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198 町長

ファミコンの日なので初投稿です

「町長!2区と3区の連中がまた喧嘩してます!」

「今度はなんだ」

「2区の山猫亭と3区のリバードックでどっちの看板娘が可愛いかだそうです」

「じゃあ看板娘コンテストでも開催するように言っておけ」

「町長!4区で住人が暴れてます!」

「理由はなんだ」

「仕事が無いといっています」

「暴れる元気があるなら迷宮(ダンジョン)で稼ぐように放り込んでおけ」

「町長!農作地近くの森からハニーベアが現れました!」

「一般人は退避、駐在の騎士団にクマ撃退の要請をだせ」

「町長!」

「町長!」

「町長!」


 町長に任命されてから色々な問題が俺の元に舞い込んでくる。それを処理しては町民からの申請書に承諾印を押していく毎日だ。


「どうにか町長から抜け出さないといけない」

「もうかれこれ3ヶ月は仕事浸けだもんね」

「黒竜の迷宮(ダンジョン)は今5層目を攻略中だそうよ」


 ソフィーの報告を聞いてげんなりする、迷宮(ダンジョン)攻略はこの世界で数少ない娯楽の一つだ。


階層主(エリアボス)は居なかったのか?」

「1層目のジャイアントバット以降は特に見当たらないね、というより普通なら次に階層主(エリアボス)が出てくるとしたら10層目じゃないかな」

「だが2層目では……」

「2層目?そこはボク達で攻略したけどいなかったじゃないか」


 居なかった?そんなわけ……。


「言われてみればいなかったな」


 あそこにいたのは動く屍(リビングデッド)だけだ、何と勘違いしていたのだろう。

 まあ攻略が進めばスイの言う迷宮(ダンジョン)の主であるファフナーとやらに会えるだろう。


「ところで話を戻すがどうやったら町長を辞めれるかだ」

「やめるって言えばいいんじゃないの?」

「それで辞めれるならもうやってる」

「仮にも統治者だからね、辞めるにしても後任を探さないといけないしそもそも今は町の発展する過渡期にある。下手な者を選んだらろくでもない町になるよ」


 クレアの質問の答えに対して追加情報を出すソフィー。アリスは全員分のお茶を用意している。


「新しい町長を探すかいっそ町の発展をすませるか」

「すませるって、どうするのよ」

「……どうすればいいと思う?」


 町の発展は人が集まり続ける限り止まることは無い。逆に言えば人が来なくなれば発展は止まる。

 まあ人が来なくなると町は死ぬのだが。


「となるとやはり代わりの人間を探すのが一番手っ取り速いか」


 しかし代わりになりえる人物なんて思いつかない。


「ご主人様、どうぞ」

「ありがとう、アリスはどう思う?」

「新しい町長様ですか」

「そう、教養があって責任感が強い俺の知り合い」

「それでしたらランベルト様はどうでしょう」

「ランベルト……誰だっけ?」


 どこかで聞いたような、ないような。


「ランベルト・ベルンハルト様です」

「ベルンハルト……あー、あの熱血漢」


 死に至る毒(ヴェノム)の件で自分の一族を裏切ってでも使命に殉ずる熱い男だ。今はヴァルシャウト家の元で暮らしているのだったか。


「落ちぶれて再興の気をうかがっている貴族か……確かにちょうどいいかもな」

「悪い顔してるわよ」


 失礼な、いい案が閃いた顔だよ。

 後日、俺はヴァルシャウト家の門を叩いていた。事前に行くと手紙を出したらこの時間に来るようにと返事が返ってきた。

 扉が開いて中からメイドさんが出てくる。転送魔術が使えるメイドさんだ。


「ユート様、ようこそいらっしゃいました」


 メイドに招かれて屋敷に入る。改めて見ると屋敷の内装は町屋敷の内装と似ている。職人が同じなのだろう。


「本日はランベルト様にご用事との事で」

「あぁ、急に来てしまって申し訳ない」

「いえ、ユート様はヴァルシャウト家の恩人でもあります。ご遠慮は不要です」


 まあ今から遠慮もクソもない頼み事をするので問題ない。


「ランベルト様、お客様をお連れしました」

「入ってくれ」

「失礼します」


 扉の向こう側からの声を聞いてメイドさんが扉を開く。開いてくれた扉を通れば燃える様な赤い髪の少年が机で書き物をしていた。


「おお!久しいなユート殿!」

「こちらこそ突然の来訪申し訳ありません。是非ともランベルト様にお願いしたいことがあったのです」

「はっはっは!ユート殿、そのような畏まった物言いは俺には不要だ!それにユート殿であればどのような頼み事でも受けよう!」


 なんでそんなに好感度高いの。まあいいや、それじゃあ本題。


「実は今、俺は新たに出来た町の町長に就任したんです」

「うむ、その町は俺も聞き及んでいる。新たな迷宮(ダンジョン)の町、名をセッテ・ドラゴニア」


 え、そんな名前付いてるのウチの町。


「町というより迷宮(ダンジョン)の仮称だな。正式な名前はその内領主様がお触れになるだろう。それで、その町がどうしたのだ」

「その町長の任をラインベルト様にお任せしたいのです」

「……何故俺に?」

「俺には使命があります。そのためには今は一つの場所に縛られている事は出来ないのです」

「使命か……それは御神託かい?神の寵愛(ギフト)が授かるほどの」


 きっと『親愛の絆(チートスキル)』の事を指しているのだろう。パーティ内にしか話してはいないが人前では隠さずに使っている。身辺調査をされればそこにたどり着くのは容易に想像がつく。


「そうです」

「そうか、ならユート殿にはあの町は小さすぎるな」


 だからと言って大きな街の要職にされても困るけど、そういう意味ではないだろう。


「分かった、そういう事なら代役を引き受けよう、ただし一つだけ条件がある」

「それは何でしょうか」

「俺の家、ベルンハルト家の再興だ」


フルティン古戦場

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