71 港町
あと4日なので初投稿です
数日が経ち、俺達は海神祭が行われる港町、サースマスに来ていた。この町は王国の4大ガルドに比べたら大きさとしては小さいが、漁業から他国への貿易と国内外問わず商業が行われているため活気は負けないぐらい良い。
「お待たせしました、こちらカルパッチョでございます」
「うわ、本当に生の魚が出てきた……」
「店の人が居る前でそういう事言うなよ」
「構いませんよ、町の外から来た人はみな同じようなリアクションをしますから」
「あたし、生魚初めてなんだけどお腹壊したりしない?」
「コチラのアチップは今朝、港で揚げられた新鮮なモノを使用しております。これでお腹を下すようでしたら、失礼ですが旅の方々と生魚の相性が悪かった、となりますね」
鮮度に絶対の自信が無いと出てこない科白だな。まあこんな目と鼻の先に海があるんだから当たり前か。
それにしてもこのアチップという魚、肉の見た目は綺麗なサーモンピンクだ。味も見てみよう。
切り身と一緒に盛られている玉ねぎを取りソースを絡めて口に入れる。チーズ系の濃厚なソースのと一緒に魚の風味も抜けていく……鮭だなこれ。他にも焼魚やスープを楽しんだ。一息ついたところで先ほど料理を持ってきたウェイターが来た。
「お口に合いましたでしょうか?」
「えぇ、特にアプッチのカルパッチョが良かったです」
「アチップは秋の魚という印象を持たれる方も多いですが、この時期に取れるアチップは秋の産卵に向けて栄養をため込んでいる為、むしろ今が一番美味しいのです」
鮭だなソレ、もしかして秋の産卵には川を上って行かないか?
「それにしてもこの町の賑わいは凄いな。いつもこうなのか?」
「いえ、5日後に開かれる海神祭という大きなお祭りがございまして。その為いつもより賑やかですよ」
「そうなのか、実は俺達も海神祭の迷宮踏破に来たんだ」
「迷宮踏破の参加者でしたか。飛び入りですか?」
「いや、サウスガルドの冒険者ギルド代表だ」
「おや?あそこはここ数年《疾風》というパーティが代表していましたが、どうしたのですか?」
「ちょっとあってな……今回は俺達が代表になったんだ」
「そうですか、彼らは迷宮でどの階層主を引いても、上位に入賞していたので今年こそは優勝を狙っていたはずなんですけど……残念です」
冒険者である以上、死とは隣り合わせであるのは誰しもが知っている事だ。レストランを出て街を散策する。どこもかしこもお祭りに浮足立っている感じがしてこの空気は嫌いじゃない。
「しかし人が多いね……みんな息苦しくないのかい?」
「お祭りなんだしこんなもんだろう。王都だとこれより少し人が少ない程度の人混みが普通だぞ」
「なら王都はボク向きの街ではないな」
そうは言ってもサウスガルドだって大きな街に違いないのだがソフィーは基本学園から出ないからなあ。渋谷のスクランブル交差点とか見たら卒倒しかねない。
そうしているうちにちょっとした広場に出た。町の外れ、高台の上にあるここは町と港と海を一望できた。港に向かって下っていく坂に出来た町はどこか外国の港町を彷彿とさせる風景で、始めて見るのにどこかで見たことある、そんな不思議な感覚に落ちた。
「あそこが海神祭で踏破する迷宮がある場所です」
アリスが指さす先を見ると、港から少し沖の方に岩礁らしき物が海面から顔を覗かせているのが見えた。分かりやすくするためか一番外側の岩礁をロープで繋げて囲ってある。ロープの所々に白い目印の様な何かがぶら下っていてまるでしめ縄の様だ。
「あの海から飛び出している岩がそうなの?一体どうやって行けばいいのよ?」
「船、でしょうか?」
「入り口は海の底にあるって話だから潜るんじゃないのか?」
「はあ?そんなところにどうやって入ればいいのよ?」
「そこまでの行く道を海神様が手伝ってくれるそうだよ」
その海神様って言うのが何なのか分からないよなあ。俺が会ったことのある神様といえば俺を連れてきたジジイくらいだ……ん?あと一人いなかったか?あの白いなんにもない空間で俺はジジイ以外の誰かと……。
「ご主人様、今晩からの宿をどこにいたしますか……ご主人様?」
「んぁ?すまん、ボーっとしてた」
「大丈夫なの?また治癒術かけてあげようか?目が覚めるわよ」
あの痛みは尋常じゃないので勘弁してほしい。今度はどこを増やす気だ。
迷宮があると思われる場所を見る。見事に海の中だ、写してもらった地図の確認がしたかったのだがこれでは入れそうにない。
「迷宮に関しては今後調べていくとして、今日から泊まる場所はギルドから指定されているからそこに向かうとしよう。支払いもギルド持ちだ」
「へえ、気前がいいじゃない」
「なんでもギルド直営の宿屋らしい」
「前言撤回するわ」
「まあ、タダで泊まれるんだし。しかも一番いい部屋らしいぞ」
ギルドも経営が苦しいのか宿屋や道具屋、薬屋等々色々手を出しているらしい。実際に道具屋に行ってみたが冒険者ギルドに所属している人間は社員割りならぬギルド割りが利くので助かる。
「お待ちしておりました、ユート様ご一行ですね。私当ホテルの代表を務めていますチャールズと申します」
なんか偉い人来たな。代表、つまりは支配人か。支配人って名前の響きかっこいいよな。
「初めまして、今回はギルド長からの紹介できたのだが」
「お話は伺っております。こちらへどうぞ」
「お荷物お預かりします」
チャールズさんが先行すると同時に何処からともなくホテルマンが現れて荷物を強奪もとい、運んでくれた。冒険者としての性か一瞬荷物を取られまいと身構えてしまった。元の世界でもホテルマンが荷物を持ってくれるホテルに泊まったことないから緊張するな。
おっと、武器は流石に渡す気は無いぞ。俺の態度に察したのか武器は触らずに俺達の後ろをついてきた。なおクレアとソフィーは普通に武器を渡していた。
「別に取られるわけじゃないからいいじゃない」
「彼らは持つのが仕事だからね、奪ってしまっては面目が立たないよ」
貴族社会の人種ぇ……。
なんで恐竜になるのだ?




