8.課外授業
学校に入学して半年が過ぎた。私はクラスメイトたちと毎日楽しく学んでいた。あの四人の男たちも、あれ以来、私に近づいてくることはなかった。
古代文字や魔法陣の授業は初めて見聞きすることばかりで、難しいけど刺激になった。
それぞれの得意な科目を教えあう勉強会なども開き、最初は女子生徒ばかりだったけど、男子生徒や、他のクラスの人たちも参加して、皆で切磋琢磨しあうようにもなった。
戦闘バカだった私は、応用研究の授業で、戦闘以外での魔法の応用方法を見聞きし、とても視野が広がった気もした。
そんな中、乙女ゲームのイベントでもある課外授業が始まる。四人一組のチームで、魔物も出る森で一泊二日のビバークをするというものだ。
これは自由参加なのだが、ケイトが参加したいというので私も一緒に参加することにした。
応募者の中から先生方がチームメンバーを決めるのだが、一応希望も聞いてくれるので、私たち二人はチームメイト確定。残りの二人はなんと、王太子と、騎士団長子息のジョニー・ホークになった。
ケイトによるとジョニーは、ケイトや王太子と幼馴染なのだそうだ。昔から偉そうで、ケイトとは喧嘩ばかりしていたという。それって好きな子苛めと言う奴じゃないだろうか。
いよいよ、課外授業の日となり、私たちはビバークセットを持って、森に入った。
何匹か魔物を狩ると、最初は実戦に慣れなかったケイトも徐々に様になり、危なげなく魔物を倒せるようになってきた。それは令嬢とは思えない動きで、ケイトが今まで戦闘訓練を受けて来たであろうことが見て取れた。
レオナルド殿下とジョニーは最初から安定した戦闘能力だった。さすが攻略対象者!
乙女ゲームのイベントでは、二人ずつ順番に夜の見張り番をするのだが、攻略対象者の中でその時点で最も好感度の高い者とペアになり語り合う。
今回、私はケイトとペアになった。声を落として語り合う。
「ケイトは、どこかで戦闘訓練を受けたの?とても素晴らしい身のこなし方だったわ」
「……実は、私も竜騎士になりたいんですの」
私は耳を疑った。侯爵令嬢が竜騎士!?近衛騎士ならまだわかるけど、竜騎士なんて、基本的に最前線ですよ!侯爵令嬢がなるもんじゃないわ。
ケイトは続けた。
「私、貴女にワイバーンに乗せてもらったあの日から、あの体験が忘れられないの。もう一度貴女と同じようにワイバーンに乗りたい!貴女と同じ竜騎士になりたい!……そう思って、あの日から今まで鍛錬を続けています」
すごい!もうあれは四年以上前のことだ。そんなに長く鍛錬してるなんて本気でなりたいってことよね。
「じゃあ、もしかしてワイバーンにも乗れるの?」
「はい。今では乗馬よりも得意ですわ!」
自慢げに言うケイトはとても可愛かった。私は親友として心からケイトを応援したいと思った。
「私、応援する!ケイト、一緒に竜騎士になりましょう!」
「ええ!私、頑張りますわ!」
手を取り合って誓い合う私たちに、煩かったのか男たちが目を開けてこちらを見た。
起こしてゴメンね!
その時、私は気付かなかった。彼らの眼の奥にほの暗さがあることを。




