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173 温泉のおわりに

仕事始めだったので初投稿です

 翌日、再びサラマンディアの元に尋ねると土下座をしていた。


「この度は誠に申し訳ございませんでしたッ!」

「そこまですることでは」

「皆様には眷属のお手伝いしていただいただけでなく私の不始末まで……」

「困った時はお互いさまでございます」

「この御恩、私の命をもって償わせていただきます……」

「そういうのはいいですから!顔を上げてください!」


 ナイフの様に研ぎ澄まされた爪を胸に当てた所で全力で止める。


「しかしなんで急に暴走したんですか?」

「はい、アレはお父様と継承の儀をすませた直後でした、魔素(マナ)を取り込んだ途端に私の体の中から声が聞こえてきたのです」

「声……?」


 サラマンディアが言うには沢山の声が聞こえたがその多くは戦いと勝利を願う声だったらしい。何か考え付いたのかソフィーが質問する。


「それは複数の声で聞こえたのかい?それとその中に先代、君のお父上の声はあったかい?」

「そういえば、声の中にお父様は聞こえませんでした」

「ふむ……これはボクの憶測なのだが、赤竜というのは昔から戦いの神として崇められてきた。その人間の祈りや願いの積み重なりが一気に流れ込んできたのではないかな」


 祈りや願い、戦いに赴く旦那や息子が生き残れるように。戦いに勝ち栄光を手にする為に。人は様々な願いを神に求める。魔術でもない祈りで動く魔力(オド)は微々たるものだが数千年の祈りは継承の儀でサラマンディアに重くのしかかったという事なのだろう。


「今はもう大丈夫なんだよね?」

「はい、お父様の魔素(マナ)が馴染んだのか声も聞こえない程度に抑えることも出来ます」

「とはいえ、世代が交代する度にこんな事が起きてたらその内魔物氾濫(スタンピード)が起きてもおかしくないな」


 今回は事情を知っていた俺達が居たから素早く対応が出来たが次もそう上手く行くとは限らない。


「なにか対応策を用意しなければいけませんね」

「それに関しては一つ提案がある」

「それはどのようなものでしょう」

「今隠している火口側の迷宮(ダンジョン)を開放するんだ」


 広場側の魔物(モンスター)ははっきり言って弱い、冒険者が一般人を連れて潜っているくらいだ。下級クラスと言っても過言ではない。


「そのせいかこの迷宮(ダンジョン)をメインにしている冒険者も質が悪い。観光案内なら問題ないが今回の様な事態に陥ったら対応できないのは今回を見ても明らかだ」

「なんだってそんなことになったんや」


 アンフィスが嘆くような事を言うがもしかしてツッコミ待ちか?まあいいや。問題は迷宮(ダンジョン)の難易度が低すぎる事、それに伴って冒険者のレベルが低いこと。


「それと今まで通り観光業で日銭を稼ぎたいだろうアンフィス達の条件を揃える手段となると、本来の強さである火口側を開放して強い冒険者に集まってもらうしかない」

「私の子供にあの声を耐えるようにするというのはどうでしょう?」

「その手もあるけど、サラマンディアは事前にその事を聞いていたとして堪え切れたと思う?」

「……難しいかもしれません」

「まあ訓練しておいて出来るだけ抑えてもらうというのは悪くない」


 いっその事海神祭の様に祭りにするのもありだろう。どのような理由であれ儲かる事には人が集まる。真の赤竜であるサラマンディアの素材を景品にすれば今より多くの人を集められるだろう。


「少なくともこの迷宮(ダンジョン)を拠点にしている冒険者も火口側の登場で少しは強くなるだろ」

「今回の事だけではなく将来の私の子供の事まで……本当に何から何までお世話いただきありがとうございます……これはほんのお礼です」


 そういうとサラマンディアは姿を変える、ウルガンと瓜二つな姿は赤竜の本来の姿なのだろうか。大きな手で首元を触ると一枚の鱗を剥がして俺に差し出した。


「コレは逆鱗、私の体内で最も魔素(マナ)が集まる場所の鱗です」

「俺達にくれるのか?」

「本来でしたら核心(コア)を差し上げても構わないのですが」

「そないしたらサラマンディア様が死んでまうやんけ」

「そういう訳ですので申し訳ありませんがお渡しできません」

「いや、全然かまわないですよ」

「それと、コレをお渡ししましょう」


 さらに額の小さな角を折ると差し出す。


「私の一部を込めた角です。その角を握って祈れば私の影を一時的に召喚できます」


 DPS(ゲーム)の召喚システムみたいなアイテムを貰った。もったいなさ過ぎて一生使わなそうな気がする。

 その後アンフィス率いる竜人(ドラゴニュート)達は神官として迷宮(ダンジョン)の状況を説明、火口側の迷宮(ダンジョン)と難易度の説明を行い、更には希望者には火口側でも通用するように強化訓練を行う事も提案した。冒険者人間はこれを承認。神官(魔物)ギルド(人間)の不思議な協力関係が生まれた。


「とはいっても昔から関係はあったし、そんなにいがみ合わなくて済んだわ」


 とはアンフィスの言葉だ。その口ぶりからしてもしかしてギルド側は気付いているのだろうか。まあ特に問題ないなら調べる必要もないだろ。そうして俺達はバーン王国の温泉街からサウスガルドに戻ってきた。


「という訳で赤竜の素材を持ってきたから火属性の剣を新たに作ってくれないか?」

「おおおおお!コレが赤竜の素材だってえええ?!」

「兄さんたち本当にナニモンなんだ……」


 戻ってきてヴニュに土産をみせると狂喜乱舞して素材を持って行き、テンチョーにはよくわからん顔を向けられた。

仕事は悪い文明

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