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それはよくある異世界転生  作者: 乙屋敷


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68 七竜

キンクリしてた部分その2初投稿です

籠から抜け出すと同時に大型犬程のサイズになったクー助が俺の手にある果実を丸ごと食べた。


「何なにナニ?!クー助いきなりどうした?うわぁ舌を手に絡ませるな!」

「くーちゃん様、ご主人様をお放しくださいませ!」


手を引っ張るもびくともしない。噛まれている訳ではないので痛みは無いががっちり嵌っていて抜ける気配が無い。その間もクー助は俺の手を舌で弄っている。


「クーちゃん口を開けて、お願いだから……!」


ソフィーの言葉も聞く気が無い様だ。クソッこうなったら。


「引いてダメなら押してみろ!」


思いっきり腕を押し込んだ。引いてもびくともしなかったがあっさりと侵入していきクー助の喉まで行った。人間でもそうだが、口に入っている物が意図せず喉に来ると防衛本能として吐き出すようになっている。

ドラゴンでもそれは機能しているらしく咽たのでその瞬間に手を引き抜く。


「あー、びっくりした……」

「ご主人様、お怪我は!」


クー助の涎でべたべたになった手を見回すがケガはない。握ったり開いたりしても痛みはなかった。


「大丈夫、どうもなっていないよ」

「クーちゃん、いきなりどうしたんだ……」


確かに、クー助がいきなり人を襲うようなことは今まで無かったはずだ。——いや、前にも似たような事が……ハチミツ飴をあげた時だ。


「俺ってあの果実どっちに持ってたっけ?」

「そりゃあ、あんた右手に……」


そう、果実を持っていたのは右手、そしてクー助に食べられたのも右手だ。今、俺の右手は何も無かった。怪我も、果実も。


ゴクリ


「クー助お前!」


振り返ると喉を大きく動かして何かを飲み込んだクー助の姿が。


「うおぉい!おまっ……クー助大丈夫か!」


物質化するほどの魔素量だぞ、一体どれ程の魔素が詰まっているのか。


「特に問題ないみたいだよ」

「えぇ……」


確かにケロッとしている、いや毒ではないのだから徐々に症状が出てくるはずだ。街に連れて行って大事になったら大変だし、今日はここで野営をするか。

日帰りできる距離とは言え念のために野営セットを持ってきていたのは正解だった。


「仕方ない、午前の授業は諦めるか。一晩クー助の様子を見よう」

「クーちゃんの体調が悪くなったらどうするんだい?」

「果実を吐き出させる、最悪腹を掻っ捌いて取り出すから、そうならない様に見といてくれ」


刃物はあるし治癒のスペシャリストもいる。そう死ぬことは無い……はずだ。

野営という事で俺とアリスが交代で夜の番を行っていたがソフィーは心配なのか時々起きてはクー助の様子を見ていた。

一晩明け、クー助は元気に走り回っていた。結局杞憂で終わったらしい。

しかし寝ていても元の大きさに戻る事は無かった、身体を小さくするのを完璧に制御できたのだろうか。試しに元に戻ってもらうと最初に会った時より一回り以上デカくなっていた。もはやちょっとした山レベルだ。


「もしかして成長した?」

「こんな短い時間でそのような事があるのでしょうか?」

「もしかしたらクーちゃんは源創種なのかもしれない」

「源創種?」

「神が最初に生み出した原初の生物、それが様々な地域や環境に適応していく中、その神が作り出した形をそのままにしてきた種族の事をそう呼ぶのさ。彼らは今の生き物と身体の構造が根本的に違っていて、その殆どが魔素で出来ていると言われているんだ」

「つまりクー助が源創種だからあの果実を食べて大きくなったと?」

「可能性は考えられるね、そもそも竜種の殆どが源創種と言われているんだ」

「そんなに多いのか?」

「多いとも言えるし、少ないとも言える。前に話をした七竜を覚えているかな?」

「ああ、なんか黒色が飢餓を司るとか」

「ドラゴンと呼ばれる種族はその七竜だけなんだ。他のドラゴンの様な特徴を持った魔物は居るけど竜種ではなく、そう見えるように変化した別種の魔物と言われている」


クー助を見る、爬虫類の様な鱗とコウモリの様な羽、頭には一対の角が生えている。どう見てもドラゴンと呼べる見た目をしているし、実際にクレアが見てドラゴンと呼んだ。


「ドラゴンに似ている別種の魔物かと思ったけど、魔素の果実を食べて成長したことで源創種……ドラゴンであることが確定したと」

「でもドラゴンって全部上級迷宮の迷宮主じゃない。なんでこんなところに居るのよ」

「そうだね、七竜のウチ6匹は今も迷宮の奥深くに居るはずだ」

「あと1匹はどこに居るのよ?」

「誰も見たことないんだ」

「どういう事だ?」

「世界は地水火風光闇の6つの元素(アルケー)とそれらの根幹にある魔素で出来ている。そしてドラゴンのうち確認されている6匹の竜はそれぞれ元素に相当した属性を兼ね備えている」

「じゃあ魔素に相当するドラゴンが居るはずなのに誰も見た事が無いと?」

「いや、長い歴史を持つ国には必ず伝承に魔素のドラゴンが出てくるんだ。どれも最後には忽然と姿を消すという共通点まで持ってね」


伝承でしか確認されていないドラゴンか。そして目の前には源創種だと思われるクー助。


「ではクーちゃん様が魔素のドラゴンなのですか?」

「かなり可能性は高いと思う。もしそうならなんでボクの所に来たのかは分からないけどね」


そこはホラ、運命でいいと思う。それに身体を小さくするのが完璧に制御出来ているのなら迷宮に隠しておくこともしなくていいのではないか。


「そこはどうなんだろ……クーちゃん出来るかい?……なるほど、問題ないって」

「ふーん、じゃあソフィーの寮室に戻すか……今クー助と会話しなかった?」

「意思というか、ニュアンスの様なものが伝わってくるのさ」


へえ、それは凄い、俺にも出来ないだろうか。ヘイクー助お手!……ちょっと待て、その図体でやるな、あっぶねえ!危うくぺしゃんこになるところだった。

本当に済まないと思ってる

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