80 雷魔術
五つ子の誕生日なので初投稿です
『——————ッ!!!』
『雷帝戦槌』の直撃を受けたイダー・ヤーは全身に雷紋(火傷)が刻まれ痙攣をしていた。
そして中に居た魔物達にもダメージが通ったのか、産道から魔物を討伐した時の粒子が溢れ出し、パンパンに膨らんでいた腹部が徐々に萎んでいった。
「母親がやられて動揺したのか魔物の動きが鈍っているね」
「ならもう一発かましますか」
雷雲は先ほどの一撃で消し飛んでしまったが、特大の雷魔術を唱えた影響か『落雷』程度なら『瞬間爆破』並の速度で発動できる自信がある。
「いや、よく見て欲しい。彼女の核はもう死んでる」
ソフィーの言葉に目を凝らせば胸部から粒子が漏れ出している。体内に残っているせいで消えるのが遅れているのか?それにアリスが腹に刺したナイフが無くっているし高く掲げた右手は手首から上が無くなっている。
「多分『雷帝戦槌』が直撃する直前にナイフを引き抜いたんだろうね」
「それで上半身のダメージが想像以上に高かったのか」
腹に刺さったまま受ければ電撃が腹から全身に流れてダメージが散って倒せないと思っていたが思わぬところで急所に当たったらしい。
「苦しみを長引かせるより速くトドメを刺した方がボクは良いと思うんだけど、どう?」
確かに、早く引導を渡してやろう。決して退場演出が長いからスキップしたいとかそういうのではないから。
ソフィーが『光』を放ち、イダー・ヤーの胸に風穴を開けたら粒子が噴き出し、消滅していった。
主の死亡に連動して生れてきた魔物達の次々と消滅した。
『なんということだー!例年なら制限時間ギリギリまで討伐が続いているイダー・ヤーがどの階層主より早く終わってしまったぞー!』
司会の声が迷宮内に木霊する、そういえばいるの忘れてた。
『それになんだ今の稲妻は?!雷魔術は未だ確立していないはずだぞ!!!』
首に宝珠をつけた魚型の魔物が近付いてきた。アンコウみたいな形だな。
『今の魔術は一体何なのですか?!』
「あー、今のはソフィー、彼女の研究成果である雷魔術です。今年の学園祭で論文を発表する予定ですのでよろしければ見に来てください。それでは先を急ぐので」
司会には悪いが急いで次の階層主に向かう。塔を出てこのまま都市の奥、6番塔と8番塔を狙いに行く。上位に入るにはどれだけ階層主を独占できるかにかかっている。 奥に向かっていると冒険者と思われるパーティが魔物と戦っていた。
「おい、後ろから誰か来るぞ!」
「もしかしてさっきイカシが言っていた4番塔のパーティじゃないか?!」
「奴等を止めろ!」
「貴方達止まりなさい!止まらなければ魔術を撃ちます!」
そういいながら魔術師らしき女性は既に詠唱を始めている。
「だそうですが、いかがなさいますか?」
「構っている暇は無いからそのまま抜けるぞ。ソフィー、右端の半魚人を倒せるか?」
「任せて、君の雷魔術を見て大体分かってきたよ。『水と風よ、その力を合わせ雷帝の一撃を示せ『雷撃』」
ソフィーから放たれた一撃は金属の鎧を纏っている戦士を避け俺が指名した通りの魔物を貫いた。
「きゃあ!」
「くっ、今のがイダー・ヤーをやった雷魔術か!あ、待て!」
『雷撃』で怯んだ隙に立ちはだかる冒険者達を抜いていく。
「よし、このまま都市を反時計回りに走って6番塔、8番塔、7番塔の順番で向かうぞ」
振り切って入った6番塔に居たのは5つの頭を持つ大蛇、ヒュドラだった。
雷魔術は撃てるようになったソフィーに任せて俺とアリスで前衛を張る事にした。
「コイツ、首を切り落としたら傷口から首が二つ生えたぞ!」
「なんという再生能力なのでしょう」
「じゃあ再生する前に傷口を焼いてしまおうか」
「ナイスアイディアだ!アリス、右からいくぞ!」
「かしこまりました」
1本ずつ首を落としてはソフィーの雷魔術で焼き全ての首を切り落としたら動かなくなった。
「コイツの尻尾から剣取れないかな」
「なんの話ですか?」
「いや、なんでもない、次に行こう」
8番塔には既に別のパーティが居た。きっとこの塔の担当をしている連中だろう。というかさっきの俺達を足止めしようとしていた冒険者達だ。
「さっきぶりですね、加勢しますよ」
「げっ4番塔の!得物を横取りするなんてお前たちは冒険者としてのプライドは無いのか!」
「ちょっと何言ってるか分からないですね……横取りは確かにマナー違反だとは思うが今俺達は競い合っているんだぞ?そもそも主相手に1パーティだけでとか危険だろう?」
「4番と6番塔を1パーティで倒してるお前たちに言われたくないわ!」
「リーダー、俺は賛成ですぜ」
「しかしだな……」
「ここで時間かけるよりかは迷宮内の魔物狩った方が金になると俺は思いますがね」
「アタシも賛成よ、雷魔術なんてめったに見れないしね」
「お前はいつもそればっかり……」
「どっちでもいいから早く援護くれんか!ワシにだけイカ野郎の相手させないでくれ!」
野伏風の男や魔術師の女が近付いてきて話す。あの背の小さいオッサンはもしかして鉱物人か?そしてこいつ等の目的は戦利品か。魔物が大量に居るからその分戦利品も出て金になるもんな。
「じゃあこの階層主の戦利品は全部くれてやるよ、その代わり俺達も戦わせてくれ」
「はあ?!なんで……」
「俺達が目指してるのは優勝だ、その為にはここの主も速攻で片付けなきゃならねえからな」
「……クソッ!分かったよ!俺とトノーで前衛をやってやる、お前たちは雷魔術とやらでイカ野郎に攻撃してくれ」
リーダー格の男はそういって鉱物人の元に駆けていった。
「俺は『落雷』を使う、ソフィー合わせられるか?」
「10秒あれば」
「分かった、えーっと、前衛の二人!」
「なんだ!」
「詠唱が終わるまで耐えて欲しい!」
「何分だ!」
「10秒!」
「分かった10分だな……10秒?!」
「カウントいくぞ、10m以上離れないと感電するから気をつけろ!10!9!……」
「嘘だろ、おい逃げるぞトノー!」
「おいてくなグランツ、ワシは足遅いんじゃ!」
俺のカウントを聞いて一目散にこっちに逃げてくる二人、それを追う触手をアリスが切り払って援護している。俺も声を上げながら寄生木の時の様なシンバル雲を上空に発生させ電気を充填させる。
「『……雷よ降り注げ』いけるよ」
「……3!2!1!いくぞー!」
「くそったれー!」
「ぬわー!」
「『落雷』!」
「『雷雨』!」
ここが1000年後の世界かあ




