2.竜騎士団入団審査
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竜騎士団の入団試験には、 個別実技と集団面接による審査がある。
審査のポイントは志望動機と忠誠心だ。スパイとかだと困るからね!嘘かどうか判別する水晶に手を置きながら面接官の質問に答えていくことになる。
嘘だと水晶の色が、緑から赤に変わるらしい。
「ルチア、凄かったな。全的破壊は結局お前だけだったよ。さすが俺が見込んだだけのことはあるな」
審査までの空き時間、控室でお弁当を食べていたら、顔見知りの竜騎士のダレンさんが声をかけてきた。
ダレンさんはうちの両親の営む雑貨屋の常連さん。私が生まれる前からの付き合いらしい。彼はこの町の平民として生まれ、竜騎士になった人で、王都行きを望まずに、この地でずっと国境を守ってきた。
「そうなんだ。でもあの的の多さじゃ半分でも壊せたら良いほうじゃない?」
的の数に対して、制限時間が短すぎる。試験の合格ラインの十個はなんとか壊せても、魔法を使わなければ、半分でも不可能だろう。
「今回は魔力持ちの受験者は少ないの?」
なんとなくそう思って聞いてみた。
「いや、少なくはないが、お前ほど正確にコントロールできる魔力持ちなんて、うちの試験を受ける奴にはいねーよ」
確かにそうかもしれない。私はチートなので置いといて、ここで竜騎士団に入ろうとする者たちは、まだ学園を卒業していない者がほとんどだ。
魔力持ちでも、学園を卒業した後なら王都の竜騎士団の試験を受けるだろう。
「まあ、お前は必ず受かるから、審査も大船に乗った気持ちで受けろ。何しろ身元はしっかりしてるし、そもそもうちの団員は皆お前が入るのを手薬煉引いて待ってるからな」
私は普段町の外の森の近くで魔法の練習をしている。竜騎士の人たちはその様子を最初は心配して見に来てくれていた。何しろ小さな女の子が人気の少ない、魔物も出かねない場所に一人でいるのだから、普通は心配するよね。
でも私の力量を見て、その心配は杞憂に終わったらしく、受験可能な十歳になったらぜひ竜騎士団に入れと、会う人みんなに言われていた。
(ちなみに池を干上がらせたのは竜騎士団の人たちに気付かれる前です。)
八歳の時に森で小規模のスタンピードが起こったけど、たまたま近くにいたので、すべて焼き払ったのは懐かしい思い出だ。
せっかく出動した竜騎士団を無駄足にさせてしまったけど、普段強面の人たちの悲壮だった顔が安堵の涙に濡れた様子は見ものだった。
ちなみにその功績は、知らぬ存ぜぬで押し通したので、公式には自然現象でスタンピードが収まったことになっている。だってあんまり派手なことやったら話変わっちゃうし!
それでも竜騎士団には私がやったことだとバレバレだったので、その日以来、ますます勧誘は激しくなったことは言うまでもない。
審査の時間になり部屋に通された。私の他に三人の男女が入室する。
試験官は二人。団長さんと副団長さんで、あまりしゃべったことはないが、お互い顔見しりである。
部屋には片側に水晶玉の乗った肘掛けの付いた椅子が四脚並んでおり、私たち受験生はそれぞれ着席した。
「では右手を水晶に置き、こちらを向きなさい。まず、右の君から名前と志望動機を答えなさい。それから王国と騎士団への『忠誠の言葉』を暗唱して」
忠誠の言葉は審査前に全員に配布されている。短いし、間違えても問題ないが、緊張するので、なかなか言葉が出てこなかったり、しどろもどろになってしまう人も多い。
順番に答えて、最後に私の番になった。
「ルチア・メイズです。竜騎士になって、皆を魔物から守りたいです。私はここにメサイオ王国とシラクサ竜騎士団への永遠の忠誠を誓い、メサイオ、シラクサの平穏のために尽力します」
そう一息に答えると、水晶は緑色に光った。誓約の魔法ではないが、緊張するわね。
永遠の忠誠とか結構、ハードル高いわ。
そして、翌日我が家には合格通知が届いた。当然よね!