30 クリアタイム 3:14
30話なので初投稿です
「あぁ、思い出した。お前のその動き、どっかで見た事あると思ったんだよ」
「急に、何を、言って、やがる!」
筋肉昆布の攻撃を躱しながら急に思い出した事を言う。利き手を潰されたからもう片手で剣を振るっているが最初の時より精細を欠いていた。
「あれだアレ、触手生物に似てるんだよその手の動き」
毒薬の大湿原でたまに見る希少魔物で人程の大きさの棒状の岩から中に住んでいるであろう生物の目と触手が飛び出ている大人なゲームでよく見るアレだ。
この世界だと触手を鞭のように打ち付けてきたり、先端を硬化させて突いてきたりと攻撃方法が多彩で中々に厄介な相手だった。
「まあ、ローパーの方が強かったな」
「俺様が、魔物以下だと!」
「片手一本と触手4本だと魔物の方が4倍強いな」
「ふざけるな!」
昆布の攻撃が激しくなるが、その悉くを躱していく。
「な?!」
「次はこっちからいくぞ」
昆布を袈裟切り、突き、横薙ぎと滅多切りにしていく。昆布もなんとか躱しているが構図が先ほどと真逆になった。
「飛び込みヤクザキック!」
「ぐぁ!」
大きく飛びかかりながら前蹴りをかます、214からの強攻撃だ。胸部に直撃した昆布はそのまま後ろに吹っ飛んでいく。
「げほっ……クソっ、おめえら!コイツをぶっ殺せ!」
昆布は大声を上げるが誰も反応しない、それどころか距離を離せば降ってきていた矢の雨すら降ってこない。
「どうした?!誰もいねえのか!」
「誰も居ませんよ」
門を塞いでいた柵の残骸(と山賊の死体)が吹き飛び、粉塵の中からスレイが姿を現した。
「外の襲撃者は粗方片付けました、残っているのは貴方と反対側で戦っている山賊くらいでしょう」
「ご主人様、ただいま戻りました。言われた通り、周辺の弓矢を持っている山賊全て討ち取ってきました」
「ば……バカな、500を超える人数がいたんだぞ……それをこんな短時間に」
「一振りで5〜6人倒せば100回振る前に全員切り殺せますよ。まあ、途中で逃げた連中も居ましたからもっと少なくて済みましたけど」
「いや、その理屈はおかしい」
「さて、こちら側で残るは貴方だけですし、あちら側も元より攻めるには人数不足でしたので町側の勝利で終わるでしょう……それよりも」
スレイが昆布を踏みつけて首筋に剣を押し当てた。
「貴方たちを雇ったのは誰ですか?」
「へっ、そんなこと誰が教えるか……と言いたいところだが、俺様を見逃してくれるなら教えてやるよ」
「おや、意外とあっさり」
「イース近くのダンジョンで見つかった財宝と町長の財産を奪う簡単な仕事って話だったのに……おめえらみたいなバケモンがいるって聞いてなかったからな、割に合わなさすぎる」
ダンジョン?イースガルド周辺で攻略したなんてそんな話……あ、
「もしかして『若き英雄の歌』か?」
「おう、その歌に出てくる財宝が王都に持ち込まれるって聞いてこの話に乗ったんだ」
あの歌には上級ダンジョンの迷宮主の首を持ってきたとある。上級の迷宮主の素材にダンジョン攻略した時に現れる財宝を合わせればかなりの金額になることは間違いないが、
「なんでそんな与太話を信じたんだ?」
「別に信じたわけじゃあねえが、ダンジョン初攻略ならあり得る話だし、そういうのを王に献上するのもまあ、あり得る。本当じゃなくても町長の財産を回収するだけでこっちとしてはよかったんだ、まあ実際に成りのいい馬車も確認できた訳だが」
俺達の馬車の事か。
「それで、雇い主は誰なのですか?」
「町長だよ」
は?町長?
「なんで町長が自分の町を襲わせるんだよ」
「俺様が知るか。俺様が儲かるならどんな仕事だろうと関係ねえ」
「なぜ町長は僕らの事を……聖女様が危ない!」
「え?聖女?スレイどういう……うわ足はっや」
ふり向くと既に彼方へと走っていた。
「俺達も急ごう」
「はい」
「おい、まてよ。俺様を置いていく気か?」
昆布が俺達を呼び止める。そういえばコイツの事どう処理するか考えてなかった。
奴隷の話でアリスの事を考えたら怒りが湧いてきたけど、元の世界でも奴隷が居た時代もあるわけだし。その仕組みについて言いたい事はあっても、どうこうするつもりは無いしな。
「スレイも放置して行ったし、最初に言ったら見逃すって約束し……てないな。まあいいか」
「はっ、甘ちゃんめ」
昆布は立ち上がると自分の剣も拾わずに門から出て行く。
「今回は俺様の負けだ。だがこの借りは必ず返させてもらうぞ」
「別に返さなくて良いぞ」
その返礼って絶対お礼参り系じゃん。
そして昆布は闇夜に消えていった。戻ってくる気配もない、本当に逃げ帰ったのだろう。
「昆布……名前なんだっけ……強敵だった」
クランバトル……うごごご




