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178 報告

雨水なので初投稿です

 サイさんに連れられてエリちゃんの元に行く。


「やあやあ、下の騒ぎは聞こえていたよ。迷宮(ダンジョン)転換(コンバート)が起きているんだってね」

「あぁ、それもただの転換(コンバート)じゃない」

「へえ?一体どんな事が起きてるんだい?」

「恐らくだが竜種(ドラゴン)が関わっている」

「なんと?!」

「……それは後ろのお嬢さんも関係しているのかな?」


 エリちゃんの声が真面目モードになり後ろに付いて来ているスイを指差す。


「この子はスイ、さっき個体名(ネームド)になったスライムだ」

「初めまして、お父様……ユートの娘でスイと申します」

「ユート君、魔物(モンスター)にまで手を出したのかい」

「してねえよ!ちょっと迷宮(ダンジョン)魔力(オド)を吸われただけだ」

「はいはい……それで?スイちゃんはどうしてここに来たのかな?」

「私は魔力(オド)を下さったお父様にお礼がしたかっただけです。そうしたら迷宮(ダンジョン)の地下から湧き上がる何かが迷宮(ダンジョン)を覆いました」

「地下から?」

「あそこの地下には竜種(ドラゴン)が封印されている。それはエリちゃんも聞いているだろ?」

「シルフィの儀式の時に聞いたね。確か黒の竜種(ドラゴン)を……ってまさか?!」

「そのまさかだ。あの迷宮(ダンジョン)は黒の竜種(ドラゴン)魔力(オド)転換(コンバート)したと考えられる」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!情報が多すぎて話に付いて行けない」


 サイさんが割って入ってくる。迷宮(ダンジョン)の事、スイの事、竜種(ドラゴン)の事しか話していないけど?


「どれもこれも事が大きすぎるんだ!迷宮(ダンジョン)転換(コンバート)が起きているのは分かった、だがその原因が竜種(ドラゴン)だって?しかも討滅された黒の竜種(ドラゴン)とはどういう事なんだ?」


 黒の竜種(ドラゴン)が討滅?シルフィードは封印と言っていたが。


「極めつけは彼女だ。この子がスライムだって?どう見てもただの少女ではないか!」

「まあ、そのように見えるのですね。うれしいです」


 ただの少女に見えると聞いて喜ぶスイ。まあ俺達も初見では分からなかったくらい上手く擬態している。


「お父様、ナイフを貸していただけますか?」


 スイに言われて雑務用のナイフを手渡す。多分これからやることを考えるとモザイクを掛けといた方がいい気がする。


「ありがとうございます……えい!」

「な?!」


 スイが受け取ったナイフを躊躇なく手首に突き立てる。そのままぐるりとナイフを一周させると手首がぼりと落ちた。


「なんてことを!」

「あ」


 サイさんがスイの手首を握りしめる、止血の為だろうがスイに触るのはやめた方がいい。


「クレア君!この子に回復魔術(ヒール)を……ッ?!」


 触ったサイさんが膝から崩れ落ちる。スイに触れて魔力(オド)強奪(スティール)が発動したのだろう。このままではサイさんが死んでしまう。


「スイ、悪いけどもう少し切り落とすよ」

「構いませんよお父様」


 剣を抜いてスイが差し出した腕を切り落とすと魔力(オド)の吸収が終わったのか激しく呼吸し始めるサイさん。


「なんだ今のは……?」

魔力(オド)強奪(スティール)です。スイはマジックスライムですから」

「マジックスライム?上級迷宮(ハイクラスダンジョン)にしかいない魔物(モンスター)ではないか!」

「その証拠にスイの腕を見てください」


 サイさんがスイを見ると断面の透明な中身を見せる。


「本当にスライムなのか」

「本当にスライムですよ。それとスイ、その証明の仕方は俺としても心臓に悪いから次からはやらないでくれ」

「お父様がそういうのであれば」

「まあサイっちのおかげで彼女の存在は確かに分かったよ。迷宮(ダンジョン)転換(コンバート)竜種(ドラゴン)が関係しているという事はユート君が言うならまず間違いないだろうね」


 エリちゃんが話を戻す、これからどうするんだ?


「まずは迷宮(ダンジョン)転換(コンバート)の第一報告者であるユート君達には報酬が出るよ」

「報酬か」

「更に迷宮(ダンジョン)内の情報があれば追加で出るけど」

「第一階層は階層主(エリアボス)まで討伐したからそこまでなら」

「じゃあそれについては後で精査しよう。竜種(ドラゴン)が関わって来るなら上級は確定だ。とはいえ竜種(ドラゴン)の事をどう説明したものか……」

「黒の竜種(ドラゴン)は討滅されたのか?」

「歴史上ではね、封印の事を知っているのは竜種(ドラゴン)と深い関係にある者たちだけだよ」

「公表すると不味いのか?」

「……別に不味いことは無いか」


 じゃあなんで黙っている事前提で話したんだよ。


「それをどう信じるさせるかが問題なんだ」


 考えてみればそうか。過去に人類が絶滅しかけた原因が実は封印されていてしかもそれが復活しかけている。荒唐無稽過ぎていきなり言われても信じるはずがない。


「確かにどう説明するか悩むな」

「場合によってはシルフィードの事を話さなければならないからねえ」

「じゃあ話さなければいいんじゃね?」

「なに?」

「今の状況はとある迷宮(ダンジョン)転換(コンバート)した、そのクラスは上級。原因は不明。それで通せばいいんじゃない?」

「そんなんで……いや、でも……できなくは無いか……?」


 エリちゃんが考え込みながらぐるぐる部屋を回ると。顔を上げる。


「よし、それでいこう」


 こうして原因が不明なまま上級に転換(コンバート)した特異な迷宮(ダンジョン)が誕生した。


覚悟のロボ

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