87 最終形態
春分の日だったので初投稿です
「俺とアリスで前衛をやる、クレアとソフィーは後方で援護を頼む。クー助は二人を守ってくれ」
「かしこまりました」
「まかせて」
「はあ、怪我は任せなさい」
「きゅー!」
各自の役割を確認して改めて迷宮主と対峙する。全体のシルエットだけを見れば可愛いのだが触手の竜と8つの目が可愛さを激減させている。
「おい、まさかアイツと戦う気じゃあないだろうな!?」
「俺達だけでやるから逃げていいぞ」
「そうじゃねえ!お前ら死んじまうぞ!」
「かもな」
「パーティを危険に晒す気か!」
「全員承知の上さ」
グランツが俺達の見回し、その覚悟が分かったのか何か言おうとする口を閉じた。
「……俺達は撤退するぞ!」
「ちょっとリーダー!」
「よせ、グランツ……いいんだな?」
「こんなのは分が悪すぎる。死にに行くようなものだ」
「よし、ではいつも通りの手筈でいくぞい」
野伏の男が一番に撤退を開始する。退路を切り開くつもりだろう。その後ろに魔術師が付いて行きグランツと鉱人が殿をやっている。俺達も『竜殺し』の撤退を援護すべく、迷宮主に挑む。
「俺達が引き付ける。お前らも早く退け」
「助かる」
「それじゃあ最後に土産をくれてやろうかのう」
鉱人が懐から何かを取り出した。魔石に何か装置の様な物が括り付けてある。
「お前それ……高いんだぞ!」
「撤退用の魔道具なんだからどっちにしろ使うわい。それにこれから死闘をやろうって連中がおるんじゃ。これくらい安いもんじゃろ」
「そうだが……!」
「ほれお前ら!目ぇ閉じろ、潰れるぞ!」
魔道具からピンを抜いて迷宮主に向かって放り投げる。撤退用で目を閉じる様に指示……なるほどな。
「みんな、鉱人が投げた物を見るなよ!アリスは俺とタイミング合わせて迷宮主に攻撃をするぞ」
「かしこまりました」
魔道具の装置が作動して魔石が割れた。次の瞬間、視界を真っ白に染め上げる勢いで発光した。
『————!』
やはり閃光弾か、盾で閃光を遮りながら耳を塞いでいたが音はそこまで鳴らないようだ。
光が収まりタコが目をくらませている間に真下にたどり着く。跳躍だけじゃ届きそうにないなと考えていたらアリスは普通に跳んで迷宮主に取り付いた。
その様子を見上げると触手の中央が見えた。
「人の口みたいだな……」
普通なら触手の真ん中は嘴のある小さな口だが、コイツは人の下あごが着いたような風貌だった。いや気持ちわる。
しかし今は閃光弾の影響かだらしなく口を開けている。攻撃をするチャンスだ。
「『瞬間爆破』!」
『ーーーー!!!』
デカい口に攻撃魔術を叩き込む。タコは黒煙を吐き出しながら体勢を崩す、竜の頭も地面に届きそうなくらいまで下がってきていた。
これなら届きそうだ、触手を足場にしてよじ登る。くっヌメヌメしていて登り辛い!
竜に変化している部分は鱗を引っ掛かりにして登れたが元のタコの部分が掴む場所もなく、軟体生物特有の滑りによって登るのを阻まれてしまう。上に行くのは諦め、触手である竜の頭を攻撃することにした。
「鱗部分は硬くて難しいが軟体部分なら、どりゃあ!」
肉を切る感覚、これならイケる!腕が切られていることに気が付いたのか。他の触手で俺を捕まえようとしてくる、俺は素早く飛び降りた。
「はっ、目が見えねえ奴に捕まるかよ」
「ユート横!」
「は?」
クレアの声が聴こえて横を見ると大口を開けた竜がこちらに向かって来ていた。上を見てもタコの目は完全に瞑っているから俺の場所は見えていない筈だ。ってことは、
「竜の方でも見えるのかよ!あの目玉擬態じゃなくて本物ってことか!?」
視神経どうなっているんだ。というかアレも機能してるなら閃光弾で潰れててもおかしくないだろ!
「やばっ」
「『火炎剣』」
食われる直前、竜の横っ面に炎の剣が突き刺さり爆発を起こした。今のは『竜殺し』の魔術師が使っていた。
「中級魔術も呪文破棄出来るのか、これなら既存の魔術なら殆ど無詠唱で出来てしまうな」
「いやソフィーなのかよ」
てっきり『竜殺し』のメンバーが戻ってきたのかと思った。地面に降り立ち体勢を立て直す。タコは頭に乗っているアリスが気になるのか触手の殆どが頭に向かっている。と触手を丸めて仕舞い込んだと思ったら高速回転を始めた。
「え、アリス大丈夫か」
回転するタコから何か飛んできた、いやアリスが飛んできた。アリスが地面に叩きつけられないように落下地点に向かって走り出す。が、これは間に合わねえ!
「アリス!」
「よっはっ……はい、いかがなさいましたかご主人様」
綺麗に着地をして何事もなかったように聞いてくるアリス。いや、無事ならいいんだ。
「左様でございますか。しかしこれは厄介ですね、確かに切ったのですが傷を負わせた手応えがございません」
「なに?」
タコを見る俺の切った部分は確かに見えるからダメージは入っているはずだが……ん?
「出血してない……?」
それどころかキズがどんどん塞がっていくのが見える。少ししたらあっという間に治ってしまった。回復能力、いや再生能力か。こいつは確かに厄介だ。
「どうしたものかなあ」
タコの目が開き再び俺たちを見据えた。
ライブ見た




