」


 しっかりと閉ざされた扉を一瞥し、俺は疑問を口にした。


「お前、デリカシーないなあ……」


 呆れた口調でドミゴは言った。


「ほんとでヤンス」


「あの場に留まるのは素晴らしくありません」


 と、萌生・ライムも同意見のようだ。


「どういうことだよ?」


「どういうこともなにも……異性が着替えるのにあの場にいたままはまずいだろ。着替えをマリカに頼んだのもそれが理由だし」


「異性?」


「着替えを任せるなら同性がいいに決まってる。そういう意味では緑髪のあんたでもよかったが」


「ワタシは男性ふたりがイチャイチャと着替えているところを傍観したいですけどね」


「……ほんとに変なやつと知り合ったもんだなあ」


 ドミゴは困惑。

 ライムは相変わらずだ。


 ってかお前ら、盛大な勘違いをしているぞ。


「おいおい、あいつはおとk」「ギャワー!!!!!!!!!」


 扉の向こうから断末魔のような叫びが。

 俺の訂正はマリカのそれにかき消された。


 バンッ、と扉を開けて目を回しながらやって来たかと思えば――


「ちんちんちんちんちんちんちんちんちんちん!!!!!!!!!」


 ちんはふたつで充分だ。


「どうしたマリカ⁉」


 あっけに取られたドミゴが問いかけた。

 

「あ、あの人! 女性なのに股に生えてる! やけにモッコリしてるなと思ってパンツの中を覗いてみたら、冒険者さんがギルドで丸出しにしている見慣れたモノが!」 


 見慣れたモノって……お前は痴女か。


「当然だ。だってあいつ、男だぞ」


「「「「ええ⁉⁉⁉」」」」


 皆、驚愕。

 気持ちはよくわかるぜ。

 俺だって合宿の風呂であいつの『剣』を見るまでは男だと信じ切れてなかった。


「ちょっとオレ見てくる!」


「僕もでヤンス!」


「ワタシももう一回!」


「お前はもうやめとけ」


 ドミゴと萌生が『剣』の確認に走る中、付いて行こうとしたマリカの肩を掴む。

 俺はお前の将来が心配だ。頼むから妙な女性にならないでくれよ。


「ちょっとダイチさん」


 あ、妙な女性だ。

 

「なんだライム?」


「話を総合すると、ダイチさんはあのとき、必死になって男性を庇ったということですね」


「まあ、そうだが……」


「ここに連れてくるときも男性にお姫様抱っこをしたと」


「ただ抱えただけだ」


 その瞬間、ライムの鼻から血に染まった紙が吹っ飛んだ。ロケットか。

 そしてまた鼻血をポタポタと垂らす。

 何度も言うが、人んちだぞ、人んち。


「余計な言葉不要。多くは語りませんが……なんと素晴らしい事でしょう」


 両手を広げ、血走った目で微笑んだ。

 鼻血とも相成り、へたなホラー映画よりも恐怖である。


「おお、でかいでヤンス……」


「同じ男として敬服するほかない……」


 萌生・ドミゴのふたりは隣の部屋で感嘆の声を漏らす。


「ダイチさん離してください! ワタシももう一度見たいです!」


 マリカはとんでもないわがままを繰り返し、


「ダイチさん、あの方とは旧知の仲なんですよね? なにかエピソードがあるんじゃないですか? 甘いエピソードが。切ないエピソードが。恋のエピソードが。さあ、話してください」


 ライムは相変わらず。


「ははは……」


 さあ、誰か俺を助けてくれ。


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