41 それぞれの夜
給料日なので初投稿です
「そりゃあどういう事だ?」
「ご主人様、彼らの言葉に耳を傾けては……」
「奴は自分が守護する聖女から悪魔の討伐を命じられている」
「悪魔?」
「自分を聖女と騙り、周囲の人間を魅了して操っていると、そのような情報を与えられている」
「まてまて、その悪魔って……」
「イザベラの事だ」
「イザベラちゃんは人間です!悪魔などではありません!」
「その通りだ、彼女は正真正銘の聖女である。その事は我ら聖罰者も把握している」
「じゃあなんで襲ったんだよ」
それこそスレイに直接言えばいい話じゃないか。
「我等とかの守護騎士とは敵対派閥でな、我等の言葉は決して届かぬ」
はあ、デカい組織に入ってる人間は色々面倒臭いのかねえ。
「国境を越えればあの守護騎士の剣は聖女の首を捉えるだろう。努努忘れるな」
そう言うと黒づくめは路地に消えていった、急いで追いかけたが路地には誰も居なかった。
「ご主人様、今の言葉信じるのですか?」
「さあな、本当に本当の話かもしれないし、俺たちを仲違いさせる為の嘘かもしれない」
本当なら国境を越えたらイザベラと一緒に殺されるな。
かといって話を信じて黒づくめにイザベラを渡して騙されるのもシャクだし、と言うかスレイを出し抜いてイザベラを連れ出せるイメージができない。
「こう言う時は……超法規的措置、聞かなかったことにしよう」
「それでいいのでしょうか……?」
こうなったらなるようになれだ。そもそも彼奴らの話を信じる方が無茶だしな。
部屋に戻るとスレイが扉の前に椅子を出して本を読んでいた。
「お疲れ、何を読んでいるんだ?」
「これかい?神聖教の聖書かな。見てみるかい?」
差し出された本を見てみるとこの世界の文字で書かれていたが独特の言い回しのせいか読みにくい。
「古い言い回しで書かれてますからね、読みにくいでしょう?」
「まだ文字も習っている最中だからな、普通に書かれていても読むのに時間がかかるよ。どんな話なんだ?」
「そうですね、この章は良き隣人とは誰かを示した話です。内容としては改心した悪魔が人間を助けようとするけど見た目から人間に逃げられていました。そこで悪魔は角を隠し、翼を隠し、肌を白く塗って過ごしました」
「悪魔は病を癒し、困難に知恵を貸し人々と共存していました、そこに旅の神官が訪れ悪魔の正体を暴き退治しました。その後、人々は次第に病に負け困難を乗り越えられずに誰も居なくなりました」
「後味悪い話だな」
「1つ質問してもいいですか?」
「なんだ?」
「この神官は、悪魔を退治すべきだったのでしょうか?」
「それはどういう……」
「悪魔退治は神官の使命です。しかし使命に従った結果人々は居なくなってしまいました。彼の行為は正しかったのでしょうか」
「あぁ、そういう……、これは持論と言うか俺の主義みたいなものだけど、その行為が正しかったかどうかなんて後にならないと分からない。だから、後悔しないようにその時自分が正しいと感じた事をやるべきだと俺は思う」
「自分が正しいと感じた事……ですか?」
「そう、そして後にアレは間違いだったと思ったら、反省して次に活かせばいい」
まあこれはあるアニメの受け売りなんだが。
少しの静寂があって、スレイは本を閉じて立ち上がった。
「すまないけど今夜の護衛は君たちに任せていいかい?少し一人になりたいんだ」
「構わねえぜ、ほらこれ夕食」
「ありがとう、恩に着るよ」
食事を持って奥の部屋へと消えていった。それを見届けてから中に入るとイザベラがベッドから体を起こして外を眺めていた。
その姿は聖女になる前の姿によく似ていて、やっぱりあの赤髪の女の子だったのだと再認識した。
「ようやく来たわね、遅いわよお腹空いたじゃない」
「すまんすまん、ほら」
「ワタシ、飲み水を貰ってきますね」
夕食を手渡すと特に何か言う訳でもなく素直に受け取る。アリスは水差しを持って一階に下りて行った。
「ねえ、あたしが治した人はみんな元気だった?」
「あのまま放置しとけば三日三晩は騒ぎ続けるんじゃないかってぐらい元気だぞ」
肺を吐き出した奴なんか「なんか血が足りねえ」って言いながら肉をモリモリ食ってたし。
「それは良かったわ」
「しかしいくら何でもぶっつけ本番で聖域術式なんて大技使うなんて無茶が過ぎるんじゃないか?」
「そんなこと言っても出来ると思ったからやっただけよ」
「そんな適当な……いや、まあいい。食べて寝て体力を戻しときな。明日もまた旅だ」
「そうね、……美味しい」
「そりゃみんなを笑顔にした後の飯だからな」
「なにそれ」
ご存じない?ネットスラングだから当然か。
「あー……俺流の言い回し」
「ふふっ、変なの。……ねえ」
「なんだ?」
「あたしがもし……やっぱり何でもないわ」
「いや、途中で辞められると気になるんだが」
「いいの!あたしもう寝るから早く出ていきなさい、レディの寝顔を見ようなんて思わない事ね、見たらまた腕生やすわよ」
脅し方が斬新すぎる。
「そりゃたまんねえな、おやすみイザベラ」
「えぇ、おやすみなさい」
逃げるな




