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悪役令嬢攻略します!  作者: 烏丸じょう
第一章 シラクサ篇
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3.見習い竜騎士、小隊に配属される

本日より毎日18時更新予定です。

 合格通知を貰ってから一週間後、私は晴れて竜騎士見習いとなることができた。

ここから三か月の基礎訓練が始まる。主に座学と、騎竜技術や剣技、体技などの訓練になる。

 魔力持ちは希望すれば、剣技と体技の代わりに魔法の訓練のみとすることも可能だが、私はあえて全ての訓練を受けることにした。

 

 剣技と体技も覚えて損はない!


 十歳で、まだ男の子たちと体力的な差が小さいのが幸いしたのだろう。

 カリキュラムは年齢別に組まれるので、私は特に皆に遅れることなく、訓練に励むことができた。

 身体動かすとスッキリするしね!


 あっと言う間に三カ月が立った。引き続き、魔法訓練をじっくり受けることもできるはずなのだが、団長から私には必要ないだろうということで、あっさり実働部隊に放り込まれてしまった。

 まあ、魔力持ちじゃない竜騎士見習いの子たちも一緒だし、いいけどね!


 シラクサ竜騎士団は一小隊十六人編成で第三十小隊まで分かれている。

 団長と副団長が一名ずつ、小団長が六人、そして、その下に各小隊の小隊長、副小隊長、団員が付く。副小隊長は各隊三名だ。

 小隊は十六人でローテーションを組み、四名ずつが交代で業務に就く。夜勤もあるし、時には長時間労働となるが、週に三日か四日は連休があるので身体は楽だ。


入団一年未満の者は竜騎士見習いとして、各小隊に振り分けられる。また十六歳未満の竜騎士は夜勤が免除されたり、学園に行くために長期休職することも可能であり、配慮がなされている。

 

 私は当然のごとく、ダレンさんの小隊に配属された。現在最年少団員なので親とも面識のあるダレンさんが担当するのが一番良いだろうということだった。


「今日から我が第十五小隊に竜騎士見習いとして配属されたルチア・メイズだ。ルチアは知っての通り攻撃魔法の強力な使い手だ。早速実践でその力を発揮してもらおうと思うが、何分経験が少ないので、皆注意してみてくれ」

「ルチア・メイズです。よろしくお願いします!」

「「「はい」」」


「ルチア、歓迎するよ。俺はゼンだ」

 銀髪にアクアブルーのクールな美男子だ。

「ようこそ!俺はカイ」

 癖のかかった茶髪に右目の傷が特徴の爽やかイケメン。

 声が割と好み!福純の次に好きな声優の森修に似ている気がするわ。

「俺はジェイ。いつも隊長と一緒に店に行ってたから知ってると思うけど」

 明るい茶髪にそばかすの一番若い隊員さん。ハイハイ知ってますよ。いつもダレンさんに荷物持ちさせられてましたね!


「はい!もちろんです。いつもご愛顧ありがとうございます!」

 そう言ってお辞儀をしたらなぜか皆に笑われた。解せぬ。


小隊はそれぞれ担当する場所が分かれる。まず砦に五つの小隊が常駐する。そして、町中の巡回を五つの小隊。あとの十小隊が国境付近を巡回し、残りの十小隊は郊外をエリアごとに監視している。これらは月ごとに担当領域が交代制となっている。


 今月の第十五小隊は、森林エリア担当。一番魔物が発生しやすい地域である。

 

「ルチア、お前は俺とジェイと一緒に行動しろ。座学で学んだ魔物の特徴は覚えているな。魔物を見つけたら攻撃しても構わんが、森は焼かないように気を付けろ」

「はい!わかりました!」


 まず二手に分かれ、ワイバーンで森を上から見る。不自然に動く葉は魔物の可能性が高い。

 時々動物の鳴き声や嘶きのようなものも聞こえてくる。


 ダレン小隊長が比較的地面の見える場所を指さした。 

「あそこに降下しよう。装備は大丈夫だな」

「「はい!」」


 ワイバーンを滑空させ、地面近くに来たところで飛び降りる。

 魔物の気配は近くにないが、少し先に不自然な木々の揺れがあった。


「ジェイ、ルチア、俺の順で二時方向に進もう。ルチア、あの奥に木の折れた後が続いているだろう、大型の魔物の可能性が高い。それからこの森のドライアドに先に挨拶しておこう」

 そう言うとダレン小隊長は持っていた酒を近くの木に振りかけた。

 

 木が不思議な揺れを起こし、周囲の木に伝搬していく、初めて見る光景に目を見張っているとドライアドがその木から現れた。


「あら久しぶりね、ダレン。今日は随分可愛い子を連れているのね。あなた子持ちだったなんて知らなかったわ」

 美女なのか美少年なのかよくわからない美しい精霊は面白そうにダレン小隊長に話しかけた。どうやら知り合いらしい。

「俺の子じゃねーよ。この子はルチア・メイズ。新人だ」

「はじめまして、ルチア・メイズです」

 私がちょこんと頭を下げるとドライアドは、「可愛い!」と身をよじった。


「お嬢さん、髪を整えてあげるわ」

 そう言うと、私の無造作に束ねられた髪をほどき、あっという間に両サイド編み込み付きの高めのポニーテールに結わえなおしてくれた。

「はい。この髪紐は私からの入隊祝い。あなたが森で困ったとき、私の仲間が助けてくれるわ」

「わあ!ありがとう!」

 それは、木の実の飾りがついた緑と茶色の髪紐だった。

 ラッキー!これゲームの魔王討伐の旅の途中でゲットする、「ドライアドの守護」じゃん!ゲーム開始前にゲットできてしまった。これがあるとエルフの里に行けるのよね。


「今から、ここら辺の魔物を討伐していくが、あの倒れた木は何にやられたかわかるか?」

「あーあれね。アンキロヌスよ。最近大きく育ちすぎて、そろそろ迷惑なのよね」

 

 アンキロヌス!ガメラみたいな巨大な亀に似たモンスターだ。しっぽが長くて、先に大きな岩のような棘があり、厄介なモンスターだ。

 草食だが、下手をしたらこの一帯は食い荒らされてしまうだろう。


 隣でジェイさんが絶望的な顔をした。アンキロヌスは通常倒すのに骨の折れるモンスターだ。

攻撃力も高いし、防御力はピカ一だ。でもそれは物理的攻撃に特化した場合の話だ。正直私の敵ではない。

 

「ルチア、行けるか?」

「大丈夫だと思います。」

 私は自信をもって答える。

「じゃあ、お手並み拝見と行こうか」

 ダレン小隊長は不敵に笑って、私たちは森の奥に足を踏み入れた。


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