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会いたい迷宮

梯子屋の梯子職人の元に辿り着いた予言者は、初めて梯子を知りました。

梯子の形と役割を。

「天井に届くような長くて丈夫なハシゴが必要なのです」

予言者が言うと、作りかけの梯子と完成した梯子に囲まれた梯子職人は強くうなずきました。

しかし、予言者の頭には梯子が壊れてしまう未来が浮かび、予言者はうつむきました。

どうしたらカキテとヨミテは会えるのでしょうか。

カキテは今どんな物語を描いているのでしょうか。



深い深い森の中、猟師は今日も水鉄砲を持って兎たちを追いかけていました。

狼も柔らかい牙でもって兎たちを追いかけていました。

二人は悪役なのでした。

二人はお互いの役割が重複していると言い、よくケンカしてしまいます。

かわいいかわいい兎たちが余裕のある表情で二人を凝視しています。

「疲れた」

猟師は水鉄砲を放り投げ、それは狼の頭に直撃しました。

水鉄砲の水が兎に当たった試しがないし、自分の役割に疑問を感じているのです。

狼は怒りを感じましたが、全てが億劫で無表情を保っています。

「疲れた」

狼は肉を食べたことがなく、痩せ細っていました。



予言者がカキテに向かってかけた梯子は壊れずにかかりました。

予言が初めて外れたのです。

予言者は動揺しましたが、ヨミテはそのことに気がつきませんでした。

ヨミテは嬉しさと緊張を感じながらカキテに会うため慎重に梯子を登ります。

塔の5階から6階へ。

しかし辿り着いたのは塔の6階ではなく、別の場所でした。




そこは深い森でした。

そこは森でしたが、塔から見える森とは違っていました。

塔から見える森はクヌギの森だ。心に言の葉が浮かんできます。

この森はコナラの森だ。

足元に細長いドングリがコロコロと転がっています。

ヨミテが顔を上げると遠くにカキテが立っていました。

「カキテ!」

ヨミテが叫ぶと、カキテは木々の間を颯爽と走って消えてしまいました。

バタバタと足音を響かせながらヨミテは走りカキテを追いかけます。

夜見る夢のように、不自然で現実感がない世界。足に力が入らない。

走っても走ってもカキテの踵しか見えません。

カキテは木の間を縫うように器用に美しく走っていきます。

ヨミテが走り疲れると、そこは塔の2階で、森ではありませんでした。

1階から困った顔をした予言者が階段を上がってきました。

こんなに近くにカキテがいるのに、カキテへの道はどうして遠いのでしょうか。



今日も水鉄砲が当たらない。あさっての方向に水が飛んでいく。

兎たちは余裕のある表情で佇んでいます。

水鉄砲を放り投げると、それは放物線を描いて痩せ狼の頭にポカッと当たります。

まるで吸い込まれるように。

「引越しがしたい」

狼が言うと、猟師は無言で地面に落ちた水鉄砲を見つめました。

クヌギの丸いどんぐりが、まるで水鉄砲を囲むように散乱しています。




数日が経過して、ヨミテは猟師と狼の声が消えたことに気がつきました。

予言者は次の梯子を携えてヨミテの元に訪れました。

前の梯子は粘土でできていましたが、今回は木製です。

ヨミテは不安を抱えながら梯子に足をかけました。

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