54 竜種
急に涼しくなったので初投稿です
ドラゴンは扉の奥から首を伸ばしソフィーに頭を擦り付けている。その姿は人懐っこい犬を想起させた。
「ドラゴンなんて初めて見た。普通は上級迷宮の迷宮主だろう」
「うん、この子は半年前に偶然見つけてね、その時はすっごいボロボロで、放って置けなくて……竜種の生態研究書もあったからなんとか治してあげて……」
「そしたら懐かれてこっそり育成してたらすくすく大きくなって、部屋に入らない程大きくなり生徒が殆ど来ないこの迷宮に移したって感じか?」
「最初は子犬ほどだったんだよ」
ドラゴンの胴体が入っているであろう部屋を覗く、胴体だけで大型トラック並みにデカい、半年でコレって出逢った時は未成熟時だったんじゃないかな?
ふとアリス達を見ると未だに警戒している、クレアなんか震えて縮こまっていた。
「なんでそんなに震えてんだよ?」
「あんた馬鹿じゃないの?!ドラゴンよドラゴン!一匹で国を滅ぼせる力を持った伝説の生き物よ!しかも黒色!」
「黒いとなんかあるのか?」
「えっとですね、竜種には伝説の七竜という伝承がありまして、その中でも黒色は世界を食べ滅ぼす飢餓の竜と言われているんです」
「飢餓?見たところお腹は豊かだが……」
いや、よく見れば胴体の太さに比べると手足が異様に細い、というか肉付きが悪い。骨に皮が張り付いているだけの様な細さだ。四足歩行でもこの細さだと立つことすら難しいだろう。
ここまで来ると運動させるだけじゃあ足りない気がする。何か医療行為が必要なんじゃないか?
「確かにこの子は伝承と同じ黒色だけど、そんなに大食らいじゃないし、なによりこんなに大人しいんだよ、ボクは黒竜ではないと思っているんだ」
とは言えこの部屋の広さではまともな運動もできない、手足の長さからすると立てば背中が天井に着いてしまう。
運動させるにはどこか広い場所が必要だ。
「伝承とかの前にドラゴンを外に出したらパニックになるし、何とかこの迷宮内でコイツが身体を動かせるくらいの広さがある場所はないか……どうした?」
「……殺さないのかい?」
「誰を?」
「クーちゃん、このドラゴンをだよ」
「うーん、例えばソフィーがコイツをサウスガルドを滅ぼすために育てているとか、人肉しか食べないから夜な夜な人を攫っているとかならまあ、そういう選択肢もあるが……」
「クーちゃんはそんなことしない!」
「だろ。じゃあ殺す理由なんてどこにもないし、むしろこんな早死にしそうな体形してたら治してあげたいな……という訳でどうだろう、コイツの不健康そうな身体を治してみないか?」
まあ本人のやる気次第なんだが、と付け加えたがなんだか信じられないモノを見たような顔をして固まっている、なんでさ。
「ドラゴンを隠しているボクが言うのもなんだけど、君達のお仲間はどういう神経をしてるんだい?」
「ひどい言われよう」
「諦めなさい、コイツはそういう奴なのよ」
「ご主人様は世の常識に囚われないのです」
「フォローになってない」
「……本当に不思議な人だね君は」
「この流れでその感想は悪口に聞こえるんだが?」
「もちろん褒めているとも」
本当かよ、そう言っていたらドラゴンが脇に鼻先突っ込んできた。
何々? グリグリ押し付けてくるじゃん、とりあえず鼻先を撫でる、よ〜しよしよしよし。
なんかやたら懐に鼻を突っ込んでくるな……あ、ハチミツ飴の匂いか。袋から取り出して差し出す、うわあ手ごと食べてきた。お前のサイズでやられると洒落にならんぞ!
「早速懐いているようだね」
「流石ご主人様です」
「エサに見えたんじゃない?」
「冗談きついぜ……そういえばドラゴン、クーちゃんだっけ? をこの迷宮に匿ってどれくらいになるんだ?」
「大体一ヵ月ぐらいだね」
「迷宮の中と外じゃ時間の流れが違うんじゃなかったか?」
「あぁ、迷宮相対性理論の事だね、確かに迷宮は平均して101倍の速度で時間が進んでいるけどこの伽藍洞では速度はほぼ等倍だよ」
え、この迷宮に入ったのが土曜の昼で確か二泊目だから……
「今日って週初め?」
「そうだね、そろそろ1時間目が始まるんじゃないかな?」
「撤収—!」
遅刻だあああああ!!!!
親愛の絆を使って猛ダッシュした結果、1時間目の授業は無理だったが2時間目は何とか間に合った。
ソフィーはドラゴンの所に残るらしく理由を聞いたら
「教師の内容がつまらなくてね、授業で受ける内容は全部自習で済ませてしまったよ」
そんなのでいいのか、入学半月で期末テストと同じ課題で満点を出したからOKだったらしい。
「出るテストの内容がパターン化していのだから簡単だったよ」
あー、担任が変わらないから過去問見ると傾倒が分かるヤツね、でも半年で満点は凄い。図書館の本を読破してる奴は言う事が違うぜ。
「ねえあんた、あのドラゴンを本気で治療するわけ?」
「ああ、クレア達は反対か?」
「ワタシはご主人様の御心のままに」
「あたしは、反対ってわけじゃないけどあんまり気乗りしないわね」
「それは、やっぱりドラゴンだからか?」
「そりゃあ、ほら、ドラゴンだし、上級迷宮の迷宮主だし、黒色だし、普通はそんなことしようとしなわね」
「そうか……まあ無理にとは言わないが、ドラゴンを癒せる伝説にも無い聖女として名を馳せるだろうに……」
「……しょうがないわね!あんたの道楽に付き合ってあげるわよ!」
ちょろ。
スメシはよい




