04 グランドクエストを知ろう
下半期に入ったので初投稿です
その後なんやかんやあって教会にたどり着いた。
朝食の内容?水みたいなスープと石みたいなパンだったよ。
聞いたところによると塩の流通はかなり少なくとても高価な物らしい。この味が普通なら今後ここでやっていけるのだろうか……。
「ここが神聖教の教会です」
「おぉ、なんて言うか……デカイな」
周辺の建物より大きく奥には鐘楼が付いた……ゲームに出てくる教会と言われて想像する建物のイメージそのものな佇まいだ。
そういえば神社や寺には行ったことあるけど教会は無いなあ。
中に入ると左右対称に長椅子が並べられていて、1番奥の一段上がった場所……祭壇には屋根の上にもあったシンボルらしき物が飾られていた。
「ワタシも初めて見たときはその大きさに驚きました。村の教会よりもずっと大きいですから」
「俺もこういう所は初めてだから確かに驚いている。お祈りとかしといたほうがいいかな?」
「ワタシは毎朝お祈りしております、ユート様もなされてはどうでしょう」
祭壇の前まで来るとアリスは片膝をついて手を組んだ。他の人も同じポーズをとっている。成る程、これがお祈りのポーズなんだな。
俺も習うように祈りの構えを取る。
えーと、神様がいるなら聞いてほしい。何で俺はこの世界に飛ばされたのか、飛ばしたのは神様なのか、もとの世界に帰れるのか。
色々聞きたいことが次々と浮かんでは消え、中々に考えが纏まらない。自分自身で思っている以上にこの状況にテンパっているようだ。
「おい」
誰かが後ろで喋っている。
「おい、聞こえとるじゃろ」
お祈りで忙しいから静かにしてほしい。
「おい、無視するんじゃあない」
ガスッ
「痛ってぇ!何しやがる!!」
「人を無視するからじゃ」
頭を何か固いもので叩かれた。
振り向くとへそまでありそうな長い顎髭を貯えた爺さんがいた。手には身の丈より大きな杖を持っている。歩くとき邪魔じゃないのだろうか。
「てかここ何処?教会にいたはずだけど」
「ここは魂のみが来れる場所、あの世との境界みたいなところじゃ」
いつのまにか臨死体験してるの俺、トラックにも轢かれてないんですけど?
何もない真っ白な空間だが、なぜか見たことある景色だ。いや真っ白な空間に景色もクソも無いが……あぁ、そうか。
「異世界転移、いや転生で主人公が死んだら神様に会うところだ。ってことはあんたが神様か?随分こってこてな姿してんだな」
「今のワシは姿を持たぬ故、これはオヌシが考えるワシの姿じゃよ」
「マジ?ヤダ俺の神様のイメージベタ過ぎ……?」
もっと他にあったろうに。
「まあそんなことよりもオヌシがここに来れたと言うことは我が使徒は無事に会えたのじゃな」
よかったよかったと顎髭を撫でる神様。
「使徒って誰のことなんだ?」
「一緒におる女子のことじゃよ、オヌシの願い通りの世界じゃろ?」
「願い通りの世界?」
一体何の話をしてるのか全く理解できない。
「む?さてはオヌシ、ワシと会った事を忘れておるな?」
「忘れるも何も初対面ですが」
「ふぅむ、仕方ない。さっさと思い出させてやろう。えいや」
手の杖を掲げると淡い光が杖を包む、おぉ、これって魔法か?どうなるんだろu
ガスッ
掲げた杖を振り下ろし俺の頭に直撃した。
「痛ってぇ!何しやがる……ってあー!思い出した、昨日行き倒れてたホームレスのジジイ!!!」
呑んでた友人と別れた後通りかかった公園で倒れてたジジイを発見して飯を奢ったのだった。その時に
◇◇◇
「爺さん名前は?」
「我が名は……いや、いい。それより貴様には借りが出来た、なので一つ願いを叶えてやろう」
「いやいや、ホームレスの爺さんにそんな事望んで助けたわけじゃないし、ぶっちゃけただの気紛れだし」
「だがその気紛れで助けられたのは事実である。何でもいいから望みを言うがいい」
なんかこの爺さん圧があるなぁ。
夢と聞かれて一つ思いつく、阿呆らしい考え。
二度と会う事は無いだろう面倒くさい年寄りを煙に巻く戯言。
「俺、今ハマってるゲームがあってさ。これ、ディスティニープリンセスストーリーズって言うんだけどさ」
スマホを操作してDPSのタイトル画面を見せる。
「これの主人公がさ、神託を受けたって言う女の子達にお世話してもらいながら世界の真実を探っていくって話なんだよ」
「ふむ、要するに女を囲いたいと訳だな」
「ぶっちゃけるねえ、間違っては無いけど」
「こちらの寝物語には疎いが民草が王や勇者になり美女を侍らせる物語はどの世界でもあるものだな」
爺さんはテーブルの食器を端に寄せるとコップの水を使って何か模様を描いていく。
「ではいくぞ」
「どこに?」
「オヌシが言うた女の子達にお世話される世界にじゃよ。ワシの最後の魔力を使って連れて行ってやろう」
爺さんは立ち上がると両手を掲げてブツブツと喋り出した。
深夜のファミレスとはいえ何人か客はいる、その全てが爺さんと俺に注がれる。
「いやいや、爺さんボケてんのかよ?いいから座ってくれ……ょぉ?」
爺さんの奇行を止めようと立ち上がるが突然眩暈が襲ってきてそのまま机に突っ伏した。
「起─たら、教会──のじゃぞ。──にはやってもらう──るからの」
意識が急激に沈んでいく、爺さんが何言ってるのかもわからない。この感覚は、徹夜明けに潜った布団の時に似ている──
◇◇◇
「思い出したよ、爺さん神様だったんだな」
「ワシの事などどうでもよい、望み通りオヌシを世話する事が使命の女子を用意しておいたからの」
「いやいや、それより俺は元の世界にも戻れないのか?」
「すまぬが、アレは全魔力を使い切っての転位魔法での。故にワシがお主を送ってやる事は出来ぬのじゃ」
マジかよ、来期からDPSのアニメも始まるって言うのに……
「しかし、魔法とは魔力で法則を塗り替える業、お主が来たこの世界には転移魔法は存在する、帰りたければ探して使うが良い」
「うーん、それならいい、のかなぁ?」
どうせオタク趣味以外は特に未練もない世界だし、しかし突然失踪して親を心配させるのは忍びない。
「それとお主の身体をこちらで作り直したから、魔法が使えるようになっとるはずじゃ」
「作り直した?身体を?」
「うむ、魂を抜き取った方が楽じゃからの、肉体精製はワシの手にかかればちょちょいのちょいじゃし」
「言い回しが古くせえし元の世界の肉体はどうなってるんだよ」
まさか魂抜けて死んでるなんて勘弁だぞ。
「心配するでない。代わりにワシが入っておる」
お前が入っとんのかい。
「お主の代わりにワシが肉体を維持しておこう。なあに、ワシの手腕にかかれば世界を牛耳ることなど造作もない、戻ってくる頃には世界中の王を顎で使えるようになっておるぞ」
アフターケアが怖すぎる、一般人でいてくれ。
「まあ、いきなり死んで親不孝にならなくて良かったよ。……で、爺さんは俺に何をやって欲しいんだ?」
ここまでやっておいてハイさよならなんてないだろうな?
「……なんのことかな?」
「オタクだからな、こういう展開にはちょいと詳しいんだ、世界を救うとかは無理だけど女の子を助ける位はやってやるよ」
「なら一つ、お主に託したい事がある、やってくれるか?」
「恩は可能な限り返すさ」
「では──」
本物の信長は笑うでしょ、いや本物の信長ってなんだ