60 遥か昔の同郷者
ハロウィンなので初投稿です
初代学園長、ナンカクアスカと言う異世界転移者は魔法のスキルを貰い、なんやかんや大冒険をした後、魔術学園の前身である義塾を創設し弟子を募った。
その弟子たちに魔法を教えるもイメージに魔力を乗せるという行為が困難であった為に、発動させる魔法のイメージに乗せやすい引っ掛かりとして現代の知識、マンガ・アニメ・ライトノベルの知識を使い詠唱や魔法陣、術式なんかを教えたのが魔術の始まりだった。
月日が経ち、弟子が弟子を持ち、その弟子が教室を持ち生徒に教え始めた頃、魔法は突如この世から姿を消した。世界に魔術と言う設定が知れ渡り、魔法とは個人が先天的に使える魔術と言う間違った常識が随伴したことにより常識と言う抑圧によって魔法が使えなくなってしまったのだ。
時代が進み弟子達はさらに設定を追加していった。難解な設定を追加し、新しい設定を論文と評し、設定の矛盾を回避するために新たな設定を作り上げていった。
結果として火球一つに仰々しい言葉を並べ、水刃を出すだけに複雑な幾何学模様の魔法陣を描き、風槌を吹かせるだけに幾つもの定理を重ねてしまった。
もうこの設定は覆せないだろう、だから私は1つ設定を追加した。愛すべき弟子達に間違った道を教えてしまった私の最後の魔法を、これを読んだ貴方を呪いから解き放つ魔法の加護を。
〈LR《魔法使いの日常》〉を取得しました。
このスキルは常時発動型です。このスキルは魔法にかかる弱体化を全て無効にします。——これは世界にかかる呪縛から解き放たれるための刃、或いは自由への翼。その先を知る者は今はただ一人しかいない。——
うお、なんかステータス画面が出てきた、初めてアリスと再接合した時以来だな。
スキル説明のシンプルさがカードゲーム初期の強カード感ある。
「こんなの、他の魔術師が見たら発狂するか、偽物と喚きながらこの本を燃やすだろうね」
「まあ今日まで続いている魔術の歴史全否定みたいな感じだしな。むしろソフィーはよくこれを信じたな」
「むしろ納得がいったよ、この世には矛盾しているのに何故か成立している魔術理論がそれこそ迷宮の魔物の如く毎年産まれてくるんだ。疑問に思わない方がどうかしてる」
ソフィーは一頻り笑った後、本を俺に渡してきた。いいのか?
「ボクは本の内容は全て覚えている。解読された今ならどのページを思い出してもきちんと分かるようなったからね。初代と同じ世界から来た君が持っていた方が何かの役に立つかもしれない」
「さっきも言ってたけど、何故初代と俺が同じ世界……この世界以外から来たって思ったんだ?」
「日本というこの世界には存在しない国、その言葉をつかえる初代学園長と君、それに本の最初に書いてある地球と言う単語、その本にかけられていた魔術は隠匿言語ではなく翻訳魔術だったから地球と言う意味も分かったよ、まさかこの大地が丸いなんてね」
翻訳魔術と言うのはそこまでサポートしてくれるのか、ソフィーが光って俺が光らなかったのはソフィーに地球関連の単語の意味がインストールされていたからなのかね。
「ところで今スキルを手に入れたんだけどソフィーはどうだった?」
「その口ぶりだと君も手に入れたんだね。意外だな、君は初めから持っていたと思ったんだけど」
「なんでそう思うんだ?」
「そりゃあ昨日の雷魔術さ、確かに理解できているなら再現可能とは言ったけど、誰も無詠唱で出来るなんて言ってないからね」
確かにあの時は殆どゲームの雷魔法のイメージで詠唱はしていない。
という事はあの場において俺は抑制を上回る何かを持って使った事になる。
それの検証とかしたいけどこのスキルはオンオフが出来ないようだし、そもそも今日は論文の制作をするためにここに来たのだから。
そういえば神様は魔法適正を最大にしておいたって言ってたけどそれと関係があるのかな。
「となると、何か詠唱を考えた方がいいか?」
「詠唱にも設定があるから。それにそってそれっぽく作った方がいいかも」
「あー、呪文構文か、あれ苦手なんだよな」
「ボクも手伝うよ」
そいつは助かる。正直学園で習う詠唱が長くて覚えられないんだ。
「君はとにかく雷の原理を出来るだけボクに教えてくれないか。それさえわかれば論文は出来る」
「任せろ、とは言いたいが俺も専門外だから全部知っている訳じゃないぞ」
「大丈夫、君が初の雷魔術系統化の最初の人間なんだから、君の考えで出来た事が全てなんだ、それに文句を言うのは後の研究者達さ」
そんな適当でいいのだろうか。魔法自体が適当を形にしたようなモノだし大丈夫だろう。
その日は、知りうる限りで雷の原理について説明したが1日中ずっと喋っていたので疲れてしまった。
「なるほど、その電荷が+と-に偏り、中和する為に地表へと雷を伸ばすんだね!では雲の上層にある偏った+の電荷は……」
「雷の力を持続的に発生させて町中に送り付ける?一体何人の魔術師が魔術を行使し続けるんだい?発電に魔術師は要らない?道具の管理に人が数人いるだけでいい?そんなバカな……本当に?」
「電波……なるほど、水面に石を投げれば波が現れるのと同じだね。その波を操って遠くの人間と会話をする、それってどの程度の距離を……条件さえあれば地球の裏側まで?」
「なるほど、大体わかったよ。これなら論文を書くのに十分だ」
「そいつは、ゲホッ……よかった」
途中から雷以外の話にそれたしそれについて延々と質問をしてくるおかげで喉がカッスカスになってしまった。
「どれぐらいで出来そうだ?」
「そうだね、とりあえず明日には下書きは出来そうだよ」
「早いな」
「今すぐ書きたくてうずうずしてる」
「そうか、じゃあ今日はこれくらいにしてまた明日な」
「そうだね、じゃあこれで」
速攻で帰って行った、そんなに楽しいのかね論文。俺は研究論文書くの死ぬほど苦手だったけど。
そしてソフィーが論文を持ってきたのは3日後だったし、六法全書みたいな分厚さだったし、渡した途端に爆睡しだして大変だった。そして俺は読むのに1週間以上かかった。
ドーン良かった……明日もあるの?最高じゃん……




