閑話 その時悪役令嬢は
本日、閑話と番外編の2話投稿!ご注意ください。
明日から新章突入!いよいよ学園編です。
燃えるような赤毛、翡翠のような瞳、雪のように白い肌。誰もが振り返るような美少女が、それに似つかわしくない大きな剣を振って、鍛錬していた。
彼女の名前はケイト・リベロ。リベロ侯爵家の末娘だ。
甘やかされ、我儘に育った彼女だったが、四年前に母方の伯父の別荘に遊びに行ったときに、湖の小舟の上に一人取り残されて以来、実にストイックに剣術や魔法の鍛錬に励むようになった。
その時助けてくれた竜騎士に憧れ、自分も竜騎士になりたいと言い出し、ワイバーンによる飛行訓練を始めとして、真剣に竜騎士になれるよう日々努力している。
最初は気まぐれで、すぐ辞めると言い出すだろうと思っていた父親も、まさかこんなに続くとは思わず、途方に暮れていた。
王都でも最高に美しいと評判の自慢の娘は、王太子の婚約者候補になるほど引く手数多であったが、本人が絶対に嫌だと言うのですべて断る羽目になった。それでも日々送られてくる各家からの申込みの手紙に頭を悩ませる日々だ。
説得しようにもケイトは頭が良く、弁が立った。そもそも可愛い末娘を他所にやりたいとも思わなかった。もちろん竜騎士団に入れるつもりもないが……。
自分の父親がそんな悩みを抱えているとは知らず、ケイトは訓練に集中した。時折思い出すのは自分を助けてくれた少年竜騎士の凛々しく麗しい面差しだ。ケイトはその人物に一目ぼれして以来、他の男たちが皆、野菜か何かに見えるようになってしまった。
以前は好きだった王太子の美しい金髪も、今はトウモロコシに見えて仕方がない。
あの少年の紺碧の髪の美しさには誰も敵わない。
あの後、執事に自分を助けてくれた男性の名前を聞いた。執事は「シラクサ竜騎士団のジェイ・サンダー様」と答えた。
「ジェイ様……」
もう一度彼と一緒に空を飛びたい。その思いだけを胸に、令嬢は今日も鍛錬に励むのだった。
番外編は19時投稿予定です。




