192 救助
百人一首の日なので初投稿です
「あったわ!死体も吊ってある!」
以前アレックスの死体が吊るされていた木を見つけて直ぐに回収する。胸に大きな穴が開いているが蘇生術の修復能力で何とかなる。さっさと入口に戻り蘇生を開始する。
「……うぅ」
「息を吹き返しました」
「うそ、私……生きてる?」
「ちゃんと死んでたぞ」
「あなたたちは……?」
「救援隊だ。お前たちの回収しに来た」
生き返った奴に説明をすると白ワンピの恐怖を思い出したのか身体を震わせながらも話をしてくれた。
「私達はまずは階層の中央に向かいました、そこで謎の箱を見つけました」
「箱?」
「正確には何なのかは……鉄製の箱としか言いようがない物でした」
「いくつあったんだ?」
「一つです」
もしかしたらギミック用の何かかもしれない。中央に1つ……こういうのって大体複数あるから周辺も探索した方が良いだろう。
「そしたら例の幽霊に襲われて……ひぃ!」
「これ以上は無理そうだな」
「中央に行けばあの白ワンピと戦う事になる訳ね」
「可能性はある、だがほかに情報もないし中央にいこう」
そもそもアイツどこでも現れるしな。さっそく2回目の侵入を試みる。
今度は曲がらずにまっすぐ進む。この階層は中央に向かって歩くと僅かに傾斜している。恐らく中央が丘になっているのだろう。おかげでどっちが中央か分かりやすい。
「何か見えてきた」
ある程度登った所で数本の木と鉄の箱が見えてきた。
「コレが彼女の言っていた鉄の箱……でしょうか?」
「他にそれらしいのは見当たらないしこれじゃない?」
「他の竜種の迷宮で古代文明の装置は見たがそれとは少し違うようにも見えるね。ユートはどう思う」
「そうだな」
発電機だ。スイッチもいくつかあるしリコイルスターターのレバーもある。ならば起動させるのが筋だろう。
「とりあえず動かすか」
「分かるのかい?」
「ある程度はな」
昔、親父がキャンプ用に使っていたのを見ただけなのでうろ覚えな上に製品も違うが。
「流石ご主人様です」
「周辺の警戒を頼む」
ええっと、スイッチに名前は書いてあるし見て行けば何とかなるか……点火プラグのスイッチはコレで……。
「最後にこのレバーを引っ張って……!」
ドルゥン!ドッドッドッドッドッド……
安定して回り出した。どうやら成功したようだ。
「動き出したね」
「コレがご主人様の言っていたギミックですか?」
「かなりうるさいわ」
「そうだな、あとコレが3つか4つあるはずだ」
そしてこのエンジンの起動に白ワンピも気が付いているはずだ。
「周辺に吊られてる死体はあったか?」
「向こうに一人いたわ。今クー助が下ろしてるところよ」
じゃあさっさと行こう。帰る途中で白ワンピに襲われたが上位浄化を当てると一撃で帰って行った。
「さて、二人目の蘇生だが……」
「……ぶはぁ!」
「出来たわ」
話を聞くと西と東にそれぞれ3人、北に4人連れていかれたそうだ。
「1階層への出入り口、つまりココを南と仮定すると大体こんな感じらしい」
「大雑把だけど死体の場所は把握出来たね」
「今回は全員で12名という事でしょうか」
「エリちゃんから聞いた話と一致してるな」
となれば後はどの順番で回収するか。
「俺が一人、クー助が一人持てば最大2人は運べるな」
神官なら防具も薄いし女性も多いのでクー助なら2人は運べそうだ。
きゅ!とクー助が威勢のいい声を上げる。頼りになるな。
「まずは西側からいくか」
「理由はあるのかい?」
「感だ」
「随分と適当だね」
「まあ生死をさ迷っているようなら急ぐべきだが全員死んでいるだろうしとにかく回転率重視で」
そうして3往復したくらいで東西の6人を回収、3つの発動機を起動させた。その間に白ワンピの襲撃が1度あったが確実に弱くなっていた。
「相当弱ってきている」
「でもやはり倒せそうにないね」
「逃げるしかないか……」
DPSであればバグなりグリッジを使ってハメ殺しが出来るだろうがここは現実だ。無理に試して藪蛇で変なものが出てきたらたまったものではない。
「残りは北の4人だけだ」
「ギミックはあと幾つなのでしょうか」
「今の所特に何か起きたような気配はないしな、まだあるとしても1個くらいじゃないかと思う」
突入して最後の救出に向かう。中央を突っ切り北へ向かう。途中、中央付近に近付くと違和感を感じた。
「エンジン音が、発動機が動いてない?」
「それどころか壊されてない?」
発動機が動いていないし多少破壊されているように見える。
「白ワンピだろうな」
「直せるかい?」
「どうだろうか」
外見を見る限りパイプが外れている程度で付け直せば何とかなりそうだ。中身が死んでいたらどうすることも出来ないが。
「多分出来そう、でも先に救助しに行こう」
「畏まりました」
更に北上する。枯れ木の森が現れて奥に何かが見える。
「吊られた連中かも」
近寄ると吊られた連中が木から生えてきた虫の肢の様な何かが死体に食い込んでいる。まるで獲物を捕まえて食らいつくみたいだった。というか今まさに口に死体を放り込む直前だった。
「うわきも」
古戦場、ティアキン、古戦場、ティアキン、古戦場…