77 競技開始
ワンテンの日なので初投稿です
海の巫女と呼ばれた女性がスタートラインの中央にある岩場へと登り、祈りの言葉を毅然と読み上げる。
すると巫女の頭上に凄まじい量の魔素が集まっていくのを感じた。
「なんという魔素の量だ。ネルの時かそれ以上じゃないか?」
「仮にも神と呼ばれるものを呼びだそうって言うんだから納得はできるけど、これは凄まじいね」
集まった魔素の塊はやがて人の様な形を作る。その姿はローブを纏った人間の様だ。
「神々しいと言うよりはなんだか禍々しさすら感じるな」
「仮にも神なんだからそんなこと言っちゃダメだよ」
とは言っても俺の知ってる神様とは似ても似つかないしなあ。とローブの神様が手を海へとかざした。
するとどうだろうか、凄まじい風が吹いたと思ったら海面が激しく波打ち、モーゼの十戒よろしく海が割れたではないか。
海岸から海が一直線に引いていき遂には海帝都市までがその全貌を表した。
「今年も海開きが完成したぞ!制限時間は日が暮れる瞬間までだ!それまでに戻ってこないと海帝都市と一緒に海の底だからみんな気を付けてくれよな!それでは、海神祭メインイベント迷宮踏破スタートだあ!!!」
「海開きってそういう意味じゃないと思う」
司会が指を上に向けると指先から火球が飛び出し花火が打ち上がった。え、あの司会者個体魔術持ちなの?
司会者の号砲とともに参加者達が一斉に迷宮に向かっていく。出遅れないよう俺たちも走り出した。
俺とアリスは走り、クレアとソフィーはクー助に乗っている。しかし既に先手を打たれていて、最初に気づいたのはクレアだった。
「なんか隣の騎士団こっちによってきてない?!」
「なに?うわほんとだ前の道が塞がれ始めている」
重装の全身鎧とは思えない速度で走っていく騎士団が俺たちの進行先を塞ぐ様に広がってきている。そして道が騎士団によって閉じられるとあからさまに速度を落としてきた。
やられた、このままだとこいつらが退かない限り俺たちは迷宮に入れない。
「クー助俺達4人乗せて飛べるか!」
「きゃう!」
「大きくなればいけるって」
「じゃあやめとこう!」
クー助ただでさえ目立っているのにデカくなったらいよいよヤバい!下り坂、横は水の壁……いけるか?
「クー助はそのまま飛んで2人を運べるか?」
「きゅい!」
「いけるって、なんだったらアリス君も連れていくって」
「じゃあ頼んだ!」
「ご主人様は」
「この壁を突破する、すまないが一人の方が成功する可能性が高いからアリスは先に行ってくれ」
「承知しました、それではお先に失礼します」
クー助が羽を広げて宙に浮く、その手にアリスが捕まると騎士団の上を飛んで行った。
周りの騎士団が一瞬騒めくが直ぐに俺は絶対進ませまいと包囲を縮めてきた。
「この程度の人海、障害でもねえな!」
盾を地面に滑らせて乗り込む、シールドライドだ。
「さらに、『風槌』!」
風の魔術を後ろに向かって撃ち出す。この魔術は直接の攻撃力はないが風の塊が当たると相手を後ろに吹き飛ばすほどの衝撃がくる。これを踏ん張りの聞かない今の状態で撃てば。
「よっしゃ!風槌の反動で加速するぜ!」
成功はしたがこのままだと全身鎧の集団にぶつかるだけだ。そこで今度は真下に向かって撃つ。
少しだけジャンプは出来たけど跳び越えるには高さが足りない。
「じゃあこっちだ」
地面に撃ってジャンプしてからすかさず横に撃つ、水壁に着水してそのまま壁を突き進む。
落下しないように風槌を撃ち続けながら集団の頭上を抜け出した。頭上から見ればどうやら集団のように見えたけど俺たちだけを囲んでいたようだ。残りの騎士団は先頭集団にいた。アリスたちはどうやらその集団の頭上にいるようだ。俺も急ごう。
風槌の加速も相まってすぐに先頭集団の近くまで来ることができた。あとはこの集団をどうにか追い越さないと。しかし、端から端までみっちり詰まっていて抜け道は無さそうだ。集団の後ろにいる連中もなんとか前に出たいのか集団に突っ込んでは揉みくちゃにされている。
「というか最後尾にいる連中同じ集団じゃないか?」
気づかなかったが近くに来ると全員同じ鎧を身に纏っている。これも生徒会長の騎士団じゃないか?
「イーストの騎士団が居るってことはこりゃあ先頭にウェストの騎士団がいやがるな。さすが国の砦と言われるだけある、後ろの連中が誰も先に抜け出せねえ」
どうやら違うようだがここでこんな壁があるのは予想外だったな、このままでは後ろに置いてきた囲いに追いつかれてしまう。なにか無いかと辺りを見回すと岩場があった。海底にあったときは魚たちの棲家だったのだろうが今は1匹も居ない。使えるか?
少し坂を登って岩場の直線状に移動する、ここからシールドライドで滑り降りながら風槌で加速していく。
「ここだ!『土石槍』!」
岩を素材に魔術で変形させて簡易のジャンプ台を生成する。最高速まで加速した体がジャンプ台に滑り込み集団の上を飛んでいく。
「ご主人さま!」
正面にクー助の首に足をかけて逆さまにぶら下がっているアリスの姿が、両手を掴んでぶら下がる。空中ブランコみたいだな。
「流石にこのままじゃあクーちゃんが持たないよ!」
「あの集団より前に行ければいい!そのまま前に進んでくれ!」
高度が落ちているが下を見ればこのまま先頭集団を抜けれそうだ。
先を見れば更に幾つかの小さな集団が居る、多分各代表のパーティ達だろう。俺たちもあそこに混じらなくては。
Happy New Year …




