66 森人形
正月が近づいてきたので初投稿です
「なんだいあれは?魔力量が目に見えて増大しているじゃないか」
「あたしもよく分かんないのよね。あいつは神様から貰ったって言ってたから寵愛だと思うんだけど」
「先天性のスキルか、だとしてもアレは些か常軌を逸している。アレは彼らにしか出来ないのか?条件は何だ?」
「あーっもう!そういうのはあいつに聞きなさいよ!今の状況分かってる?!」
「む、確かに。すまない気になる事があると、どうもそちらに気が持ってかれてしまうんだ」
なんだか後ろが賑やかだけど弓兵はあちらばかりを攻撃しているので今のうちに剣士を仕留めたい。
「俺が剣士を相手にする。アリスは枝を頼んだ」
「かしこまりました」
剣士も俺達の変化に気が付いたのか棒立ちの状態からしっかりと得物を構えた。
一足で駆け寄り、剣を真横から斬り抜くが躱されてしまった。そのまま切り返すと今度は盾で受けた。女王寄生木が援護しようと枝が襲い掛かって来るがアリスが迎撃していた。
「蔓に攻撃できそう?」
「想像以上に寄生木からの攻撃が激しく難しいですが、出来ます」
「頼もしい。じゃあ出来るだけあの剣士に攻撃するからアリスのタイミングで斬ってくれ」
「承知しました」
距離を置いて瞬間爆破を撃つ。本当は蔓が垂れてきている上の方を攻撃したいのだが場所が高すぎて上手く狙えない。剣士の頭上に狙いを置く。
「瞬間爆破!ってなに?」
今爆発する前に避けた。空気の爆弾が見えているのか?もう一度、今度は足元だ。
やはり避けた。しかも今度は爆発するよりずっと早くにだ。間違いなく見えている。しかし何が見えているんだ?空気の流れ?火気の気配?……もしかして魔力か!
「じゃあこれならどうだ!風刃!」
先ほどと同じ横薙ぎの攻撃。剣士との距離は3m以上あるが風刃で伸ばしたので避けなければ確実に首を落とせる。
風の刃が通り抜ける瞬間、剣士は勢いよく跳ねた。
「よく見てるじゃねえか!だがその択は間違いだぜ!瞬間爆破!」
剣士の背中で爆発を起こす。爆風に煽られた剣士の体勢が崩れた。
「アリス!」
「畏まりました」
アリスに襲い掛かる枝を瞬間爆破で焼き払っていく、時々俺以外の瞬間爆破が飛んでくるので横を見たらソフィーが呪文を唱えているのが見えた。ナイス援護!
「せいっやぁ!」
アリスが気合の掛け声と共に蔓を両手のダガーナイフで切り裂いた。
制御を失った剣士の身体はそのまま地面に叩きつけられ、ピクリとも動かない。
あとは弓兵だけだなと、見ると様子がおかしい、さっきまでその場でずっと弓を射っていただけだったのだが今はだらりと腕を垂らして……蔓に引き上げられている?
次の瞬間、女王寄生木の枝が弓兵に殺到し巨大な塊が出現する。
「なんだと思うアレ」
「恐らくは彼女の奥の手だろうね」
塊から枝が4本生えてきたと思ったら幾つもの枝が巻き付き手足を成型する。
地面に足と思われる部分が着地、足の倍はあるだろう腕が胴体を叩いて威嚇する。
「ゴリラじゃん」
「フルーツコングでしょうか」
「聖書に出てくる森の人があんなだった気がするわ」
「木人形……いや、この大きさだと森人形だね。森林系の迷宮に出てくると聞いたことあるけどこのように産まれていたんだ」
巨大な腕が振り上げられる、クレアとソフィーを抱えて退避する。俺達の居た場所に拳が叩きつけられ、大きなクレーターが出来上がる。ソフィーが瞬間爆破で森人形を爆破させる、片腕が吹き飛んだが直ぐに再生してしまった。
「これ核を破壊しないと無限に復活するパターンじゃね?」
「その核は多分あそこだね」
ソフィーが天井を指さす。見れば5本の蔓が森人形に繋がっており、その根元は一か所に集中していた。
魔力を目に込めれば魔力が異様に集中しているのが分かった。恐らくは女王寄生木の核があそこにあるのだろう。しかし距離があってあそこまで魔術も届きそうにない。
どこかあそこまで魔力が届けられるものがあれば……目の前にあるじゃん。
「クレアとソフィーはゴリラから離れて出来るなら援護してくれ、俺はあのゴリラの背中から生えている蔓から女王寄生木の核に攻撃できないか試してみる。アリスはそのサポートを頼む」
「承知しました」
「わかったわ」
「ボクは森人形を調べたいんだけど」
「残念ながら今度にしてくれ、そこまでの余裕が今は無い」
しょうがないといった顔でソフィーが了承する。
アリスと目を合わせ、同時に森人形に駆けた。のっしのっしと歩いて来ていた森人形が腕を振り上げ叩きつけてくる。今度は横ステップで回避、またしても地面を叩くだけで終わった。アリスは跳躍して伸びた腕に飛び乗るとそのまま開けあがり頭部と思われるコブを斬りつけた。アリスを捕まえようと森人形が手を伸ばすも華麗に回避する。
「足元がお留守だぜ、風刃!」
アリスに手間取っている間に俺は足元までたどり着き、強化した剣は森人形の右足を豆腐の如く容易に切り裂いた。森人形はバランスを崩し四つん這い——右足が無いので三つん這いか——になる。
急いで背中によじ登り蔓を一つ掴み魔力を込めた。
「やはりこの中は魔力を通すパイプの役割があるんだ。ここから俺の魔力を核まで持っていければ!」
女王寄生木も俺の意図に気付いたのか森人形が激しく回る。
「土石槍!」
突如地面から剣山のように飛び出した岩が森人形を縫い付けた。
「君、長くは持たないよ!」
「ソフィーか!助かる!」
魔力を一気に流し込んでいく。危険と察知したのか燃えた蔓と同じように自切した。
「だがもう遅い、瞬間爆破!」
指を鳴らす、指先から出た火花がバチバチと鳴りながら蔓に入り込み、末端から爆発しながら根元に向かって行く。そして……
『—————!!!』
女王寄生木の核に瞬間爆破が直撃、粉々に砕け散った。
もういくつ寝るとお正月……正気か?




