0021 転生者、すげえ!
☆おしらせ☆
タイトル戻しました。
「お、お前……転生者って……」
ドミゴは目を見開き、俺は額に冷や汗をかいた。
しまった……!
なに包み隠さず告げているんだ俺は。
急に転生者なんて告げても、理解されないか頭のおかしなやつ扱いされるに決まっているじゃないか。
だってそうだろ……?
わかりやすく、これを前世の日本で例えよう。
ある日突然転校生がやってきて、自己紹介の場で「転生者です。異世界から来ました」なんて言ったらどうする?
シーン、と。
今現在のこの場のように皆がドン引きすること間違いないだろう。
「というのは冗」「すげえ!」
苦し紛れだがなんとか誤魔化そうとしたときだった。
ひとりの冒険者の嬉々とした大声がそれを打ち消す。
「お前転生者だったのか!」
「若くてまともで転生者って、もう言うことねえじゃねえか!」
「うちの娘を嫁にどうだ⁉ さすれば妻も喜ぶ!」
……はい?
唖然とするしかない。
なぜか皆、こぞって俺を褒めそやしてくるからだ。
てか歯のないおっさん、あんた妻子がいたのか⁉
「ここに来る前はどんな世界にいたんだ⁉」
「可愛い女の子はいっぱいいたか?」
「おっぱいは⁉ おっぱいは大きいか⁉」
「馬鹿野郎! 小さい方がいいだろ!」
「はあ⁉ ふざけんな表出ろ!」
質問の民度はさておくとして。
転生者がいることをなんら不思議がってない……?
「全てを包み込むような包容力がいいんだろ!」
「いやいや、こじんまりしていた方がかわいい!」
論争を続ける冒険者は俺を見た。
「で、結局おっぱいは大きいのか⁉」
「それとも小さいのか⁉」
お前らほかに知りたいことはないのか⁉
自分で言うのもなんだが、目の前には異世界人がいるんだぞ!
もっと、こう、あるだろう⁉
「まあまあ、みんな落ち着け!」
手をパンパンと叩きながら場を仕切ったのはドミゴだ。
正直、辟易していたからかなりありがたい。
「ひとまず歓迎の宴会といこうじゃないか。質問はそのときにすればいい」
冒険者達は「それもそうだな」「さっそく準備に取りかかろう!」と頷き合い、慌ただしく奥の部屋へと駆け込んでいった。ちなみにそこも引き戸だ。
「料理をいっぱい持ってこい!」
「その前に掃除だ!」
「おーい、ここに落ちてるくせえ服は誰のだ?」
「すまんオレのだ。汗まみれのを10日くらいずっと放置してた」
「汚えな!」
扉を挟んだ向こうから賑やかな声が聞えてくる。
洗濯くらいしろよな。
そんな中、俺は残ったドミゴに問うた。
「なあドミゴ、みんな転生者についてなにを知っているんだ?」
「あの騒ぎようが気になるか?」
俺は「ああ」と返事をして答えを求めた。
さっきの反応を鑑みるに、この世界の人達は転生者に関するなんらかの知識を持ち合わせているはずだ。
「あいつらが騒ぐ理由だが、神話を紐解くとわかる」
「神話?」
「ああ。そこにはこんな一節があってな」
そう前置きし、その神話について語り始める寸前の所だった。
「おーいドミゴ、こっち来て手伝ってくれ!」
向こうの部屋の扉が横に開き、冒険者のひとりが叫んだ。
「今、神話について教えているところなんだ。後にしてくれ」
「石の机が重すぎて運べないんだよ。ったく、前は全部木の机だったのにどうなってんだ」
「その木の机は酔っ払ったお前が壊したんだよ。そして2度と壊せないようにって石の机になったんだ」
「なんだそうだったのか! あっはっはっはっ!」
あっはっはっはっ、じゃねえよ。
「まったくしょうがないやつだ。ちょっと手伝ってくるから待っていてくれ。その間にあの姉ちゃんから話を聞くといい」
あの姉ちゃん?
ドミゴが顎をしゃくった方に目を向けると、そこにはこの場に似つかわしくない女性の姿があった。
個性的すぎる冒険者達に囲まれていたせいで今初めて気付くに至ったが、このギルドの隅にはまるでデパートの総合案内場のようなカウンターがある。
そこに座っているのがその女性だ。
見た感じ20代後半。
シャープなフレームの眼鏡をかけている。
そんな彼女は無表情のまま、ただ真っ直ぐになにもない壁を見つめていた。
「あの姉ちゃんは新人冒険者の世話をするためここにいるガイドだ。知らないことがあるなら聞いてみるといい。色々……ってわけにはいかないが、基本はちゃんと答えてくれるぞ。」
なんだその含みのある言い回しは?
一抹の不安を覚えながらも、俺は奥の部屋へ向かうドミゴを見送り、カウンターへ向かった。
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