39 聖女の奇跡
6月になったので初投稿です
「あたしがこの村を救います」
「無茶です!修行もしてない聖女様が能力を行使すれば一体どうなるか!」
「じゃあ取り合えず俺で練習でもするか?」
ナイフを取り出して手のひらを刺す。
貫通はしなかったものの骨を削った感覚がした。
「痛ってぇ……イザベラ、この傷を治してみてくれ」
「あんた本当にバカじゃ……無茶をしてはいけませんよ?」
「ご主人様、心臓に悪いのでそういう事はやらないでくださいませ」
「ごめんごめん、とりあえず傷を塞ぐ程度にかけてくれ。と言うか聖術って使ったことある?」
「全く、私だって教会に居たのですから使ったことぐらいあります」
イザベラが俺の手を握り祝詞を唱える。
「……治癒術」
手の傷に光の泡が集まり傷を癒していく、ここまではアリスの治癒術と同じ……?
「なんかめっちゃ光ってない?ってぐおおおおおおおおおおおおおおおおおお???!?!?」
傷口が滅茶苦茶痛くなってきた、まるで傷口に無理やり何かをねじ込まれている感じ……違う、逆だ!
「ご主人様の手のひらから指が……!」
「イザベラ、治癒術ストップ!」
「止めるってどうやって……?!」
「身体の中にある魔力の入った袋をイメージして、その袋の口を固く締める感じで!」
「袋の口を締める……うんんん!」
このイメージ方法はイースガルドの酒場にいる師匠その2に教えてもらった。
傷口に殺到していた光が収束していく、それに伴って生えてきた指の成長が遅くなってきた。
「スレイ!」
「はい!」
スレイに手のひらを差し出すと意図を感じ取ってくれたのか素早く剣を振り抜く。
生えた指がポロリと手から落ちる。残った僅かな光が傷口を塞いで消えた。
「あー、びっくりした。うわっこれ指かと思ったけど先端に指みたいな突起が出来てる……」
もしかして指じゃなくて腕が生えてきてたのか。過剰な治癒術はこういう事が発露するんだ。
「びっくりしたのはこっちよ!」
「ユート、やはりこれ以上は……」
「よし、次は威力を調整するぞ」
「あんた本当にバカじゃないの?!」
「何言ってんだ、ただの治癒術で新しい腕が生えてきたんだぞ。今の強さで村人に快復術を使ってみろ、人が生きた肉団子になるわ」
例えるならスプーン一杯で砂漠をジャングルに作り替える感じだろうか。
術におけるエネルギー効率が良いってレベルじゃない、何かしらの強化がかかっている。
もう一度手のひらを刺す。先ほどの痛みで若干躊躇するがここで俺が戸惑っていても先に進まない。
今度は骨と水平に刺したからか、貫通して手の甲から切先が出てきた。
「いっっっ……、いいか、今度は限界まで魔力を絞れよ、術がギリギリ発動する辺りまでだ」
「ほ、本当にやるのね……分かったわ」
普通そこまで絞ったら裁縫針で指先を刺した穴も治らない程度だ。だが今の治癒術の上昇量からしてこれで丁度いいはず、多分。
再びイザベラが治癒術を発動する、今度は指が生える事もなく綺麗に傷が塞がった。
手を動かしても違和感を感じない、完全に治っている様だ。
「よし、あと何回かは覚悟していたが大丈夫だな、聖女様はどうだ?どこか調子が悪くなってないか?」
「問題ないわ、あたしを誰だと思っているのよ」
「じゃあまずは一番重症な村人からだ」
「それは何故?」
「快復量が上振っても重篤化しているならある程度は調整が効くだろうからな」
スレイの質問に答える。下振れば完治はしないが症状は緩和されるだけなので問題ない。
「いいか聖女様、今度はそうだな……カップに紅茶を注いでいく感じだ。この患者が正常になるまで快復術を注いでいくんだ。ただし一度に入っていく量が多いから少しずつだ」
「わ、分かったわ」
俺の手を治した時より緊張しているな。
「聖女様……イザベラ、一つアドバイスだ」
「な、なによ」
「常に最強の自分をイメージするんだ」
「最強の、自分?」
「そう、自分の能力を完璧に制御して、どんな病人でも完全復活させれる、それこそ死者でも蘇らせることすらできる最強完璧な自分だ」
「……っぷ、なによそれ、死者なんて蘇らせたら禁忌目録で殺されちゃうわよ」
「それぐらいの自信でいけって事さ。大丈夫、イザベラなら出来る」
イザベラがころころと笑う。よし、楽しく会話できたな。
「ふぅ……よし、じゃあいくわよ」
落ち着いた様子で快復術の祝詞を唱えると、横たわる村人が淡い光に包まれた。
土気色だった肌に血の気が増していき弱々しかった呼吸も落ち着いてきた。
「よし、もういいぞ。これ以上は……」
「いいえ、まだよ」
なに、と聞き返す前に包んでいた光が段々胸部に収束していく。
「ここだわ、病が巣くう場所……!」
光が一際輝き、弾けると患者が苦しみだした、暴れないように俺とスレイが抑えると口から何か見えた。
胸に集まった光、心臓にしては範囲が胸部全体だったから……おい嘘だろ。
「アリス!この人の口から出てるヤツ引っこ抜いて!」
「はい!……ん〜やぁ!」
口に手を突っ込み、中の何かを引っ張り出す。詰まっていたソレを吐き出したおかげか完全に呼吸は落ち着いていた。
喉を通ったせいか萎んでいたが広げると1つの管と二つの袋からなる人にとって重要な臓器の一つ、肺だった。
「この人、ここがもう死んでいたの。このまま治しても長くは生きられないと思って、あんたの生えた腕を見て新しいのを作れないか試したの」
いやエグイよ。
ゲーミングエナドリ




