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189 移住

コロッケの日なので初投稿です

 移住、移住か……。別に悪い事ではない。10年分の市民権が付いてくるなら冒険者にとってこれ以上ないチャンスだ。


「おや、乗り気じゃないようだけど?」

「俺にはやる事がある」

「へえ?それって御神託かい?」

「まあ、そんなところだ」


 神様(ジジイ)との会話を思い出す、冬を越したらこちらに来て1年になる。なんだかもっといた気がするが気のせいだろう。


「俺の加護も御神託があってこそのモノだ。だから定住はまだできない」


 少なくともジジイとの約束を果たすまではな。


「それは残念、じゃあ市民権はいらないって事で」

「少々お待ちください」

「アリス?」

「ご主人様、市民権を諦めるのは早計ではありませんか?」

「それはどういうことだい?」

「今このチャンスを逃せば本当に欲しい時に今以上の手間がかかります」


 確かに今の状況はまさしく棚からぼた餅だ。今パーティ内で市民権を持っている者は誰も居ない。アリスはイースガルドではなくここから離れた村出身だし、クレアは孤児院時代に孤児用の市民権を持っていたらしいが今はクレアとして生きているので持ち合わせていない。ソフィーに至っては貴族なので最初から持っていなかった。そして何処からともなく生まれた異世界転生の俺。


「市民権は申請会で通った者しか獲得できません」

「そしてその申請会は年に一度、次に開催されるのは春の節気だね」


 今は冬の節気が過ぎたばかりだから大体3ヶ月後位か。


「申請会で市民権を獲得できるのはかなりの難易度と聞き及んでおります」

「アレを通るのは審査員の関係者かお金渡してる連中だね」

「いきなり黒い話になるじゃん」

「まあそんなもんだよ」


 市民権は買うのに金貨1枚程かかるとは言うがそれ以外にも金がかかるのか。


「審査員の関係者じゃないユート達が全員通るには金貨5枚……いや、それ以上かかるだろうね」


 そう言われるとこのチャンスを棒に振るのは勿体ない気がしてきた。というか市民権の獲得が想像以上に面倒くさいな。


「だがメリットがない」


 市民権を得て出来ることはイースガルド内で家を買う事、そしてイースガルド内で職に就くことが主な事だ。他にも疫病が流行った時に優先的に治療が受けれたり、凶作で飢饉になった時に食料が配給されたりとあるが今の俺達にはそこまで切羽詰まってはいない。


「病ならクレアが居るし、飢饉になった所で魔物(モンスター)を狩れば肉は手に入るしな」

「そうそう……魔物(モンスター)?」


 クレアの言葉は無視して話を進める。


「それよりも市民権を得た事による更新料金や家を買う際の金の問題もある」


 今の宿屋暮らしも結構金がかかるのでそろそろ賃貸を考えていた所ではあるが。


「ですが買うにしても借りるにしても市民権があればより良い所が選べます」

「それは確かに」

「今のワタシ達は様々な場所での冒険でそれこそ市民権20年分くらいのお金は持ち合わせています」

「だけどそれは一人分だよね?」

「そうですソフィーちゃん様、それも市民権のみのお金と考えた場合です、実際にはお家の代金、食料や衣服、装備の手入れ等々の事を考えたら市民権の期間は半分以下になるでしょう」

「だけど問題は冒険業で国から出る時だ、市民権を持った人間は国から早々出ることは出来ないだろう」


 市民の数はそのまま国力と直結する。市民権を持てるような人間は国としても手放したくないはずだ。


「別に市民権持ってるからって国から出ていけない事は無いよ?」

「……なに?」


 エリちゃんの言葉に言葉が詰まる。


「市民権を持っていたからって国から出ていけないなんてある訳ないじゃん。むしろ市民権もっている方が簡単に国外に出ていけるよ」

「そ、それは何故なんだ?」

「ほら、教国への巡礼とかサウスガルドの港町から連合国に旅行にいく人が多いからね。市民権を獲得できて維持できるような人ってお金に余裕がある証拠だし、むしろ冒険者なんかは国から出たり入ったりするたびにお金払ったり厳しい審査を受けたりしてるじゃないか」


 そういえば俺達が初めて国外に出たのはクレアがまだイザベラだった時に教国に行くためだ。その時はスレイの守護騎士(ガーディアン)特権でほぼスルーさせてもらっていた。その時はスレイの特権かと思ったがもしかして市民権があれば同等な事が出来るのか?


「ふむ……移住の件、前向きに検討するとしよう」

「いい返事を待っているよ」


 スイを連れて宿屋に帰る。ベッドも固い安宿だがテント暮らしよりましというのは迷宮(ダンジョン)に連泊して身に染みた。


「さて、遮音の結界も張ったしスイには聞きたいことがあるんだ」

「分かりました、ですがお父様、お願いしたいことがございます」

「なんだい?」

「私も迷宮(ダンジョン)に同行させて下さいませんか」

「同行?」

「はい、黒の迷宮(ダンジョン)にお誘いしたのは私ではありますがここで待つ間、心配で心配で胸が張り裂けそうでした」

「俺達と迷宮(ダンジョン)に入って君に何が出来るんだい?」

「私も戦う事は出来ます、それに最悪お父様達の盾になる事くらいは出来ます」


 そこまでの覚悟は聞いてないけど。


「皆はどうだい?」

「ご主人様の決定に従うだけです」

「良いんじゃない?置いてけぼりも可哀そうじゃない」

魔物(モンスター)である以上彼女にも戦う力はあるだろうし」

「うん、という事でスイの動向を許可しよう。でも盾になる必要はないからな」

「ありがとうございます」


 とりあえずスイから迷宮(ダンジョン)の情報を更に聞き出すことにしよう。


フェリ最終

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