185 事情聴取
ASMRの日なので初投稿です
「ふむ、そのような事が……」
白ワンピを撤退させ、合流を果たした捜索パーティは死体を回収して一目散に拠点へと帰還した。
時間的に夕食の準備をしていたであろう拠点メンバーは俺達の帰還と回収された死体を見て歓声を上げた。今はレイドリーダーであるサイさんに報告をしているところだ。
「それで、死体の彼は今どうなっている?」
「身体の傷を調べている。蘇生術で復活させるにしても死因を探れば何か敵の事も分かるんじゃないかと思ってな」
とは言えだ、この世界の医療技術は殆ど発達していない。回復魔術や治癒術で身体の傷や解毒が可能な世界ではそうなるのも必然というべきか、後は回復薬もそうだろう。飲んだり塗布するだけで治療が出来るあの液体は現代医療でも再現不可能と言っても過言ではない。
「なるほど、剣で斬られたにしても切り傷や刺し傷で武器の特定も可能だ……しかし我々は奴の攻撃を既に見ているぞ?」
「あぁ、だが見た目通りの攻撃とは限らない」
「どういうとだ?」
「これは蘇生術をかけていたクレアの話だが心臓を抜かれた連中の死体には傷が無かったんだ」
「傷が?」
確かにあの攻撃を受けて心臓を抜かれた瞬間は全員見ていた。だが死体には傷どころか鎧にも穴は開いていなかったという。
「あの攻撃は物理的な攻撃ではない、もっと魔術的な攻撃だ」
あの白ワンピ自体が幽霊なわけだから攻撃も物攻型じゃなくて特攻型なのかもしれない。
可能性として一番近いのは呪術だろうか。問答無用で死を与える攻撃は呪いに置いて他にない。
「そうなってくると本当に厄介だな。本格的に幽霊専門家を招集しなければ」
「その件なんだが……」
「ご主人様、蘇生の準備が整いました」
天幕の外からアリスが入ってくる、どうやら時間のようだ。まあ専門家の件はサイさんに任せよう。
アリスに案内されて死体の置いてあるテントに向かう。中に入るとクレアとソフィー、そして死体の仲間がいた。死体の調べはソフィーに任せていたので後で聞いてみよう。
「すまないな、すぐにでも生き返らせたいのに弄るような真似をして」
「いえ、これも先に進む者の務めです」
「それじゃあ復活させるわよ」
クレアが蘇生術を発動させる、暖かな光が死体を包んでいく。
「アレックス……」
光がアレックスの中に入り込むと死体の肌に朱が差してくる。心臓が動き出した証拠だ。しかし心臓が止まってから大分時間がたっていたが脳へのダメージとかどうなるのだろうか。
「……ぅ」
「アレックス!私が分かりますか?!」
「……やあ、マリア。今日も綺麗だね」
「あぁ……!」
「サラとエマも……君達も無事でよかった」
「アレックス!」
しばらくの間、感動の再開を眺めている事にする。会話の内容を聞く感じだと特に後遺症もなさそうだ。長時間心臓が止まってしまえば脳は酸素が受け取れずに多大なダメージを受ける。改めて蘇生術を含め回復する術のチート具合が分かる。
「君達がボクを助けてくれたのかい。どうもありがとう」
「気にするな、この階層の攻略に情報が欲しかったからな」
「ボクが覚えている事なら何でも教えよう」
「それじゃあ早速なんだが、心臓を抜き取られた時の感覚を教えて欲しいのだが」
「あなた!いくら命の恩人でもそのような事を……っ!」
「マリア、そんな事言うものではないよ」
「ですが!」
「いえ、今のはうちのユートが悪いわ」
「え、俺?」
「あんた自分が死んだ原因の感覚を教えてくれって心の傷をえぐるような事よく言えるわね」
「だが今回の階層主の情報は少しでも欲しいし……」
「だがも無いわよ」
「まあまあ、かわいい聖女様。貴方の守護騎士はこの迷宮攻略に必死なんだ。ボクも気にしないからそう責めないで上げて欲しい」
「ほら、アレックス君もそう言ってるわけだし」
「あんたが便乗するんじゃないわよ!」
めっちゃ怒られた。
「ふふ、さて殺された時の状況だったね。その事なんだが不思議な事に僅かに記憶があるんだ」
「ほう?」
「なんといえばいいのか、自分の死体を自分の身体の上から眺めているような感じだったよ」
自分の身体を上から眺める……TPSだろうか。幽体離脱していたとかそういう。そういえば前に俺も一度死んでいるがそういった記憶は一切ない。
「他には何か無いか?」
「確かあの階層主がボクの身体を木に吊るす時に喋っていたんだ」
喋る?鳴き声ではなく喋ると表現したという事は何か聞き取ったのだろう。
「なんて喋ったか覚えているか?」
「あと四つ……ボクにはそう聞こえたよ」
四つ?どういう事だろうか。
「流石に少し疲れたね」
「そうか、それじゃあこれでお暇することにしよう」
「すまないね。それと改めて感謝を。ボクを救ってくれてありがとう」
「それなら仲間のマリアに言ってくれ。彼女が諦めなかったから今の君がいるんだ」
アレックス達のテントから退出する。彼の言葉が攻略の手口となるのだろうか。
「時間は分からないけど食事の回数からして今は夜だ、明日に備えて寝るか」
その数時間後、彼らのテントからピンク色の声が聞こえてくるので彼らのテントを土壁で静かに囲った。
四象を回せ
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