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ホワイト〜少女と龍の約束〜  作者: やまき たか
序章『白き幸福』
1/10

プロローグ

 真っ白な世界には、真っ白な二つの存在。

 小さな白と大きな白。その二つだけが、この世界には存在していた。


「もうすぐだね」


 と小さな白が言った。

 とても喜んでいるように、それでも辛そうに、なんだか切なそうに、やけに悲しそうに、でもやっぱり幸せそうな、そんな声音で彼女は言った。

 その線の様に細い声に応じる大きな白はゆっくりと瞳を閉ざす。


 ——そうね……。でも、貴女はそれでもいいの? 後悔していない?


 大きな白にそう問われ、小さな白は優しく首を振った。


「後悔なんてしてないよ。後悔なんて、したらいけない。わたしはママに救われて、今こうして幸せでいられるから……だから、後悔なんてしちゃいけないの」


 全部、ママのおかげだよ。


 小さな白はそう続けて、大きな白の顔に手を伸ばすと、自分の頬を優しく擦り合わせる。そうしていると、自然と涙が目元から流れ落ちていった。

 小さな白が目を閉じながら言葉を落とす。


「——ありがとう」


 真っ白な世界には、真っ白な二つの存在。

 小さな白と大きな白。その二つだけが、この世界には存在していた。

 しかし、そんな世界でさえもうすぐ終わってしまう。

 こんな小さな幸せでさえも、終わってしまう。


 でも、それでも、これは仕方のないことなのだ。当たり前のことなのだ。

 幸せの後に待つのは、幸せであるはずがないのだ。


 きっとそうだ。

 わたしは幸せを手にしてしまったのだから、こうなってしまうのもしょうがない。

 

 小さな白は、自分に言い聞かせるように大きな白を抱きしめる。


 ——それでもわたしは……。

 ――今は、幸せだ。


 自らに言い聞かせてから、再び涙を一粒だけこぼす。



 もうすぐに、幸せは白へと変わり果てる。

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