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車男短編集  作者: 車男
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僕の妹

 「アキ兄!まった?」

「おう、ユウ!ううん、今来たとこ。じゃあ、いこうか。」

「うん。」

僕には妹がいる。名前はユウア。いま、中学3年生だ。ちなみに僕はアキオ。今高校1年生。今日は二人で、いつもお世話になっているおばさんへのプレゼントを買いに、地元の繁華街に来た。目当てはこの町唯一のデパート。母親から、何か食べ物を買ってくるように頼まれたのだ。

 ユウアは小さいころから空手を習っている。小さいころから勉強ばっかりして、病弱に育ってしまった僕から学んで、強い女の子に育てたかったようだ。両親は絵にかいたような、とてもいい夫婦。そして僕たちのもたっぷりの愛情を注いでくれている。

 さて、いざ買い物に行こうとすると、叫び声が。

「なんだ?」

「あっ、あそこ!」

「ひったくりよ!!誰か捕まえて!!」

「ユウ!」

「うん!アキ兄は電話して!」

「おう!」

もう一度言うが、ユウアは空手を習っている。もちろん、こういう時には空手で対応する。こんな事態に出合うのは3回目。それもユウアといるときばかり。そのいずれも、ユウアは空手で犯人を捕まえた。意外と犯人の武器を押さえるとあとは簡単だ。こんなとき、ユウアは周りが見えなくなることがある。犯人以外の人に怪我をせさせたことはないが、ものを壊すことがあった。そのときは、運よく許してもらえた。また、もうひとつ、困ることがある。犯人と戦うのだから、俊敏な動きができなくてはならない。ユウアは空手を習ってはいるが、けっこうかわいい女の子。私服は可愛く揃えている。今日は7月とあり、太陽も暑く照っている。僕は半袖半ズボンにスニーカー、ユウアは半袖のTシャツに流行りの上着、デニムのミニスカート、ヒールのあるサンダル。まあ、これで戦うなんて、普通はないだろう。

 僕に電話するよう叫ぶと、ユウアは逃げる犯人を追いかけた。他に男の人数人も追いかけている。ここで困るのが、ユウア、サンダルを両足とも脱ぎ捨てている。僕の目の前にユウアのサンダルが転がっている。そう、彼女は戦う際、靴をどこかに脱ぎ捨ててしまうのだ。空手は素足でするから、その方が戦い易いのかもしれない。でも、靴が無くなったときは困った。近くの靴屋で新しく購入した。ユウアは裸足でも気にならないようだが、僕がね…。

 さて、今日も靴を脱ぎ、裸足で犯人を追いかけたユウア。大丈夫かな? 急いで後を追いかける。ヒールの高い、女の子らしいサンダル。かかとで留められるようにはなっているものの、やはり走るのには不向きだろう。そのサンダルを手にとり、ユウアの走っていったほうにいく。角を曲がると、なんと犯人を取り押さえて叫んでいた。

 道路を走って真っ黒になった足の裏が見えている。家に帰ったら、しっかり洗っとかないと。しばらくして警察が来て、犯人は連行された。ユウアの他に男の人数人が取り押さえるのを手伝った。犯人を乗せたパトカーが去っていくと、周りの人たちから拍手が起こった。ユウアは照れ臭そうにお礼を言った。

「はい、靴。早く履いて。」

「あ!ごめんね。また裸足で走っちゃった。」

「いいよ。犯人は捕まえられたんだし。」

「そうね。じゃあ、いこ!」

「あ!早くしないと、なくなっちゃうよ!」

「急げ!」

ユウアはサンダルを手に持って走り出した。履いてって言ったのに…。まあ、いいか。

「早く、早く!」

「うん!」

人々が行き交う通りの真っ正面の空は、赤く燃えていた。明日も、晴れだ。


おわり

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