10.決戦の時
城内に入る前に一旦休息を取る。城内に入ればノンストップだ。
十階層の部屋の中で、一番外に近い部屋を緊急時の避難場所に定めた。私が魔王に対して大魔法を展開すると、アンドロマケの首飾りをしているケイト以外は塵になってしまうので、詠唱が完了する前に三人にはズィアスの転移でこの部屋まで瞬間移動してもらう。その後すぐにワイバーンで城から離れてもらう予定だ。
魔王を倒すための大魔法は魔法陣も展開するので、詠唱に時間もかかれば、移動しながら詠唱することもできない。
その間物理攻撃から私を守ってもらう必要がある。
まあ、キュー太の言ってたことが本当なら、「誰も傷つけることはできないはず」なんだけどね。試してないからわからないしね!
予め、サトゥルノに土魔法で部屋に外に続く穴を作ってもらった後、更に私の大魔法の影響を抑えるための補強を行ってもらった。
マクシムスに幻惑の術をかけてもらって、外からは入れないようにもしてもらう。
乙女ゲームの中ではこんな描写もなく、ズィアスの転移で無事に逃げてたけど、現実ではちゃんと下準備しとかないとね。
ケイトには最後まで一緒にいてもらって、魔王に大魔法を放った後、私と一緒に逃げる予定だ。
「じゃあ、行こうか!」
「「「「行こう!」」」」
宮殿に入ると大量の魔族や魔物が襲ってきた。ワイバーンに乗って、地獄の炎を連発して前に進む。
いよいよ魔王の部屋だ!ワイバーンをバッグに収納して、慎重に部屋に入る。
ズギュン!!!
魔王からの攻撃が容赦なく襲い掛かる!
咄嗟にマクシムスがガードしてくれてことなきを得た。
「ここまでよく来たな。虫けらども。歓迎してやろう」
見れば山のような黒い影が言葉を発した。
私は前に出て呪文の詠唱を始める。四人は私の周りに立ち、周囲の魔物からの攻撃を防いでくれる。しばらく頑張ってね!
「ファッファッファッ!虫けらども八つ裂きにしてくれる!」
魔王が無属性の魔法攻撃を繰り返す。私が予めかけていたリフレクトが弾いてくれても、私の仲間たちのダメージは小さくない。
私は魔王の言葉に反応せず呪文の詠唱を続けた。
「……地に蔓延りし、黒きものよ……」
視界の端では、ケイトが必死に戦っている。
「……精霊の厭いし、悪しきものよ……」
マクシムスの魔力が尽きかけている。
「……芥の塵から生まれしものよ……」
サトゥルノとズィアスが、血に染まりながらも敵を蹴散らしてくれている。
「……天の意志において命じる……」
みんな、ありがとう。貴方たちが仲間でよかった!
「その姿を滅し、無に帰れ。」
ズィアスたちが転移した。今だ!
「終末の訪れ!」
私の魔法陣が完成し、強大な青い炎が魔王を包む。
「ギョエエエエエエエエー‼」
魔王の断末魔が聞こえて、全ての崩壊が始まった。
「ケイト!」
「ルチア!」
世界の澱からできた城が、砂岩のように崩れ落ちる中、私たちは退路を急ぐ。
「海龍の咆哮!」
ケイトが「最後の審判」並みの大魔法をぶっ放して、天井に大穴を開けてくれた。
さすがラスボス!やってくれるわ。
私たちはワイバーンに乗り込み、急いで外に飛び出した。
魔王城が闇に沈む中、「ありがとう」という声が聞こえた気がした。
それは私が大好きな人と同じ声のようだった。




