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0068 次に目指す場所

 この状況を面白がっているとしか思えないデマを聞きながら武具屋に身を隠した俺・萌生・ライム・ドミゴ。

 なおも気を失ったままの咲矢を家の一室に寝かせ、俺達は囲うようにして腰を下ろす。

 そんな中、俺は改めて疑問を口にした。


「しかし、あの闇は一体なんだったんだ?」


「さあ? 僕にはさっぱり」


「私もまったくわかりません」


 萌生・ライムは首を振る。


「うーむ……もしかしたら、新種の魔法かもしれないぞ」


 そんなことを言ったのはドミゴだ。


「なにか思い当たる節でもあるのか?」


 魔法は炎・氷・雷・回復の4種類だと聞いている。

 だから『闇』なんて魔法があるならたしかに新種だが……。

 そもそも『魔法かもしれない』と言える根拠はあるのだろうか?


 俺は答えを待ち望み、ドミゴをジッと見た。

 しかしドミゴはばつが悪そうになって。


「い、いや、なんか魔法っぽいなと思っただけだ。言ってしまえば当てずっぽうだ」


 カクンと、俺は首を折った。

 

「な、なんだよそれ……」


「悪い……」


「いやいいけど……はあ……せめてなにか手がかりだけでも掴めないかなあ……」


「む! それならとっておきの場所があるぞ!」


「場所?」


「ああ。ダイチ、お前はこれから魔法学校に行くといい」


「どんなところなんだ?」


 高等学校ならついこの前まで通っていたけど、魔法学校とは?


 首をかしげて問うた俺。

 ライムが「ああ、あそこですか」と相づちを打つ中、ドミゴは続ける。


「魔法のことを知るにはそこが一番だ。その名の通り魔法を学ぶ学校でな。そんでもって……うーん……まあ……一応研究機関とも言えなくはないから、手がかりが掴めるかもしれないぜ」


 なんだその含みを持たせた言い方は。

 

 教育と研究を兼ね備えた機関、前世でいう大学のようなところだろう。

 魔法だと確証はない上、含みを持たせた言い方に懸念は残る。

 だが、他にアテがあるわけでもないのだ。

 原因解明の可能性が少しでもあるのなら行ってみるか。


「オレはそこの卒業生でな」


「お、そうなのか。じゃあ今から案内してくれよ」


 さっそく出かけようと腰を上げたそのとき、「いやいや、ちょっと待て」とドミゴに制された。


「まさか魔法学校が近くにあると思ってるんじゃないだろうな」


「え? ないの?」


「魔法学校は『マジーカ』という街にあって、リスタにはないぞ」


「マジか」


 てっきり近場にあるのかと。

 コンビニに行く感覚で立ち上がった俺は座り直した。


「マジーカまでは徒歩で10日くらいかかる。けっこう遠いぞ。それでも行くのか?」


「今すぐではないにせよ、行かないという選択肢はない」


 ドミゴの問いに、俺は即答した。

 歩いて10日がなんだ。

 それしきのことで俺が止ると思うなよ。


「ほう、さすがだな。それでこそ『冒険者』だ。ずっとこの街に留まって遊びほうけているギルドのあいつらに聞かせてやりたいぜ」


 それは比較対象が悪いというかなんというか……。


「だ、大地君」


 そのとき、萌生が口を開いた。

 なぜか不安げだ。


「僕も一緒に行っていいでヤンスか……?」


「当たり前だろ。てか、嫌と言ったら引っ張ってでも連れて行ったぜ。一緒に行くぞ」


「だ、大地君……!!!」


 なにがそこまで嬉しいのか。

 萌生は今にも感涙しそうだ。


 ……ん?


 そんな萌生と俺を、おしとやかな笑みを浮かべて眺める者がいた。

 しかも鼻血を垂らしながら。

 ここ人んちだぞ、ライム。


「ワタシも付いて行っていいですか? え、いいんですか? ありがとうございます」


 まだなにも言ってねえ。


「ああ、これでイチャイチャするおふたりの側にいられる。この世に生まれたワタシに使命があるとするならば、きっと男性同士の恋愛を温かい目で見守り続けることでしょう。素晴らしい」


 本当にそんな使命を課されているならば神様はそうとう悪趣味だ。


 ライムは鼻に紙を詰めて恍惚とした表情である。

 ま、こいつを連れて行かないなんて選択肢もない。


 だってほら……。

 一緒に、いたいし……。


 ……なんだかおかしな心中だ。

 

 一緒にいたい、と。

 萌生にも似たようなことを思ったはずなのに、なにかで明確な違いが生まれている。

 だが、その『なにか』の正体はわからない。

 ひとつ確かなのは、今、胸がキュッと締め付けられる感覚に襲われていることだ。


「ダイチお前……ずいぶんな変わり者と知り合ったな……」


 ドミゴの声にハッとなり、胸の痛みも治まった。


「ま、まあ出会いは色んな所に転がっているからな。それよりドミゴ、お前も来るだろ? 魔法学校」


「いや、オレは遠慮させてもらう」


「え⁉ なんでだよ!」


 口をとがらせ言うと、ドミゴは困ったように笑った。


「魅力的な誘いをありがとうよ。だがな、魔法学校まで行くとなると、長い間武具屋に帰って来れなくなる。そしたらギルドの馬鹿共を誰がサポートするんだ? あいつらのサポートなんて、オレしかやるやついないだろうよ。ま、元よりあんな楽しい役割、譲る気なんてないけどな」


「はっはっはっ!」と、ドミゴは大笑い。


 サポートが云々と。

 相変わらずの発言だ。


 ま、今度は俺も……


「ふっ、なら仕方ない。サポートは楽しいもんな」


 共感できるけどな。


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