8.ドライアドの守護
私は今、かれこれ数時間森の中を彷徨っている。エルフの里に行くには、深淵の森にてドライアドに道を聞かないといけないのだけど、深淵の森が遠い!
まず、メサイオ王国の東にあるアーダ神聖国に入る。そしてその更に北東にあるヴァルツヴァルトの森のそのまた奥に深淵の森があるはずなのだけど、ヴァルツヴァルト広すぎてヤバい!
もちろん森の入り口からじゃなくて、シーラに乗って、随分奥まで入ってから探索を始めたのだけど、まったく深淵の森に辿り着く気配がない。
深淵の森は、昼間でも真っ暗で、生物も皆眠りについているような静かな場所なのだけど、行けども行けども普通の森だ。正直上からではわからなかったが、下からでもわからないわね!
あードライアドに深淵の森がどこか聞いてもいいかしら?いいよね。よし決めた!
私はマジックバッグからお酒を取り出した。
近くの木に振りかけるとドライアドが現れる。木によって、微妙に姿は違うけど、美形であることには変わりない。
「可愛らしいお嬢さん。何か御用ですか?」
「出てきてくれてありがとうございます。お友達のドライアドから何かあったらあなたたちを頼りなさいと言われたのですが、道を一つ教えていただけませんか?」
ドライアドの守護を見せながら、そう言うと、彼(女?)は笑顔で頷いてくれた。
「お安い御用よ。どこに行きたいのかしら」
「エルフの里に行きたいのですが、どちらの方角に行けばよいでしょうか」
そう言うとドライアドは困ったような顔をした。
「あら遠いわよ。ここからなら、歩いて三日はかかるわ」
三日!もっと奥でシーラから降りればよかった。ゲームではあっという間に深淵の森についてたけど、そういえば一週間後という表記があったような気もする。
「道案内にこの子を連れて行きなさい。迷わず導いてくれるはずよ」
小さなヤドリギだ。可愛らしい親指姫のようなドライアドが顔をのぞかせている。
「ありがとうございます。あの、何かお困りごとがあったら教えてください。私でできることならお手伝いします」
「ありがとう。大丈夫よ。貴女、森を魔物たちから守ってくれているのでしょう。私たちはすでに貴女から沢山助けてもらっているわ」
驚いた。ドライアド達は情報を共有しているのか。こんなに離れた場所でも私のこと知られているのね。
「バルゼブブを倒した話も聞いているわ。アンドロマケの首飾りが欲しいのでしょうけど、貴女ならきっと大丈夫よ」
ドライアドは微笑んで消えていった。
私はぺこりと頭を下げて、ヤドリギを肩に乗せた。
「さてと、貴方お名前はなんていうの?」
「ワタチはギイよ。よろちくね。聖女様」
バレてる⁉なぜに!
「まだ覚醒してないわ。聖女じゃなくてルチアと呼んで」
「ルチア!」
ギイは嬉しそうに笑った。可愛い‼
こうして私は相棒をゲットして、深淵の森に向かった。三日かかると言われたら、先が見えて歩くことが苦じゃなくなった。ギイはおしゃべりで、ちょうどよい話し相手になったというのもある。
まだ生まれたばかりなのに何でも知っている。やはりドライアド達は情報を共有しているのだろう。そのことを聞いてみると世界樹を通して、この世の理をすべて知ることができると教えてくれた。それって、すごいことなんじゃないだろうか。
バレたら悪用する人間とかいそう。そう言うと、そんなことがあれば世界樹がすぐ気づくからそのドライアドは隠されてしまうとのことだった。
古代、ドライアドの知識を悪用するために魔術で彼らを捕らえようとした王がいたそうだ。その時は国中のドライアドが世界樹に隠され、瞬く間に荒野と化し、その国は一晩で滅びたらしい。
「恐ろしい話ね」
人間の欲がね。
「ほとんどの人間はそんなことちないわ」
ギイは私の心が読み取れるかのように言葉を正確に理解する。きっとドライアドは悪意なんてお見通しなのだろう。悪戯好きと呼ばれるドライアドに、今まで一度だって何か酷いことをされた覚えがないのは、守護のせいだけではないのだろう。
こちらに悪意がなければ彼らは良き隣人なのだから。