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0004 プリンスの友人達

 退屈極まりない授業を数時間受けたのち、昼休みがやって来た。

 多くの生徒にとって楽しく、そして心安らぐ時間だ。

 もちろん俺だってご多分に漏れず。

 教室で2人の親友と机を囲んで昼飯を食っていた。



「いやー、これ絶対におれだと思うんだけどな……」


 そのうちの1人は思案顔になりながらそんなことを言い、ノロノロと食っている。

 目を向けるのはスポーツ新聞だ。おっさんか。


「いいから早く飯食えよ。昼休み終わるぞ」


 俺が急かすとそいつは紙面からひょっこり顔を出した。


「いやいや大地、これは重大なことだぞ。お前はどう思う?」


 そう言ってスポーツ新聞をクルッと回転。

 そいつが今まで凝視していた一面記事を見せられた。

 端の方に指を差す。


「これ、おれの後頭部だと思うんだけど」


「そんなのどうでもいいだろ」


 そいつが今、何をやっているのかと言うと――

 メインの被写体から外れて写り込んでいるピンボケの黒い丸を自分の後頭部だと主張しているのだ。


 ちなみに朝からずっとこの調子である。

 ほかにやることないのかお前は。


 だから俺は『そんなのどうでもいいだろ』と至極まっとうなツッコミをした。

 だが、そいつは額に手を当て大げさに、


「かっー! さすがメインで写ってるやつは言うことが違うねー!」


 皮肉を交えてそう言った。

 ピンボケ後頭部が自分であるかの精査なんて誰もが『どうでもいい』と思うだろ。

 ま、メインで写ってるやつ、というのは事実だがね。




   『フィールドのプリンス、圧巻30得点で全国へ』




 スポーツ新聞の一面にはそんな大見出しが踊っていた。

 そう、メインの被写体となっているのは他でもない俺だ。

 何点目かわからないシュートの瞬間がデカデカと綺麗に載っている。


 記事の対象となったのは昨日行われた試合。

 全国大会へと繋がる地区予選決勝にて、相手チームを『30-0』で下したのだ。

 全得点を上げたのは俺。だからこの大見出しになった。


 でも珍しい事じゃないんだよなあ……。


 高校に入学してから今に至るまでそんな試合ばかりしてきたもんだがら俺の知名度は頂点だ。

 スポーツ新聞の一面なんて何回飾ったことやら。

 今みたいに一面を向けられ自分とにらめっこするのにも慣れっこだ。


「あーあ、おれも一度でいいから一面記事になってみたいなあ……」


「とんでもないことやらかせば一般紙で一面記事になれるぞ」


「たしかに……ってできるかそんなこと!」


 キレのあるノリツッコミを披露したそいつはようやく飯に集中するのかと思いきや。

 パラパラと新聞をめくり、とある紙面で手を止めた。


 いったいどうした?


「えっへっへっ、Gカップの18歳、グラビアデビューだってよ」


「おい、学校でそんな記事を見るな」


「いいだろ別に。あ~、おれもこんなおっぱいが大きい女の子と付き合ってみたいな~」


 まったく……。


 ニヤニヤと締まらない表情を浮かべるそいつの名は本田圭一。

 俺と同じサッカー部に所属し、ポジションはDF。

 昨日も同じユニホームを着て同じフィールドに立っていた。

 

 坊主頭がよく似合うこいつは、高校生と言うよりも年中半袖短パンで野山を駆けまわってるわんぱく少年のような見た目をしている。

 

 スポーツ新聞のグラビア紙面を見て鼻の下を伸ばす今の姿はエロ親父みたいだが……。


「こんなおっぱいにさあ、いろんなとこ挟まれてよお、妄想が捗るよな! 高校卒業したらそういうことしてくれるお店に一緒に行こうぜ!」


「おおう……断る」


 てか圭一よ、ここが教室だということを忘れてないか?

 女子からゴミを見るような目を向けられているぞ。



「圭一、少しは冷静になれ」



 そのとき、今まで黙って見ていたもうひとりの親友がひときわ冷たい声を放った。


「なんだよおっぱいを馬鹿にする気か! あれには夢と希望が詰まっているんだぞ!」


「詰まっているのは脂肪だ。それにオレはお前を馬鹿にしてる」


「なんだと~!」


 冷静な口調でちょっかいを出す男の名は中村修介。

 

 メガネの奥で鋭い眼光を光らせ、知的かつ狡猾な雰囲気を漂わせる姿は高校生というよりもインサイダー取引に手慣れたインテリヤクザのようだ。

 

 ブレザーの制服よりも白いスーツが似合うかもしれない。


 ……念のため言っておくが、内面は悪いやつじゃないからな。


 ちなみにだが修介もサッカー部でDF。

 しかも我が部のキャプテンを務めている。


 え? なぜ俺じゃないかって?


 監督や他の部員曰く、自由気ままな大地はキャプテンって柄じゃないらしい。

 心外だよなあ。ま、大して興味ないからいいけど。

 それにほら、スポーツ漫画でもエースとキャプテンって大体違う人じゃん?


「なんだよお前らは貧乳が好きなのか! このロリコンめ!」


「よくそんなこじつけができるな。驚きを通り越して呆れる」


 わんぱく少年の圭一とインテリヤクザの修介は口論を始めた。

 ま、スキンシップの延長にある喧嘩だ。


 実は俺達3人は中学時代からの仲。

 止める必要がないのは長年の付き合いでわかる。


 案の定、口論はすぐにぐだぐだになってヒートダウン。

 圭一は再度グラビア紙面に視線を落とし、


「はあ……大地ならこういう子とも付き合えるんだろうなあ……」


 ため息交じりにそんなことを言った。

 俺が? Gカップのグラビアアイドルと?


 それを聞いた修介が口を開く。


「付き合えるというか、向こうから腐るほど寄ってくるだろ。こいつは超をいくつ付けても足りないくらいモテるからな」


 なんと、今度は同意したではないか。


「待て待て、言うほどでもないぞ。常識的な範囲だって」


「「常識的???」」


 俺が笑いながら軽く反論すると、ふたりは首をかしげ、その後目線を下げた。

 ジトーッとした眼差しを向ける先にあるのは、食いかけの俺の弁当だ。

 なんだ? ちょっと分けてほしいのか?


「それ、誰に作ってもらった?」


 容疑者に取り調べするような圧のある口調で問うたのは修介だ。

 インテリヤクザだったり刑事だったりで忙しいな。


「この弁当のことか?」


 手元にあるそれを眺めながら、俺はあっけらかんと言い放った。


「陽川大地ファンクラブの女の子だけど」


「「常識超えてるじゃねーか!!!」」



本田圭一・・・磯〇カツオ(の高校生ver)

中村修介・・・碇ゲン〇ウ(の高校生ver)


2人の見た目はこんな感じを想像して頂ければ。


 


 ☆Regular Member☆

   陽川大地

   本田圭一 ←NEW

   中村修介 ←NEW

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[気になる点] 主人公どこいったん [一言] ファンです                       名字分かりません      
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