187 迷宮と秘密の部屋
著作権の日なので初投稿です
取り残された死体の探索を1日で終わらせ残り2日は1階層の探索に努めた。俺達は転換前の地形を覚えていたので、その時に無かった新たな通路を探索していた。
「しかし想像以上に入り組んでいるな」
「広さで言えば今までの倍はありましょうか」
「魔物も蝙蝠とクモの基本種は変らないけど全て上位種に変わっている」
「でもその分、戦利品は今まで見た事無い素材ばっかりよ」
上位種の素材ともなれば売値も跳ね上がるだろう。宝箱なんかもあればいいのだが。
「ここは……行き止まりか」
「そろそろ集合時刻ではないでしょうか?」
「そうね、砂時計も3回反転させてもうすぐ落ち切るわ」
クレアが腰に付けている砂時計を見る。機械式の時計が無いこの世界では砂時計は携行できる数少ない時計だ。砂が落ち切ればひっくり返す必要があるが大まかな時間が分かれば多少ずれても気にしない冒険者にとっては有り難いアイテムだ。
「では来た道を戻って拠点に戻ろう」
「畏まりました」
「わかったわ」
「……うーん」
帰るのに一人難色を示している人物がいる。
「どうしたソフィー、何か気になる事でもあるのか?」
「うん、これを見てくれ」
「これって……地図?」
「そう、今までの地図に今日歩いた部分を書き足したものだ」
地図には通路事に数字が割り振られている。特に新しく出来た道には何やら計算式も掻かれている。
「この数字は?」
「ボクの歩幅で距離を測っていた。そうしたら計算にずれが生じている」
「歩幅なんかでわかるの?」
「わかるとも、例えば転換前からある通路、一定距離ごとに壁と天井に沿って模様が一周しているのは知っているね?」
「知っているわよ。それで地図化しているんでしょ?」
「その通り、そしてこれはボクの歩幅で丁度8歩事に存在している」
前に俺も測量したことがある。その時は俺の身長3人分で少しはみ出したので多分5m間隔でついていると予想している。
「それがどうしたのよ?」
「ところが新しい通路はこの模様は9歩間隔でついている」
正確には8歩と0.8歩だがねと付け足して言うソフィー。その言葉にアリスとクレアは首をかしげている。しかしソフィーの言う事が本当なら……。
改めて地図を見る。一区画が8.8歩、元の区画の1.1倍と考えれば計算は簡単だ。後はソフィーが作った地図を見て行けば。
「……ここだ、ここに1区画分空きがある」
前からある通路と新しく出来た通路の間、地図上は壁一枚を挟んで平行にあるように見えるが歩数距離で言えば確かに空きが存在する。
「なるほどねえ、それでどうするの?」
どうとはこの新規通路の区画の長さの違いについてだろう。
「もちろん言わない、この優位性は俺達で独占する」
他に気付いている冒険者も居るだろうが、そいつらが言うかどうかで変えていこうと思う。
「明日はこの空白の区画を調べてみよう。もしかしたら何か見つかるかもしれない」
その後予備の地図に区画数だけを書いた地図を用意して。夜の情報交換会に参加した。
「俺達の探索報告はここまでだ」
「ごくろう、他に報告することは無いか?」
俺の報告を最後に全パーティの報告が終了する。俺達以外気付いていないのか俺達と同様あえて報告していないのか分からない。まあ今回の旅団の大半が国外から来た冒険者だ。今回の大規模探索が終われば自分の国に帰る連中ばかりなので気付いていれば報告して追加報酬を貰う方が良いはずだ。
「ふむ、明日は探索最終日だ、本来なら一週間は探索を進めたかったのだが2階層の階層主の件もあり短期間に短縮せざるを得なかった。その事については申し訳なく思う」
サイさんが頭を下げる。俺達で倒せれば良かったのだが。流石に他のパーティの目もある以上『親愛の絆』は使えない。最後に全員の書き記した地図の情報を交換して自分たちの地図に書き足していった。
「それがこの地図だ」
「なるほど、他の通路にも幾つか空きが存在するね」
「明日はこの隙間に向かうの?」
「まずは俺達が探索した場所を探す。それ以外の場所はこの大規模攻略後に調べ上げていく」
この辺りは大分運任せだ。上手く行けばいいな程度でしかない。曲がりなりにも今いる冒険者たちはみな熟練した上級クラスなのだ。今日気付いてなくても明日には気付いているだろう。
「さて、明日の為にもさっさと寝よう」
「そうですね、では……」
「はい」
「……ん!」
全員が目を瞑り顔を上げる。いや顔というより唇を突き出している。
「……なにしてんの?」
「何って、お休みのキス待ちだが?」
「朝のご挨拶をするのですから夜の挨拶をするのが普通ではとクレアちゃん様とソフィー様とでお話したのです」
「それで順番とかどうしようと話し合った末にユートに決めさせることにしたのよ」
なるほどね……なんでさ。コレ順番間違えたら空気悪く成るヤツじゃん。というかどの順番でも間違いのヤツじゃん!全員一番最初にしないと機嫌悪くなるよ絶対。とは言え俺の首は1つしかないのだ。畜生俺の首が3つあれば……!
その時、俺を含めた全員が淡い光に包まれる。これは……『親愛の絆』の光?だが今までは一人としか光らなかったはず……一体どうして?
「だけどコレなら……!」
「ねえ、まだ?」
「いつまで待たせるのよ」
「……」
「あぁ、だが条件として俺が出ていくまで目を瞑っていてくれ、恥ずかしいからな」
そう言って彼女達の方に手を置とピクリと震えた。そのかわいらしく綺麗な顔に近付き唇に触れる。10秒程だろうか、じっくりとキスをした後直ぐにテントの出口に向かう。
「それじゃあ俺は自分のテントに戻るから、お休み!」
全員が声を掛ける前に背中越しにテントの隙間から転がるように出て行った。
「ユートってば、なんだかんだ恥ずかしがり屋よね」
「そうですね」
「それがユートのかわいい所じゃないか」
その夜、寝ずの番をしている冒険者から三面六臂の魔物が走り抜けていったと報告があったが、周囲を探索してもそのような魔物は見つからず、眠気による幻覚という事で見張りの交代が行われていた。
古戦場走る前に3000回読んで
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