4.魔力操作
「ではこれからそれぞれ魔力操作の訓練を始める。このクラスは、基礎魔法はマスターしているはずであるので、無詠唱で、魔力を放出しかつ静止した的に正確に当てることを目指す。ルチア・メイズ前へ」
私は前に出た。先生から事前に魔力操作の見本を皆の前で見せてほしいと言われていた。
「ルチア・メイズは、シラクサ竜騎士団の精鋭で、上級魔族を一人で倒したほどの術者だ。竜騎士団の入団試験では十個撃ち落とすのも難しいという的を、百個全的中させたほどの腕前と聞いている。ルチア、では皆に見本を見せてくれ」
「はい」
私は指をピストル型にして手をまっすぐ前に伸ばした。一番左の的の真ん中を狙う。
心の中で「バン」と唱えて火炎弾を飛ばせば、思った通りのところに風穴が開いた。
音もなく穴が開き、ゆっくり倒れる的がコツンと鳴って、固唾を呑んで見守っていた皆のどよめきが瞬く間に広がった。
「続けて」
「はい」
今度は指を開いて両手をまっすぐ前に出す。GO!すべての的に同時に穴が開き、歓声が広がった。
「すごい!」
「ヤバい!今の何が起こったのか全然わかんね!」
「素敵!」
「ルチア様~!!」
振り返れば、女性陣の眼はハートの輝き、男性陣の顔には畏怖が広がっていた。
伊達に「地獄の魔女」って呼ばれてないからね!もう開き直った私は、「可愛い女の子アピール」を放棄することにした。これからはクールな女竜騎士で行くわ!
「では、各自五人ずつ列を作って、的の前へ、まずは無詠唱で、魔力を放出する訓練を行う」
そう言って、先生は五人の生徒を的のすぐ前に立たせた。
「的から指一本分ほどの隙間を作り、右指を的に向けて構えなさい」
五人の生徒たちは、私がさっきしたのと同じように指を向けた。
「指先に魔力を貯めて、放出するイメージを持って。放て!」
五人の生徒たちは、顔を緊張させたが、上手く放出できなかったようで、的はピクリとも動かなかった。
「では次の五人、前へ」
ケイトが前にやって来た。
同様の説明が行われ、一斉に魔力を放出する。
バン!
ケイトの的は大きく後ろに飛び、粉々になった。さすが学園編ラスボス!只者じゃないわ。
「すごいわ!ケイト!さすがね!」
「いえ、ルチアのように同時に何発も正確に放出するのはまだまだ無理ですわ」
私たち女子がキャッキャッと盛り上がっている間もどんどん、生徒たちが的を狙っていく。結局、まともに飛ばせたのは攻略対象者五人とケイトだけだった。
「このように無詠唱で魔力を放出することは難しい。今日できなかった者は、イメージトレーニングを行い、無詠唱で魔力をコントロールする訓練を自習しておくこと。明日もまた同様の訓練を行う。本日できた者は明日から魔力量の調整かつ放出する魔力に属性付与する訓練に移る。同様にイメージトレーニングを自宅にて行うように。ただし、屋内または狭い場所で行う場合は暴発等危険が無いよう、十分注意を払うように」
「ルチア、何かコツのようなものはないかしら?」
「指先に魔力が溜まるのはわかるのだけど、放出が難しいですわ」
女子Sが次々に集まって来た。
「コツは心の中で声を出すことかしら。私も口には出さないけど、心では『バン!』って言ってるのよ」
「「「なるほど~」」」
皆、納得したようにうなずいている。試しにもう一度的に向けて、指を向けてみると、皆次々と成功した。さすが魔力値最高値クラス!
「あと、属性付与は、私は指先に小さな炎を灯すイメージから始めたの。同じように指先から自分の属性のものが出てくるようなイメージを訓練すればよいと思うわ」
これも皆次々と成功していく。魔力量の調節もこの後は簡単だ。徐々に大きくしていけばよいのだから。あとは正確に的に当てられたらOKだ。
「正確に的に当てるには軌道が逸れないように勢いをつける必要があるの。これは的を狙って、何度もやって行けばできるようになると思うわ」
そう言ったところで、そろそろ訓練場から教室に戻る時間となった。次は座学だ。頑張ろう!




