17 ウワサ
2月に入ったので初投稿です
結局、スライムの件は謎の旅人によって助けられたという形に落ち着いた。
「サイっちなんか案ない?」
「一人で階層主を倒せるとなると……やはり鳥の勇者かと」
「あー、あの放浪癖の?確かに彼ならどこに居てもおかしくないか」
勇者とは上級ダンジョンを踏破した者たちを指すらしい。 中でも鳥の勇者は変わり者で、一人でダンジョン攻略した強者だそうだ。
「さて、そろそろ下の連中も居なくなっただろうし頃合いなんじゃない?」
「じゃあ行くか、匿ってもらってありがとうな」
「それでは、お邪魔しました」
「じゃあねー」
「2人とも、下で今回の依頼報酬はちゃんと貰っておくように。どんな事情でも依頼を果たす者には報酬を出すのがギルドだし貰うのが冒険者だ」
下に降りて広間を覗くと確かに人はまばらになっていた。隅っこで倒れているのは勃発したケンカで負けた人間だろうか。 受付嬢さんに話しかけ報酬を貰う。中を見たら武器屋のおっさんが言っていた通り、かなりの金額が入っていた。
理由を聞いたらやはり装備用のお金との事だったので有り難く受け取る、するとの広間に残っていた冒険者から勧誘を受けた。
どうやらあの場で勧誘したところで成功率が低いと踏んでこの場に戻ってくるのに賭けた連中の様だ。
最初の追ってきた奴等よりは話を聞きそうだったので、マッチョとギルマスで決めた法螺話をして情報を流すことにした。 案の定何人かは取りやめたが、それでも勧誘してくるので現状どのクランにも入る気は無いと言い、ついでに他のクランにも伝えるよう頼んだ。
翌日からは勧誘の声は減ったものの、ギルドに向かう度に勧誘とヒュージスライム討伐の詳細を根掘り葉掘り聞かれた。
その全てに初級ダンジョンで偶々遭遇したと言っていたら、初級ダンジョンに向かう冒険者が無茶苦茶増えた。中には完全武装した大人数パーティを度々見かけるようになったので、それほどまでにヒュー ジスライムは稼ぎがいいのだろうか。
「スライムといっても上級ダンジョンの階層主だからねー、戦利品を売 れば2パーティ分の市民権が買えちゃうよ」
とはエリちゃんの言葉だ。ちなみにギルドマスターと呼んでいたらもっとフランクに!と注文を受け続 けた結果エリちゃんになった。
確かに素材を全部売りに出したらそれぐらいの金額になった気がする。 冒険者と言えば聞こえがいいが色んな理由で地元から出たり追い出されたりした根無し草なのでどこかに居つくには市民権が必要なのだ。市民権を買えば冒険者ギルド以外のギルドにも登録できるし住居を買うことも出来る。
「ご主人様は市民権を買われないのですか?」
「んー、今買ったところで当分は冒険者として生活するだろうから買う分のお金は取っておいて装備や 道具を揃えたいな」
冒険者が楽しくなってきたのは本当だが、今買うとヒュージスライムで作った金を全部使いきるまで怠惰な生活を送りそうな予感がする。しかもアリスは多分それを良しとする。というか率先して俺のお世話をしそう。
そうなってくると俺は本格的にロリのヒモになってしまうのでそれだけは何とか阻止しておきたい。
うーん、ヒモになるのを阻止するための市民権を取得するために冒険者になったはずなのになぜ市民権を買うのを躊躇っているのだろうか。
まあジジイの頼みの関係上、世界を見て回りたいのは本当だ。もしかしたら何か見つけて異世界転生式金儲けが出来るかもしれないし。
という事で武器屋に装備を買いに向かった。
「兄ちゃん達聞いたぜ、ヒュージスライムを討伐したんだって?」
「正確には遭遇してやられそうになったのを助けてもらったんだよ」
「なんだそうなのか?倒した新人冒険者はウチで装備を揃えたって宣伝してたんだがなあ」
流石商人だけあっていい根性している。そういうウワサが流れているから乗っているのだろうけど、俺も真実を流しているのでその内使えなくなると思う。
「それじゃあ今日は何をお求めで?」
「俺とアリス……この子の装備を一番いいヤツにしたい」
「予算はどれくらいだ?いつも通りなら銀貨3枚ほどだったはずだが」
「アリス」
「こちらです」
アリスが財布用の袋から金貨を取り出し店主に見せる。依頼報酬と素材売却の合計が現状我がパーティの全財産だ。なおリスク分散のために靴の中や下着の裏に縫い付けてあるので財布に入っているのは任務報酬と素材売却金額の2割ほどだ。
「おいおい、スライム討伐は嘘じゃなかったのか?」
「戦利品を回収しただけだよ。俺等を助けてくれた人はスライムぶった切ってそのままどっか行っちまったからな」
「はー、随分と変わり者だなその恩人は」
「サイさんが言うには鳥の勇者じゃないかって」
「あー……なるほど」
それで納得される鳥の勇者が何者なのか気になりすぎる。
「あと前回買った剣と盾を修理……というか破棄したい。スライムとの戦闘で使い物にならなくなった」
「どれどれ……確かにこりゃあ直すのは不可能だな」
スライムに消化されかけて鉄の枠組みだけになった盾と鉄の棒になった剣を見せた。こうなっては素人目に見ても駄目だろう。
「あー!!!」
突如後ろから大声が聞こえ全員が振り返ると、そこにはアリスよりも小さい褐色の女の子が信じられないモノを見る目で立っていた。
「オ、オレのスーパーアルティメットエクスソードがー!!!」
……なんて?
大阪ライブ楽しみ