4.見習い竜騎士、魔物を倒しまくる
ジェイさん、私、ダレン小隊長の順番で森を進むと、ジェイさんが突然立ち止まった。
奥の方から微かに魔物の嘶きが聞こえて来た。
「いた!」
ジェイさんはボウガンを構え、ダレン小隊長も剣を携えた。
「ルチア」
ダレン小隊長に促され、私は対象を捕捉しようと目を凝らす。わずかにアンキロヌスの甲羅が見えた。あれね。
私は指を口に立て、ダレン小隊長とジェイに静かに見守ってくれるようお願いする。
二人は黙って頷いて答えてくれた。
私はその場から動かずにアンキロヌスの甲羅を見据えたまま、魔力を行使する。甲羅の内側。草食なら腸にガスが溜まっているだろう。それを一気に燃焼させるのだ。
指で対象を指し、魔力が一直線にアンキロヌスの身体を捕らえた。その瞬間アンキロヌスが大きく嘶き、何かが爆発するような音が聞こえた。腸のガスが引火して、中で破裂したのだろう。
アンキロヌスは大してあばれもせずにその大きな体躯を横たえた。大きなと言ってもこれは幼体だ。成体になればとんでもなく巨大になる。長寿であるこの魔物は小さな銭亀ぐらいのサイズから何年もかけて成体になる。魔素が多い所であれば成長が早いらしいが、この森は人里近く、魔素が少ない。それでも、次から次へと魔物が現れ、時には大量発生が起こることもあるので、竜騎士団の監視は非常に重要なのだ。
「お見事」
ジェイさんが感心したように口笛を吹いて言った。アンキロヌスの身体も甲羅も高く売れるので、竜騎士団にとっては思わぬ臨時収入だ。
でもこんな巨大な物どうやって持って帰るんだろう?ワイバーンじゃ無理だわ。
そう思っていると、ダレン小隊長がマジックバッグを取り出し、あっという間にアンキロヌスをバッグに取り込んだ。さすが小隊長!お高い魔道具もちゃんと持ってるのね。
ゲームでは魔王討伐の際に王様から支給されるが、一般人には手に入りにくい高価な魔道具なのだ。
「よくやった。さすが俺のルチアだ」
そう言ってダレン小隊長はニカッと笑った。私は小隊長のものになった覚えはないけどね!
「さあ、奥に進もう。さっきの咆哮とアンキロヌスの死臭で他の魔物が集まって来たようだ」
確かに森の奥から木々のざわめきが聞こえる。私たちは慎重に奥に進んだ。
その後、猿に似た凶暴な魔物インドラや、植物に擬態した魔物カルニバロス、角を持った狼のようなデモンハウンドなど魔物に次々と出会ったが、ジェイさんが気付くのが早くて、
距離を取って、攻撃することができた。
ほぼ瞬殺できたので、二時間の探索の間に二十頭近くの魔物を倒すことができた。
インドラの脳みそを魔力で焼き殺した時、ジェイさんが「えげつな……」とあきれていたのは聞かなかったことにする。




