つまさきだち
今日の昼休み、僕は図書館へ向かっていた。毎日のことだ。
図書館へ行って、適当な本を選んで、好きな席についてそれを読む。気に入ったら、借りて、昼休みに読めなかった分を家で読む。気に入らなかったら、また明日。
だが僕は、そこについてがっかりすることになる。校舎の2階の端にある図書館。その前に一人が数人集まっていた。よくよく見ると、電気はついていない。
近づくと、入り口のドアに張り紙が。どうやら今日は休みのようだ。残念。また明日、か・・・。僕は諦めて、教室に引き返すことにした。ああ、今からなにしよう。
ドン。
振り返った瞬間、僕は何かにぶつかって、弾き飛ばされ、床に尻餅をついてしまった。
「ああー、ごめんねえ。あたしい、張り紙見ててえ。」
顔を上げると、高学年らしい、ポニーテールの女の子が僕を見下ろしていた。目線を下ろすと、そこに足元が見えた。
「あ、い、いえ、こちらこそ、ごめんなさい・・・。」
「ほんとにごめんねえ。図書館、きょうはおやすみなのねえ。ざんねん」
「そ、そうみたいっすね」
「せっかくきたのになあ」
その女の子は特に残念そうなそぶりも見せず、踵を返して歩き出した。僕はその姿に、さっきの状態のまま釘付けになっていた。
彼女のつまさきだちの足元に、上履きはなかった。彼女は白いハイソックスだけで、学校の廊下をちょんちょんと、つまさきだちで歩いていたのだ。
少し歩いて、ふと彼女は立ち止まった。そしてぐるっと振り向いた。
僕と目があった。
すると彼女はにっこりと微笑んで、また歩き出した。今度はつまさきだちではなく、靴下の足全体を、床につけていた。
ちらりと見えた足の裏は、ホコリなどで灰色に汚れていた。
おわり




