183 探索開始
プルーンの日なので初投稿です
神官を抱えるパーティの内、探索に手を挙げたのは2パーティだった。
「私達も仲間を失う悲しみは知っています。そして失いたくないという気持ちも」
「起きた事は受け入れるしかない、だがまだ起きていないなら防ぐことはできるはずだ」
とは各リーダーの言葉だ。やだ……惚れそう。
「これで全員か?ではここからではここから二手に分かれる。探索パーティは2階層にて冒険者アレックスの探索を行い、発見、回収次第撤退する。その間残りのパーティは1階層の階層主の部屋を拠点として1階層の地図化を行う」
階層主は復活するのに1週間はかかる。その間は拠点として活用しようという魂胆だろう。
「期限は3日、それ以上は魔物化したと判断して撤退を開始する。異論のあるものは居ないか?」
「……」
神官の彼女も物静かに佇んでいる。納得はしたのだろうか。
「いないようだな……では作戦開始だ!」
サイさんの言葉で各自動き出す。俺達は作戦会議だ。
「さて、探索を始める前にパーティ分けするとしよう」
「そんな事しなくてもバラバラで探索すればいいじゃないですか!」
「あの白ワンピ……階層主を倒したわけじゃないと言っただろう。再び襲い掛かってきた時に単独パーティで対処するのは無理だろう」
「それは……」
「探索する死体が増えたらアレックスを探し出す事も出来なくなるぞ」
なにせ鎧を貫いて心臓を抜き取ってくるヤツだ。不意を突かれたら連れて帰る荷物が増えてしまう。蘇生術を使えるのはクレアしかいないので出来るだけ避けたい。
「最低でも2パーティセットで行くのがいいと思うんだが他に意見はあるか」
「では一ついいか」
手を上げたのは参加表明してくれたパーティの男だ。
「オレ達は探す冒険者の分からないんだがどういった特徴か教えてくれるか?」
「でしたら似顔絵を渡します」
「あるのか?」
「前に画家の護衛をした時にお礼として描いてもらったのがあります」
そういって出された紙を見る。まあ男前だこと。
「それじゃあパーティ分けは、彼女たちのパーティと組もう」
「理由を聞いてもいいか?」
「単純に今の彼女たちのパーティは前衛が居ない。俺のパーティならカバーできる」
なにせ前衛に俺、後方の警戒はクー助がいて前後の対処に素早く対応可能なアリスという構成だ。中間が何人増えようが対処は可能だ。
「なるほど、確かにオレ達のパーティじゃそこまでは無理だ」
「じゃあこの組み合わせで早速向かうとしよう」
再び2階層にたどり着いた俺達は事前の打ち合わせ道理に分かれて探索を開始した。
「そういえば聞き忘れてたんだけど名前を聞いても?」
「神官のマリアと申します。彼女たちはサラとエマ、私たちとアレックスは全員同じ村の出身なんです」
「幼馴染と言うヤツか」
しかし男女女女で同じ村出身とは内情ドロドロしていそうだが上級クラスまで行くという事はそうでも無いのかな。
「ええ、昔凶作のあった年に妹たちが奴隷に売り出されそうだったので代わりに私たちが名乗り出たんです」
「奴隷は禁止されていなかったか?」
「各国で奴隷が禁止なったのは3年前だね、連合国で干ばつによる凶作は5年前の話だから別に変ではないよ」
「アレックスは迷宮奴隷、私たちは娼館奴隷として売られたんですけどアレックスが一年で自身と私たちを買い戻してくれたんです」
迷宮奴隷とは名前の通り主人の代わりに迷宮に潜って稼ぎを得る奴隷だ。一発デカいのを稼げば直ぐに解放されるがそれよりも死んで入れ替わる方が速いことで有名だ。
「村に戻った所で元の生活に戻れるわけも無く……そのまま冒険者になったんです」
それであんなに取り乱したわけか。上級クラスともなれば仲間の死は必ず一度は会う。誰一人として欠けることなくここまでこれたという事はそれだけ実力と運があるのだろう。うちはまあ俺というイレギュラーが居るので参考にならない。
「私はサラ。主にマリアの防御を担当しています」
「ウチはエマや。エモノは弓矢、遠距離なら任しとき」
「うーんじゃあ前衛は俺とアリスがやります、後方の警戒はクー助、従魔が担当するのでマリアさん達は中衛をお願いしたく」
「呼び捨てで構いませんよ。さん付けは慣れてませんし貴方とそんなに年も変わらないでしょう?」
「じゃあマリアはクレアと同行していてください。サラは武器は何を使うんだ?」
「槍です。盾で防いでいる間に隙間から突くのが主な戦い方です」
盾チクか、防御よりの戦法だが守るのがメインならむしろその方がいい。
「なるほど、ではクー助と一緒に後方の護衛をお願いします。エマは弓矢というが他にないのかい?」
「剣が使えるで。魔物が近すぎて弓矢が使えない時に使うんや」
「では今回は弓に徹して頂きます」
大まかな配置を決定したところで探索を開始した。
「決めたのはいいんだが……魔物が居ない?」
歩き始めて10分程経ったが魔物を1匹たりとも見ていない。あるのは墓の様な石柱と葉が枯れ落ちた木ばかりだ。
更に歩くこと10分、とある木に吊るされている人の死体があった。
「アレックス!」
マリア達が駆け寄る。俺達は周囲に魔物が現れないか警戒しつつあの死体が不死者だった場合に備えて浄化の準備をしてもらう。
マリアが死体に手を触れた瞬間、あの叫び声が聞こえた。
「白ワンピの声だ!死体の回収次第撤退するぞ!」
水着の陰キャほしい