76 水着回
あけまして初投稿です
「で、なんで着替えてたの?」
「この町の服飾ギルドが新作の水着を作ったらしくてね、試着と耐久試験をして欲しいそうだよ」
机の上にはズラリと水着が並べられていて好きな物を取って更衣室に行ける様だ。しかし今から迷宮に行くのに何故水着を。
「水着を着て迷宮に挑むのが海神祭の伝統らしいです」
「なるほど、しかしこんな薄着で行くなんてボクには理解できないな」
「なんでもこれ魔道具らしくて下手な防具より高性能らしいわよ」
「なんでそんなものを貸し出しているんだ」
「海神祭の迷宮限定で効果を発揮するみたい。それ以外だと普通の水着らしいわ」
他所にもっていっても防具として機能が無くなってただの水着になるのか。
「因みにどれくらいの防御力があるんだ?」
「Aランク並らしいわ」
それって上級迷宮で使われてる防具レベルじゃねえか、そういえば今から行く海帝都市も上級迷宮だ。手持ちの防具よりこっちの方が断然に良い、俺も着るか。
トランクスにスパッツ、ブーメランと男物にも結構な種類がある。……何だこれ?十字架を逆さまにしたような。
「それが気になりますか?冒険者様流石御目が高い」
「うわあ、誰」
「これは失礼、わたくしレアールと申します。今回の海神祭にて祭服のデザインを務めました」
「祭服、この水着の事か?全部?」
「ええ、ええ、有難い事に此度の祭服は全て、わたくしが考案した物です。その中でもそちらは渾身の出来でございます」
この十字の布も水着だとすると着るならこう、プレゼント箱を想起するような着方になる、「私がプレゼントよ」的な。
「コチラ『男性用』の水着でして、神の印たる十字を着こむ事により神の加護を纏うというコンセプトで作りました。その名も『聖痕』!」
それは不敬じゃない?あのジジイもそんなこと望んでないと思う。
「おや、お気に召しませんでしたか?ではこちらはどうでしょう、男性の肉体美を極限まで魅せるにはどうするかと考え抜き閃いた究極の水着。形状が過去類を見ないので暫定的にワンショルダー型と呼んでいます。その見た目の衝撃から有名なモジンロッヘ火山の名をとってモジンと名付けました」
見た目は輪っか状の布だ、どう着ればいいのだろうか。
「輪っか状の水着を片足だけ通していただき、男性器を隠したら通常のズボンと同じように腰で止めます」
見たままで言えば片側しかないビキニ。バカじゃねえの?
「残念ながら俺の理性がアウトと言ってますね」
「理性とは成人までに培った偏見ですぞ。まずはそこを疑わなければ新しい物は生まれてきませんからなあ。それにこの二つはワタシが丹精込めて製作したお陰でA+、いやSランク並みの性能になっております」
その水着は疑う時ではないと思う。無難なトランクス型を選び上にシャツを着る。まあ上に服を着ればあの変態装備でもいいかもしれない、なにせ性能で言えばSランクなのだから。
「おっと、水着の上に服を着るなんてナンセンスな事をしてしまえば防具としての機能は発揮しませんので悪しからず」
「じゃああの変態水着は一生着ないわ」
パーカー型の上着があったのでそれを着つつ剣を携える。みんなもそれぞれの武器を持ち準備完了のようだ。
選手の集合場所に行けばどうやら俺たちが最後だったようでスタートラインの海岸は参加者で埋め尽くされていた。
「ちょっと出遅れたな」
「これ全員入るまで日が暮れないかしら」
「流石にそんなことはないと思うけど……これだと最初に入った人間と最後の人間とで30分は差が出るなんじゃないかな」
「となるとこの人数を抜いて到達するのが最初の試練だな」
列の最後尾に進む、すると祭りのスタッフらしき人物が近付いて来た。
「サウスガルド冒険者ギルド代表の方ですね?ここは当日参加者の列でして、代表パーティには別にスタートラインがご用意してあります。こちらにどうぞ」
「そうなのか?じゃあ案内頼む」
着いていけば人の少ない場所についた。その中には壇上で挨拶してた人間が全員揃っており、生徒会長も居たのでここは確かに代表者用のスタートラインなのだろう。
「それと代表パーティにはそれぞれ別の階層主を担当してもらうのですがあなた方が最後ですので既にくじ引きは終了しております」
「そうか、俺たちが担当するのはどれなんだ?」
「ええっと、ですね……」
随分と歯切れが悪いな。何かあったのだろうか?
「何よじれったいわね。もう決まっているならさっさと言いなさいよ」
「は、はい。第4の塔、主名はイダー・ヤーです」
確かそれはこの迷宮踏破ではハズレ枠として教えられた主の名前だ。
「はあ?よりにもよってなんでそれが残ってるのよ!」
「そ、そうは言われましてもくじ引きで決まったことですので……」
「まあまあクレア、その人に言ってもしょうがないだろ。既に決まったことなんだから、なあそうだろ?」
「そ、そうです。既に決まったことですので我々にもどうする事もできません。第4のスタート地点はこちらですので……そ、それでは!」
「あ、ちょっと!」
走って帰っていくスタッフを引き止めようとするクレアを宥めつつ言われた場所に向かうとスタートラインの隅であった。
「隣には生徒会長率いる騎士団か、偶然だと思うか?」
「ワタシには判断つきませんが、この位置は非常に不利ではないかと」
騎士団に演説をしている生徒会長がこちらを見て笑みを浮かべている。多分生徒会長の思惑どおりなのだろう。ここまでやられると俄然勝ちたい欲が出てきたな。
「さあ準備が整いました!これより海の巫女たるハリ・ティシー様による海神様召喚の儀を執り行います!」
おっと、ついに始まるらしい、召喚の儀ということは海神様とやらが見れるのだろうか。どんな姿をしているのか楽しみだ。
仕事初めが来る…いやだ…働きたくない…




