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199 貴族の博打

文月ふみの日なので初投稿です

「再興というのはベルンハルト家の事……ですか」

「そうだ、ユート殿も知っての通り我が家は古くからイースガルドの守護を任されていた名誉ある貴族だった。だが裏では死に至る毒(ヴェノム)と手を組み悪事に染まっていた」


 死に至る毒(ヴェノム)との戦いはそれはそれは面倒な事件だった。奪われた小剣を取り返すだけで特に何も得る物も無かったし、ヴァルシャウト家との繋がりが出来たのを収穫物と捉えるしかない。


「我が家の権威は地に堕ちた。このままでは俺の代でベルンハルトの血筋が途絶えてしまうだろう。もちろん家の償いはしていくつもりだ、だが俺はアイツと……エンツォと共にこのイースガルドを守っていく貴族でありたい」


 エンツォとはヴァルシャウト家の子息であり次期当主だ。たしか幼馴染なんだっけか。その夢の為に自分の家を再び貴族として成り上がらせていくと。


「並大抵の事ではありませんよ」

「覚悟の上だ」

「では微力ながらお手伝いはしますよ」


 それで町長と引き継いでくれるなら。


「しかしそれだと町長になってしまうとイースガルドを守る夢から遠ざかってしまうのではないかい?」


 ソフィー言うな!


「なに、それは心配ない。確かにイースガルドから離れてしまうがそれは一時的な事、成り上がっていくにしてもまずは実績を積まねばならん。その第一歩として町の統治者を任せられるような実績が欲しいのだ」

「なるほど、では何か具体的な案があるのですか?」

「実は今、貴族達の間で黒竜の迷宮(ダンジョン)へ大規模探索隊の出資を準備しているらしい」

「大規模探索の?」

「あぁ、迷宮(ダンジョン)は国としても資源の宝庫だ。貴族としても国に貢献して地位を上げる絶好の機会になる。それも竜種(ドラゴン)迷宮(ダンジョン)ともなれば上手く行けば4大貴族にも並びうる可能性は大いにある」

「そんなの他の貴族が黙っていないのでは?」

「形としては共同出資という事になっている。だが誰がどれだけ出すかで利益の分配が変る」

「その共同出資に乗るという事ですか?」

「いや、俺の金では最低金額にも届かない」


 じゃあなんでその話をしたんだ。


「だからその金で君達に探索を依頼したい。大規模探索が始まる前に君達で探索を進めて報酬を総取りする」

「他の貴族が共同出資なのにそんなことしたら叩かれませんか?それに町の仕事で忙しいのにそんな暇ありませんよ」

「その辺りは既に対策済みだ、町の仕事に関しても心配ない……出てこい」


 ランベルトの言葉に物陰から人が現れる……って俺?!


「紹介しよう彼女はナル。元はベルンハルト家の分家の生まれでな、諜報員として育成されていて変装の達人だ。今は俺専用のメイドという事になっている」


 色々言いたいことはあるがこんなにもそっくりな俺が目の前にいるとちょっと怖い。


「分家って、ベルンハルト家は分家含めて全員死刑になったんじゃないのか?」

「国王はそうしようとしたらしいけど領主様が阻止してくれたらしい。無垢な子供達を導き、再び貴族として立ち上がれる機会を下さったのだ」


 なるほど、しかし自分に真顔で見つめられるとマジで怖いな。


「彼女を君の代わりに町長を務めさせる。もちろんその間、補佐と修行の一環として俺が町長の家に行かせてもらう」

「その間に探索をする、という事か」

「どうだろうか、報酬は依頼料に君たちが迷宮(ダンジョン)で手に入れた情報と魔道具(マジックアイテム)の買い取り」

「失礼だが買い取る金は用意してあるのか?」

「それについては残念ながら国王に献上した際の褒賞金待ちになってしまうかな」

「見通しが甘すぎるんじゃない?お金が少なかったりそもそも貰えなかったらどうするのよ」

「その時は俺自身を奴隷として売っても金を工面しよう」


 クレアの言う事もまったくだ。だけどその覚悟の決め方もちょっと怖い。


「わかった、それでいい」

「ちょっとユート!」

「そもそも町長の引き継ぎを言い出したのはこっちなんだ、多少の無茶は飲む覚悟できてるよ」

「そうだけど……」

「それに、ランベルト様もこの機会を逃すまいと必死なんだよ」


 だから言わなくていい懐事情まで晒し、町長の代役を差し出している。足りなければ自分を売ってでも用意すると言っている。


「自身の理想の為に我武者羅に頑張る若者は応援したいんだよね」

「それでは、受けてくださるんですね」

「あぁ、大規模探索はいつ頃になりそうなんだ?」

「早くて1ヶ月後、貴族同士でもめれば半年はかかるでしょう。ですが探索が9層まで進んでしまえばすぐにでも始まるかと」


 10層には階層主(エリアボス)が居るのでその戦利品(ドロップアイテム)を逃さない為だろう。


「こっちに来るまでの準備はどのくらいかかる?」

「3日……いえ、明日には向かいます」

「よろしい、では君達が到着次第俺達は黒竜の迷宮(ダンジョン)へ探索を開始する」


 翌日、朝早くから宣言通りにランベルトとナルは現れた。今はメイドの姿をしているが身長は俺の肩にも届くかどうかという感じだ。どうやって変装しているのだろう。


「ようこそお越しくださいました。ではこちらへどうぞ」


 執務室に通して報告は一時止めるように指示した。


「よし、コレでしばらくは来ないはずだ、今のうちに変装して……」

「どうした?幽霊でも見たかのような顔をして」


 振り向けば俺がすでにいた。


「よし、コレで準備は完了だ」

「お、おう」

「それでは依頼(クエスト)を開始してくれ」


 俺達は俺とランベルトに見送られながら迷宮(ダンジョン)へと向かった。

アイマス最高

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