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0040 異世界無双でヤンス

 吹っ飛ばされたオーガは起き上がり、睨みをきかせた。


 一方の萌生は、俺を庇うように前に立ち、剣を構える。



「さっさと終わらせて、冒険の資金源にしてやるでヤンス」


 

 そう言って、駆け出す。


 待ち構えるオーガは棍棒を振りかぶる。


 萌生はよける素振りを見せず、ただ一直線に走り、オーガのリーチに入り込む。


 棍棒が萌生の頭上に迫る。が。


 

 ――ザン!――


 

 萌生が頭上を振り払うようにして、棍棒を手に持つオーガの右腕を一閃。


 棍棒は手から離れ、それどころか――。



「な⁉」


 

 その光景に、俺は目を丸くした。


 棍棒どころか右腕が身体から離れたからだ。


 萌生の剣が、切断したのだ。



「ウ、ウウウウッ……」


 

 うめき声をあげるオーガ。うろたえているのが見て取れる。


 残った左手で棍棒を拾い上げようとしたが、時すでに遅し。



 ――ザン!――


 

 その左腕も、萌生の剣が切断した。



「ウッ、ウッウッウッ……」


 

 鬼の目にも涙と言うべきか。


 もはやその表情に険は消え、怯えるような目つきで萌生を見るオーガ。


 すっかり威圧感を無くしたやつは、両腕無しの巨体を揺らして逃走を図る。


 しかし、みすみすと逃す萌生ではなかった。



「逃がさないでヤンスよ、資金源」


 

 追いかけ、ジャンプ。


 背中の中心を一突き。



「グブワアアアアアア!!!」


 

 オーガは倒れた。

 そして溶けるようにこの場から消えてゆく。


 代わりに生成されたのが、硬貨だ。



「おお! 金貨が3枚も! さすがオーガでヤンス!」


 

 嬉々とした声を上げ、それらを拾い集める。


 その後、今だ地面にへたり込んだままの俺の元にやってきて、



「やったでヤンスよ! この調子ならすぐに冒険資金が集められるでヤンス!」


 

 溢れんばかりの笑顔で言った。



「は、ははは……」



 一方の俺は、引きつった顔で乾いた笑いを絞り出すのが精一杯。


 萌生の活躍は、すべて見ていた。


 見事な斬撃の数々と圧倒的な勝利。

 

 これらは俺が思い描き、けれどもなし得られなかったものだ。


 見せつけられた力の差に、がっくりとうなだれた。


 立つ気力さえも起きない。



「よ、陽川君⁉ 嬉しくないでヤンスか⁉ 金貨が3枚、300Gも手に入ったでヤンスよ⁉」


 

 嬉しいわけねえだろ。


 前世でフィールドのプリンスとまで呼ばれ、負け知らずの人生を送ったこの俺は、今日だけで2度も負けた。


 1度目はオーガに。


 そして2度目は萌生に。


 一瞬だけ目線を上げて、チラリとそいつの顔を一瞥した。


 心配そうな顔を浮かべるそいつは、俺がショックを受けた理由に気付きもしない。


 御手洗萌生。

 前世でその名を耳にしたことはない。


 それなのにあの実力……。


 こいつ、一体何者なんだ……?


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