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悪役令嬢攻略します!  作者: 烏丸じょう
第一章 シラクサ篇
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1.ヒロインになってしまった。

本日19時第3話更新。

明日から毎日18時更新予定です。

 見上げれば、時々竜騎士がワイバーンに乗って空を駆る姿が見える。

 森に行けば、ドライアドが悪戯し、秘密の道を辿ればエルフの里に辿り着くという。

 険しい雪山を越えれば、魔物の国があり、その最深部には魔王の城があるという。


 ここはパルディオ大陸にある王国の一つ、メサイオ王国。この世界は所謂「剣と魔法の国」だ。


 そんな世界になぜか生まれ変わってしまった、享年三十の「私」。

 今の名前は ルチア・メイズ。ここ、辺境シラクサの町に住む紺碧の髪の少女(十歳)だ。

 サラサラ艶々のロングヘアと碧い瞳のなかなかの美少女よ!


 お察しの通り、「紺碧の聖女」のヒロイン、ルチアに生まれ変わってしまったのだと思う。


 根拠はいくつかある。この世界の国や都市の名前、世界観がゲームそのまんまであるということ。そして、私の顔と名前、両親の顔と名前が、ゲームに出てきたものと完全一致!


もう疑いようがない。

 

 魔力持つ者が通う、アヴィリオス魔法学園もゲームのまんまだし、国の名前も王族の名前もゲームの通りだ。

 もちろん私が住むこのド田舎の町、シラクサもゲームの通りよ。


 きっと、隠しキャラルートスタート直後に死んでしまった私の無念を神様が汲んで、生まれ変わらせてくれたに違いない!つまり、現実で攻略しろってことよね!やってやるぜ!


 シラクサは田舎町だけど、国境の要所でもあるので、竜騎士団が常駐している。

 ゲームの展開ではなかったけど、私はこれから入団試験を受けに行くつもりだ。聖女になれば、魔王討伐の旅に出るわけだけど、ワイバーンで移動できれば楽だし、竜騎士団で鍛えてもらえれば、討伐自体も確実性が増すだろう。


 剣と魔法の国に転生したことはとてもワクワクするけど、あくまで現実だからね。社会人八年もやってたら、計画性と効率性を重視するわけですよ。


 この国の竜騎士団は本来十二歳から入団可能なのだけど、魔力持ちなら十歳から入団可能。乙女ゲームのヒロインだけあってチート魔力持ちなので、活かさない手はない。


 治癒や回復の魔法は聖女覚醒後じゃないと使えないけど、私には今の時点でも強大な魔力と炎属性が付いている。特に物心ついた時から前世の記憶を思い出していたので、小さな頃から魔法鍛錬を続けてきて、今では大魔法以外は無詠唱で使える。


 正直、ゲーム知識があるから大魔法も詠唱すれば実行可能なのは内緒である。大魔法の内でも一番威力の弱いものを試してみて池を干上がらせたことがあるからだ。


 あーあの時は大騒ぎになって、知らないふりをするのが大変だったわね……。思い出すと、ふと遠い目になるわ……。


 本来なら大魔法は学園に入ってから、それもイベントをこなさないと得られないのだが、転生チートのお陰か、その手間が省けてしまったわね。


「これから、竜騎士団入団試験を行う。一人ずつ呼ばれたら前に出て、複数現れる的を破壊するように。時間内に十個の的を壊すことができた者は合格として、入団審査を行う」


 竜騎士団の入団試験は大人気。主に十代の男女が百人ほど集まってきている。何しろ入団できたら、騎士の称号と固定給が手に入る。本来貴族しか行けないような学園に通うことも可能だ。


 この国には大きく三つの学園がある。魔力持ちなら誰でも通うことができるアヴィリオス魔法学園、騎士を目指すものが通うゲオルギオス士官学園、そして貴族が通うエイレーネ王立学園だ。いずれも王都であるエイレーネにある。

 竜騎士団に入ればゲオルギオス士官学園に平民でも入ることができ、卒業すれば王宮騎士になることも夢じゃないので、魔力のない平民にとって、大きなチャンスである。


 魔力持ちは、貴重なのでアヴィリオス魔法学園にて身分問わず優秀な者を積極的に魔導士として育成していく体制ができているからね。魔力がある時点である意味勝ち組だ。


「ルチア・メイズ!前へ」

 試験官が私の名前を呼んだ。


 私が前に出ると、数十個の的が宙を舞った。私は腕を前に出して、冷静に火炎弾を発した。

 私の全指から小さな炎が勢いよく踊りだし、的を次々と落としていく。

 

 火炎弾はただの炎ではない。際限まで圧縮した魔力の空気砲はそれだけでも武器になるが、そこに炎のエネルギーを詰め込むので、拳銃の玉に超小型のダイナマイト爆弾が付いているようなものである。


 火炎弾が貫通すると、物質に焦げたような穴が開くのが特徴ね。

 魔法を組み替えれば、敵の内部で爆発を起こすことも可能な見た目地味だけど恐ろしい威力のある魔法である。


 最後の的がコトリと落ちた。会場内は静まり返った。

 小さな美少女が無詠唱、無表情で行ったこの結果に、信じられない気持ちでいるのだろう。

 うん、我ながらチートだと思うよ!


「全的破壊!合格!」

 試験官があわてて叫ぶ。それを合図に会場に喧騒がよみがえった。


「ありがとうございます!」

 私はにっこり微笑んだ。よし!次は審査だ!頑張るよ!


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