193 虫
ローメンの日なので初投稿です
死体を食べようとする木を見て剣を抜く。
「させるか!」
アリスと『親愛の絆』を発動させて一気に距離を詰め、死体を掴んでいる肢を一つ切り裂く。
「硬った……?!」
しかし切断するまでは至らず表面の傷つけるだけで終わった。アリスの攻撃した方も似たような状況だった。
「ウソだろ、『親愛の絆』乗ってるんだぞ」
「ご主人様、早くしないと……」
「分かっている。アリスは小剣を使え」
剣に『風刃』を付加する。ヴニュが拵えた剣の中でも緑竜の素材を使ったこの剣に『風刃』を乗せれば最高の切れ味を実現する。
「どっせい!」
「せいっやぁ!」
再び肢に斬りかかる。今度は綺麗に切断して死体を落とさせが一本に時間をかけすぎた。
「残り三人!」
一つはクー助が噛みついて抑えている。ナイスアシストだクー助。
「アリスはクー助のを。俺は奥のをやる」
「畏まりました」
「ソフィー魔術で動きを封じれるか?」
「残念だけど無理そうだ」
一番奥の木に『土石槍』が突き刺さっているが石槍を砕きながら口のような穴に近付けていく。
「確かに無理そうだ」
というか捕縛系の魔術ってあるのだろうか。小剣の中に重力魔術があったはずだから似たような魔術もあるかもしれない。
「考えてる場合じゃないな、『風刃』!」
剣に風の刃を纏わせて、木の傍に立つ。そして一気に剣を振りぬく。
「鉞担いだ金太郎ってか!」
幹を一刀両断された木は死体を手放しながら倒れた。アリスの方を見ればクー助と共に切り落としていた。後1本か。見れば胴体まで咥えられていた。大分ヤバい!
急いで向かうが半分程距離を詰めた所で足首まで飲まれている。間に合わない!
「コレで……!」
剣を逆手に持ち身体を引き絞る。死体の身長を考えて頭の位置は幹の真ん中より少し下。
「根本で斬り倒せば死体に傷はつかないはず!」
まあ多少傷がついてても蘇生術で何とかなるでしょう。
「いっけえ!」
『風刃』を展開して一気にぶん投げる。剣は真っすぐ飛んでいき、木を伐採した。
「よし!」
「ご主人様、何か様子がおかしいです」
切り倒された木は倒れることなく宙に浮いていた。というか羽根生えてる?
「これって間に合わなかった感じ?」
「多分」
幹が縦に裂けて中から巨大な虫が出てきた。デカきもい。
「なるほど、あの木の様な物は蛹だったのか、という事はあの幽霊は蛹に栄養を与える為に冒険者を殺して回収していた訳なんだね。そうなるとあの虫は群体のリーダーで幽霊は手下だったのかな」
「冷静に分析してないで、来るわよ!」
生まれた虫は木の幹で工作したようなカマキリが現れた。体長は4mは優に超えていそうだ。
「ご主人様、どうなさいますか?」
「倒す……が、まずは3人の死体を回収して撤退だ」
コイツの戦力も分からないのに死体を抱えて戦うのは無謀だ。
「俺が足止めする、全員で死体を回収してくれ」
「ワタシも戦います」
「アリスも回収に回ってくれ。クレアとソフィーじゃあ回収に時間が掛かる」
死体の運搬はクー助に大きくなってもらうにしても担ぎあげたりするのはあの二人では心もとない。
「では、ワタシが足止めをします、ご主人様の方が運ぶのに適しています」
「それじゃあアリスが危険だ」
「ワタシは大丈夫です、あの手の魔物は猟師の時何度も相手したことがあります」
あのデカいカマキリが居る森ってなに。
「来ます、それではご主人様よろしくお願いします」
「アリス!……死体を回収する!三人ともクー助に乗せるからデカくなってくれ!」
「了解だ、いくよクーちゃん」
「きゅー!」
「クレアは周囲の警戒!白ワンピがいつまた襲ってくるか分からないからな!」
「分かった!」
まずは一番近くに落ちている死体に向かい担ぎ上げる。クー助は俺の所に駆け寄ってくると同時に身体を大きくする。象ほどの大きさになると足をたたんで背に乗せやすくしてくれる。
「乗せた!次!」
死体を掴んで背中に放り投げる。『親愛の絆』のおかげで綺麗に背中に乗せることが出来る。最後の1人を放り投げて背中に積み込んだ。
「最後に、クレア!クー助に乗れ」
「その大きさじゃあ、あたし乗れないわよ」
「じゃあ俺が運ぶ」
「え、ちょっとそんな」
クレアの脇下に頭を差し入れえて一気に俵担ぎする。
「積載完了!全員撤退!」
「……」
アリスは振りぬいてきたカマを跳躍して飛び越え、カマキリの頭に乗るとナイフで突き刺した。ナイフは複眼に突き刺さり紫色の血飛沫があがった。
アリスが暴れ出すカマキリから飛び降りてこちらに駆け寄ってくる。
「足止め、完了しました」
「……流石だ」
紫色になったアリスに労いの言葉をかけつつ一目散に逃げだした。
「……」
その様子を白ワンピが木の陰から覗いていたが俺は気付くことは無かった。
出入り口まで撤退すると先に救助していたメンバーが全員残っていた。
「街に戻らなかったのか?」
その一言に一人の男が口を開く。
「戻れるわけないでしょう、我らの聖女様が今だ捕まっているのですから」
「聖女様?今回の回収出来たのはこいつらだけだ」
「これは護衛の人間です。あと一人いたはずです!まだ見つかっていないのですか!」
「いや、見つけたんだが……食われちゃった」
「くわっ……」
男がぶっ倒れ、何人かが男に駆け寄る。しかしアレに食われたのが聖女だったのか。不味い事になったかもしれないな。
ストイベ良かったね