表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それはよくある異世界転生  作者: 乙屋敷


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/323

37 初体験

キスの日だったらしいので初投稿です

 真っ暗闇の中俺は佇んでいた。

 上下左右真っ暗で自分がどこに立っているのか、そもそも自分は立っているのかも曖昧な空間。

 ふと目を凝らすと小さな光が見えた。光に向かって走り出すと足取りが重い。

 まるで腰まで沼に浸かっているかのような感覚。下を見ると見知らぬ男たちがしがみついていた。

 否、見知らぬ男たちではない。あの日、あの時に俺に向かって襲い掛かってきた山賊達だ。

 ある者は身体を袈裟切りされ、ある者は首に大穴が空き、ある者は顔がひしゃげている。

 振りほどきながら光に向かう、しかし山賊達はいくら振り払おうとも身体にまとわりつき、ついには引き倒されて尻もちをついてしまった。

 その瞬間もの凄い勢いで身体を引っ張られて光から遠ざかっていく。光はどんどん小さくなっていき見えなくなってしまった。すると引っ張っていた山賊達が今度は覆いかぶさって行き身体が闇に飲まれていく。いくらもがいても闇の沼に沈んでいき……。


「ご主人様!」

「はっ!っはぁっはぁっ……ここは?」

「医務室だよ、急に倒れたって聞いたからびっくりしたよ」

「スレイ、運んでくれたのか?」

「運んでくれたのはそこの洗い屋だよ。僕は騒がしいから見てみたらユートが運ばれていくから付いてきたんだよ」

「オニイサン、ハッスルイイケド、チャント、カゲン、シラナイト」

「ご主人様!ご主人様!」

「アリス、心配かけてすまない」

「いえ、ご主人様の体調も気付けないなんて、従者失格です」

「はは、アリスが従者失格なら俺は主人失格だな。ところで聖女様は?」

「あちらにいますよ」


 スレイが示す方を見ると隣のベッドに背を向けて座っていた。


「心配かけてすまなかったな」

「……ごめんなさい」

「なんで謝るの?」

「あたしがちゃんとアリスを止めれてたらあんたが倒れる事無かったのにって……」


 負い目感じてるのか?正直女の子に目隠しされて身体洗いとかどんなプレイだよって思っていたけどまあ俺が一番得をしているのに謝られるとか寧ろ居心地が悪すぎる。


「……はは〜ん、もしかしてそんなに俺の裸体が見たかったのかい?」

「はぁ?!なんでそうなるのよ!」

「いや〜、見ないなら見たいって言ってくれればいつでも見せるのに」

「一言も言ってないし!バッカじゃないの?!」

「ユート、聖女様をあんまり困らせてはいけないよ」

「分かってるって。元気なさそうだったからちょっとな」


 医務室の医者から熱にやられたのだろうと皮袋に氷水を入れられ、冷やすようにと言われて浴場からでた。氷魔法始めて見た。

 その後、日も沈んだという事でそのまま宿屋に向かう運びとなった。

 のぼせたせいか食欲も無いし、スープだけで済ませてベッドに倒れこんだ。


「早朝の襲撃もあってか自分で考えている以上に疲れてたのかなあ。アリスはどうだい」


 今日はもう何もやる気が起きない、まだ早いけど寝てしまおう。


「ワタシは今日買った食料品を詰めてからにしますね」

「そっか、じゃあ頼むよ」


 そう言ってアリスの荷物整理をぼうっと眺めて寝ようかと思ったが中々寝付けない。

 疲れて寝たいはずなのに精神が昂っていてどうしようもならない。


「すみませんご主人様、うるさかったですか」

「いや、大丈夫。ちょっと寝付けないだけ」


 下の酒場はまだまだ盛り上がる時間だ、いっその事軽く酒を飲めば案外すとんと寝落ちするかもしれない。ベッドから起き上がろうと上体を起こしたがアリスに制されてしまった。


「アリス?」

「ご主人様、失礼します」


 アリスは俺をベッドに押し倒し、そっと頭を抱きかかえた。


「えっちょ」

「あの、あまり動かれるとくすぐったいです」

「あっはい」


 抱きかかえられたままじっとする、アリスの鼓動が聞こえる。流石に恥ずかしいのか鼓動が少し早い。


「なんでこんなことを」

「ワタシが教会に居た頃、悲しくて悲しくて泣いていた時、シスターにこうされていたのです」

「……俺泣いてる?」

「いえ、でもなんだかとても悲しそうです」

「そうかな……そうかも」


 再び静寂、酒場で男たちが騒いでいるはずなのに最早聞こえない。

 トクン、トクンと、アリスの心臓の音(生きている証)だけが聞こえる。


「風呂屋で気を失った時に、夢を見ていたんだ」

「ひどくうなされていました。余程の悪夢だったのでしょう」

「悪夢……なのかな、今朝殺した山賊達に襲われて、魂が沼に沈んでいくような、あのままだったら本当に死んでいたんじゃないかって、そう思うよ」

「それは……」

「それにさ、俺、人を殺すのが初めてだったんだよ。魔物(モンスター)じゃなくて、俺と同じ人を殺したんだ、この手で」


 手に残る、人を斬った感触。刃が肉に食い込む感覚、骨を叩き折る感覚、内臓を引きずり出す感覚。命を奪う感覚。


「何が怖いって、人を斬ったのに、あんまり魔物と変わらないなって思ってる自分がいることなんだ」


 人と対峙しているのに、魔物と同じ感覚と言うか、エネミー(敵性AI)としか見ていない自分に気が付いた。

ここはDPS(ゲーム)と同じ世界観、もしかしたらゲームそのものかもしれないけど、俺が殺した山賊にだって名前は当然のようにあって、そいつの人生もあったのだ。

それを俺はこの手で終わらせた(殺した)のだ。


「今はそれが異常だと感じているけど、人を斬りすぎていつかそれが普通になっちゃうんじゃないかって……それが怖いんだ」


 多分この感覚を失ったら俺は元の世界に戻った所で普通には生きていけないだろう。

 今後、人を殺す機会はあるだろう、この世に人権なんて上等な物はない。

 アリスの抱きしめる力が強くなる。


「ご主人様は、大丈夫です、絶対に」

「アリスが言ってくれるなら、きっとそうなんだろうな……」

「はい。絶対に、ご主人様は大丈夫です」


 アリスの心音を聞いて安心したのか瞼が重くなってきて、そのまま眠りについた。

 その日、悪夢を見ることはなかった。

久しぶりにFPSやると頭痛する

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ