3.クラスメイト
学園には寮があり、王都外から来た平民はほとんどが寮に入る。貴族たちは王都にタウンハウスがあるので、そちらから通う。
寮はありがたいことに一人部屋で、狭いながらベッド、勉強机、クローゼット、シャワーとトイレも付いているので快適だ。
「ギイちゃん行ってくるね」
「はい。行ってらっちゃい!」
私は日が当たりすぎない窓際近くに、ギイちゃんを置いた。寝る時は枕元に置いて、喋りながら寝ている。寮暮らしもギイちゃんがいれば寂しくないね。
さあ、今日から授業が始まりますよ!クラスは魔力値ごとに振り分けられていて、ケイト、王太子、その他攻略対象者、全員クラスメイトになった。これはゲームの通りだ。
クラスは四十人ごとで五クラスあるそうなので、二百人か。国中の魔力持ちの十五歳がほぼ集まっているはずだけど、多くはないわね。
魔力持ちでも、他の学園に行くことは可能だし、行かないことも許されているので、まあこんなものか。
シラクサの町の幼馴染や竜騎士団仲間達は全員クラスが違ったけど、近くにいると思うだけで心強い。
学園でのカリキュラムは魔力操作、座学、応用研究、魔道具研究の四つに分かれる。
座学はさらに四科目あり、古代文字と魔法陣、魔導史、大魔法学がある。
必修は魔力操作、魔法陣のみで、応用研究、魔道具研究はいずれかの選択。古代文字、魔導史、大魔法学は自由選択になっている。私は応用研究、古代文字、大魔法学を選択した。
部活動もあるので、身体が鈍らないように何か運動系に入りたい。
必修はクラスごとに受講だけど、選択科目は科目ごと。別のクラスの人とも一緒になる機会はあるが、やはり魔力操作がメイン授業なので、クラスメイトとほとんどの時間をすごすようになる。さて、友達百人できるかしら?
クラスに入って授業の準備をしていると、ケイトがおずおずと近寄って来た。慌てて立ち上がる。
「おはようございます」
「……おはようございます。昨日は大変失礼いたしました」
ケイトはそう言って深々と頭を下げた。
「貴女が女性であっても、命の恩人であることに代わりありませんのに。申し訳ございません。どうかお許しくださいませ」
「そんな!お気になさらないでください。よく男に間違われますので、気にしてません!」
自分で言っていて悲しくなるけどね。
「申し遅れました。私はケイト・リベロ。どうかよろしくお願い申し上げます」
「改めまして、ルチア・メイズです。こちらこそよろしくお願いいたします!」
そう言って私が笑顔を向けると、ケイトもやっと笑ってくれた。幸先いい感じじゃない?この調子で、お兄様迄一気に攻略しちゃうぞ!
ケイトは私に同じクラスの自分の友人の少女たちを紹介してくれた。予想通り、全員ゲームで悪役令嬢の取り巻きだった子たちだわ。
「まあ、噂の竜騎士様ですね。初めまして」
「ケイト様からお話を伺っていて、ぜひお会いしたいと思っておりました!」
「シラクサに私たちと同い年の少女の英雄がいると伺っておりましたが、貴女様のことでしょう?」
予想を上回る好意的な反応にちょっと引く。なんか皆さんの顔、上気しているんですが……。
その後、平民の女子たちとも言葉を交わし合い、皆身分差なく名前で呼び合おうということになり、クラスの女子Sは何となく「いい感じ」にまとまった。反対に男性陣からの私への視線がなぜか冷たい気がしますが。なぜでしょう……。




