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それはよくある異世界転生  作者: 乙屋敷


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53 資格取得

世界法の日なので初投稿です

 ケモミミ少女はやや大きめキャスケット帽を目深に被り、髪を全て隠していた。

 服装もズボンに長袖でぱっと見では少年にしか見えない、話しかけられなければ分からなかっただろう。


「今回は持ってるぞ、甘いモノ」


 懐からハチミツで出来た飴が入った袋を取り出すと少女の眠たげな目が輝いた。

 袋を左右に揺らすとつられて少女も右に左にとついてくる、ちょっと楽しい。

 ある程度遊んだので一つ手渡す、うわぁ指ごと食われた。


「あの、ご主人様?」

「その子誰よ」

「おっと、すまんすまん。道具箱(アイテムボックス)の教科書を探している時に場所を教えてくれたんだ。名前は……そういえば聞いてなかったな」

「そうだったのですね。ワタシはアリスと申します、その節はお世話になりました」

「あ……、はい……」

「あたしはクレアよ。ねえ、あなた名前は?」

「……え?あ、名前ですね……」


 なんか急にもじもじしだした、俺の時には結構グイグイ来ていたのに。内弁慶なのだろうか、だとすると俺が既に内側に居るのかが謎である。餌付けしたからか?


「ぼ……私の名前は……ソフィーです」

「ソフィーか、いい名前じゃないか、ん?ソフィー……、どっかで聞いたな」

「き、気のせいじゃないかな……?よくある名前だし……」

「ふむ、それもそうか、ところでソフィーは何故こんな所に?」

「魔術の実験さ、ここは学園の人間は殆ど来ないから一人でのびのび出来るからね」

「実験?この迷宮は魔力を吸い取るから魔術の実験なんて出来ないだろう」

「普通ならね……着いてきて、蜂蜜飴(ハニードロップ)のお礼に良いモノ見せてあげる」


 今日は5層目に入って探索する予定だったが良いモノを見せてくれるのなら付いて行こう。


「実験とは言っていたが迷宮に入るには冒険者のギルドカードが必要だが持っているのか?」

「それはこれのおかげさ」

「学生証……?なになに、『中級冒険者修了証書、学園主催の中級冒険者講習を修了したことを証する』」

「選択科目に冒険者育成っていうのがあってね、テストに合格すれば冒険者のギルドカードと同じ意味を持つんだ。もちろん卒業すれば冒険者ギルドから合格した級のギルドカードがもらえるんだよ」

「つまり、ソフィー様は中級冒険者であらせられるのですか?」

「まじか、俺達より冒険者ランク上じゃん」

「そ、それほどでも……殆ど筆記試験だけだし、実技も目標に向かって魔術を撃つだけだから簡単だよ。卒業資格も取れるし」


 なに?それはいい事を聞いた、今度調べてみよう。ちなみに現在の冒険者ランクは下級の1等級である。中級迷宮を30分で攻略するヤツが下級なわけないっしょってギルドマスター(エリちゃん)が中級の1等級まで飛び昇格しようとしてくれたけど下手に目立ちたくないので辞退した。


「冒険者の資格取るって事は卒業したら冒険者になるのか?」

「いや……別に、気まぐれで取っただけだし」

「へえ、じゃあ他にも何か資格を持っているのかしら」

「えっと、呪文検定1級、魔獣調教師(モンスターテイマー)、魔法陣検定1級、魔力回復薬(マナポーション)調合資格……他にもいろいろ」

「沢山持ってるな」

「本に書いてある事を書きだすだけだから……難しくはないよ。むしろ中級冒険者試験の実技の方が難しかった」

「ああ、知識はあっても実践できるかは別だもんな」

「人前に出るのが苦痛だった」


 そっちかい、薄々感じていたけどやっぱり人見知りじゃないかなこの子。

 そうしている間にどうやら目的地にたどり着いたらしい、ソフィーが立ち止まった場所は通路の突当りだった。


「なによ、行き止まりじゃない」

「大丈夫、ここを……うんしょ」


 壁の一部を押し込むと突当りの壁が下りてきた、隠し扉か。

 壁が床と同化すると奥には小さな空間があった。そしてその空間の中央には宝箱が鎮座していた。


「宝箱だ」

「宝箱ですね」

「宝箱じゃない」

「あれトラップだから触らない方がいいよ」


 マジか、宝箱に進む足を止める、しかし他にはこれと言って何かあるわけでもない。

 また先ほどの様に隠しスイッチでもあるのだろうか。


「こっちこっち」


 ソフィーが手招きしていたのは降りた壁の後に出来た隙間だった。え、ここ?

 俺達の戸惑いを他所にソフィーはどんどん進んでいくので仕方なく付いて行く。ぐっ狭いな。

 壁の隙間は想像以上に深く通路になっていた。どうやら壁が隠していたのはこっちが本命の様だ。

 俺以外の二人は問題なく進んでいる。これ長細い系の魔物に襲われたら俺だけ何も対処できないな。

 隠し通路は思いのほか短く、直ぐに通常の通路と同じ広さになり、先に進むと小さな部屋が現れた。

 部屋の隅に机とベッドが置いてある以外にはこれと言った特徴……いや、壁床天井に魔法陣が描かれている、それにこの部屋に入ってからこの迷宮特有の虚脱感が消えた。


「それはこの魔法陣が迷宮の魔力吸収を無効化しているからだよ」

「魔力吸収って体内のは取れないんじゃないのか」

「確かにそうだけど人は無意識に魔力を身体の周りに纏っているのさ。これを魔力外皮(オドスキン)と言うんだ、それが迷宮に吸われて無くなってしまい、体内から魔力を放出して補おうとするんだけどそれをまた迷宮が吸収する。これの繰り返しで体内の魔力が少なくなって虚脱感を感じるって事さ」


 はあ、そんな事になっていたのか、という事はこの迷宮はあまり長く居ない方がいいんだな。

 人気のない迷宮だったから選んでいたが、これなら別の迷宮の方が良さそうだ。


「ところでさっきからこの壁からゴリゴリと音がするんだけど隣どうなってるの?」

「……気のせいじゃないかな?」

「ふーん……これかな?」

「あ?!まって!」


 壁の一部が少し凹んでいる、隠し扉を開ける隠しスイッチなのだろう、何度も押された跡が出来ている。

 ゴリゴリと鳴っていた壁が開いていく。

 剣に手をかける、アリスに至っては既に抜いて構えている。


「キューイ!」

「こ、こら。人が来てるときは静かにしなきゃダメじゃいか」

「……ドラゴン?」


 黒い鱗のドラゴンだった。

今日はちゃんぽんを一杯食べた

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